2016年7月24日日曜日

吉兆味ばなし (暮しの手帖社)

湯木貞一著

 著者の湯木貞一氏は料理屋「吉兆」の創始者です。私の年代で「吉兆」と聞くと「賞味期限偽造」「食べ残しの使い回し」事件の印象が強いですね。著者が亡くなった後の事ですが、草葉の陰で嘆いてみえたでしょう。この著書(というか氏へのインタビューをまとめている) では氏の料理への真摯な姿勢がとてもよく現れています。

 この著作は一種の料理本です。季節の食材を取り上げ、料理屋での料理から家庭での料理まで、氏の経験からどのようにしたら食材が生きるか、美味しいかを描いてみえます。意外かもしれませんが、家庭向けの料理だと味の素がよく出てきます。家庭では一手間は加えるけれど、できるだけ簡単に美味しくと考えてみえたようです。ただし、これは今の時代の家庭料理としては難易度高し!!今は鶏肉屋さんはないですし、魚は家でさばく事は余りないのでは?でも参考にできる部分は多いですし、何より食への姿勢に敬服してしまいます。

 料理本とはいってもインタビュー集ですので、読み物としても十分な面白さです。ちょっと変わった料理本を読みたい方、将来料理に関わる仕事に就きたい方にはお勧めの一冊です。

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