2017年12月19日火曜日

書店不屈宣言 (ちくま文庫)

田口久美子著
(カバー裏より抜粋) 1973年に書店員としての人生をスタートし、現在も副店長という立場で現場に立ち続けている書店ドキュメント。

 とりあえず著者が自民党とAmazonが嫌いなのはよくわかったww 村上春樹が大好きなのもよくわかった。
 私は本屋は好きなのでこの本を購入したのだけど、何だか思っていた内容と違っていて私にとっては「失敗」。こういうエッセイで政治色の強いものは嫌いなんですよ。
 内容は本屋のコーナー、棚作り等に関して、書店の過去から現在、出版社との関わり、Amazonへの恨み言です。私は田舎住まい、本屋さんは遠出しないと無い地域だったので、Amazon、その他のネット書店の存在に本当に助けられました。また本屋さんで取り寄せ注文を頼むと露骨に嫌な顔されましたから。あと、取り寄せできない(多分取り次ぎの関係だと思う)と断られることもありました。ですから、Amazonへの恨み言に「なんかなー。Amazonもアレな企業だけど、昔の書店自体の殿様商売にも問題なかったの??」と思うところ多いです。あと絵本に対する軽視…にはビックリです。あれほどブックデザインが求められる存在はないと思うのですが。
 あくまで書店視点で「私たち頑張ってるのよ」で、客からの視点が欠けている。もっとも元々考慮しないという前提だったのかもしれません。読んでいて上から視線過ぎて不快を感じるところもあります。話があちこちとんでいて読みづらい部分もあり。
 へー、と思うところもありました。本屋で実物見てネットで注文する人とか。これは不思議。欲しい本が目の前にあったらすぐ読みたいからその場で買うものだと思っていました。時代は変わったなー。

2017年12月5日火曜日

死の舞踏 (ちくま文庫)

スティーヴン・キング著 安野玲訳
(カバー裏より抜粋) 40年以上にわたってモダン・ホラー界に君臨するスティーヴン・キングのノンフィクション大作、待望の復刊!

 スティーヴン・キング…小説はアンソロジーに掲載されていた作品を読んだくらいです。私には映画の原作者という印象が強い。特にスプラッタ…。だから小説も読むのに躊躇してしまって。でもホラー自体は好きです。ですから本屋でこの本をパラッと見て「面白そう。小説ではないからグロはないだろうし」。厚みはあります。お値段も文庫としてはお高い。筑摩はお高いのが多いから仕方ありません。

 内容は多種多彩なホラー(人によってはミステリー、ファンタジー、SFに分類するものも含まれる) の解説・論評です。映画あり小説ありTVドラマあり。プロはさすがにいろいろ観たり読んだりしているなと感心しかり。興味のある書籍などでてきたのですが、さすがに絶版ばかりなのは哀しい。
 観た事のある映画、読んだ事のある小説に対して述べられている事は興味深く、もう一度読んでみようかと思いました。特にネジの回転、丘の屋敷。丘の屋敷が映画化されたTHE HAUNTINGたたり(観ているのに感想書いてないな。そのうち観直して書こう)は大好きで、読み直したくなりました。そしてこの本自体ももう一度読みたい。ただ厚みがあるので中々読み切れない、新しい本も読みたい、本好きにはあるあるな悩みですね。
 とにかく面白いエッセイで、ホラー(SF好きな人もOKかも) が好きな人にはお勧めです。若い人には古い映画・小説が多いかもしれません。私と近い年代の人にはいいかもです。

2017年11月7日火曜日

クレオパトラ (1963 アメリカ)

ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督
(カバー裏より抜粋) 政敵ポンペイウスを追ってエジプトに上陸した闘将シーザー。彼をとりこにしたのは美姫クレオパトラの英知と美貌であった。

 私の大好きな映画の一つです。TVで放映されると観ています。最近DVDを持っていない事に気付いて購入しました。

 とにかく長い映画です。本編4時間強。人によっては退屈するかもしれません。私は元々ローマの歴史が好きな事、エリザベス・テイラーの美貌、豪華なセットで退屈はしませんでした。さすがに疲れますから小休憩はしましたが。
 とにかくクレオパトラの英知…シーザーに上手に取り入るところ。映画ではシーザーへは取り入って権力とエジプトの安定を、アントニーには権力もあるけど真実の愛もあったみたいな印象でした。シーザーは傲慢で有能、でもアントニーは傲慢にみえる小心者で有能なのだけどシーザーには遠く及ばないという感じで描かれています。実際シーザーはクレオパトラに溺れはしたけど冷静な面もあった、でもアントニーは尻に敷かれていたといった感じです。
 二人の英雄を取り巻くクレオパトラ以外の女性…シーザーの正妻カルプルニア、アントニーの正妻オクタウィア、出番は少ないのですが、クレオパトラとは対称的で良い味がでています。

 とにかく豪華絢爛、古い映画ですがローマ帝国が好きな方はぜひ、というか好きな人は観てますよね。観ていない方はレンタル他Amazonで1000円くらいで買えますし、時々BSなどで放映されますのでご覧下さい。CGとは違うセットの絢爛さは一見だと思います。

2017年9月29日金曜日

中国史談集 (ちくま学芸文庫)

澤田瑞穂著
(カバー裏より抜粋) 中国小説、なかでも怪異譚や笑話など庶民文学研究の第一人者が、多くの資料に目配りを利かせ、洒脱な筆さばきで歴史の表面に浮かび上がってこなかった知られざる裏面を独自の視点から鮮やかに掘り起こす。

 古い時代の中国の歴史は面白い。といっても全く詳しくはないのですが。民話等が好きな人にはお勧めの一冊。民話等をベースに、著者の視点で歴史の裏側を掘り起こしてくれます。しかも読み易い、分かり易い、面白い!!ただし残酷な話(皮はぎとか、私にはグロすぎ)もあるので注意。

 私は古い時代が好きなので、終盤の近代に近付いた部分の話はちょっと退屈でした。これは個人の好みなので仕方ないです。

2017年9月22日金曜日

プランク・ダイブ (ハヤカワ文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真編・訳
(カバー裏より抜粋) 地球から遥か遠宇宙のブラックホール〈チャンドラセカール〉では、ある驚異的なプロジェクトが遂行されようとしていた。果たして人類は時空の構造を知り得るのか?

 表題作を含む7編の短篇集です。グレッグ・イーガンの作品は元々ハードSFなのですが、これは本気でガチガチのハードSFです。私は全く歯が立ちませんでした。分からないところは飛ばす…と後書きにもありましたが、私のレベルでは大半が飛ばしになってしまいます。
 「暗黒整数」無理でした。ギブアップ!!「エキストラ」は短篇集の中の唯一のオアシスです。エキストラ…オリジナルに臓器を提供するために、意図的に脳を傷つけられたクローン。オリジナルは年老いた自分の身体を捨てクローンの若い肉体へ脳移植を試みる…。古い漫画ですが「洗礼」を思い出しました。オチが面白かったです。
  「クリスタルの夜」人間による宇宙作成?人は神になれるか?使い古されたテーマと言うなかれ、です。料理の仕方は著者によって様々。難しいところはすっとばしでしたが、ストーリーは理解できました。「ワンの絨毯」…難し過ぎてww 理数系というか物理に強いとには面白い咲くんなのだろうな…。ちなみにファーストコンタクトものです。
 他、とにかく私の頭では無理でした。解説で私のような読者の為のネタバレして下さっているのですが、ダメでした。

2017年8月25日金曜日

三惑星の探求 (ハヤカワ文庫)

コードウェイナー・スミス著 伊藤典夫・酒井昭伸訳
(カバー裏より抜粋) 〈人間の再発見〉の第二世紀。美しい砂の惑星ミッザー生まれの放浪者キャッシャー・オニールの驚異の冒険を描く〈三惑星の探求〉全4篇。

 待ちに待った「人類補完機構」完結編。主人公は母星を取り戻す為に星を放浪している。母星は独裁者の手に落ちている。「宝石の惑星」は今ひとつなのだけど「嵐の惑星」が面白い。亀少女「ト・ルース」が完璧過ぎ。そして私の好み過ぎ!!ご主人様のために長い時を生きる少女。主人公が霞んでる。そしてチート過ぎ。何と亀少女の力を主人公にトレースする、みたいな。
 簡単に母星に送り返されて、独裁者を超能力で改心させハッピーエンド。そして主人公は次の旅へ。ちょっと簡単過ぎでは…と思う部分も。そして旅の途中では、みなが主人公にひれ伏すみたいな。面白いのですが、後半ちょっとな部分もあります。

 あと、短篇が8編。短篇は中々面白かったです。個人的には「達磨大師の横笛」が良かった。救済も破滅も自由に選べる横笛がたどる運命。穴を閉じるか開くか。最後のオチが…。「親友達」…つらいなー。許されるべき妄想…。彼は彼らを待ち続けるのか。

 著者は早世されていて、作品が少ないのが本当に残念です。作品集はこれが最後かな…。

人形 (創元推理文庫)

ダフネ・デュ・モーリア著 務台夏子訳
(カバー裏より抜粋) 平凡な人々の心に潜む恐怖を白日の下にさらし、秘めた暗部を情け容赦なく目の前に突きつける。『レベッカ』『鳥』で知られる、名手デュ・モーリアの幻の初期短篇傑作集。

 うーん、後味の悪さ、サイコー!!精神スプラッタサイコー!!他の短篇集にも掲載されていた作品もあります。その中の幾つかを紹介。

 「人形」著者は「レベッカ」の名にこだわりがあったのかな。主人公が夢中になったレベッカ。振り回される主人公と異常性愛者…人形を愛しているレベッカ。主人公に関してはウンザリされても仕方ないような気がする。人形に負けた男。
  「性格の不一致」一般的な男女の違いなのだけれど、それが常軌を逸したら?男性はある程度の自由を求める。女性は二人で一人、二人で過ごしたい、何もかも分かち合いたいタイプ。女性のほうがオカシイように読めるのだけれど、男のほうもちょっと変…。
 「満たされぬ欲求」おいおい、二人とも無職なのに結婚ですか…。お父さんが意地悪に書かれているけど、お父さんは正しい。ロマンチックだけでは生きていけない。
 「ピカデリー」スタートが悪かったとはいえ、ひたすら落ちていく女性の話。立て直すチャンスはあったのに。でも迷信というかジンクスのようなものに迷う気持ちは分かる。
  「飼い猫」ひもに振り回される女達。母親・娘の女の部分は気持ち悪いがあることだから…。
 「ウィークエンド」デートの話だけど、あるあるすぎて…ww 後味悪い話なのだけど笑えます。

 どれも現実にありそうな事が誇張して描かれているから、余計に後味が悪い。この後味の悪さが著者の良さ。精神スプラッタを楽しんで下さい。

2017年8月14日月曜日

ひとりっ子 (ハヤカワ文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真編訳
(カバー裏より抜粋) 「この子がわたしの娘なの。生まれてくのがほんの何年か遅くなっけれど」ー待望の第一子となるはずだった女の子を失った科学者夫婦が選択した行動とは!?

 7篇収録の短篇集です。実はちょーとハードSFすぎて、私の頭では無理な作品もありました。これは私の頭が悪いのが悪いのです。「ルミナス」は全くダメでした。難しすぎる←あくまで私の頭では、です。「決断者」もいまひとつよくわかりませんでした。

 「行動原理」脳に作用するインプラントを使用して自由を手に入れる。その自由の意味とは?妻を殺した犯人を殺す。その理由は理解できる。妻の死から自由になること。目的を果たした後主人公はインプラントの作用…その自由に嵌っていく。私もインプラントが欲しい。
 「真心」まとめサイトなら「旦那さん、逃げてー」とレスが埋め尽くされそうな奥さんを持った旦那さん。奥さんは「永遠の愛」を求める。旦那さんは奥さんを愛しているし、答えようと努力している。でも奥さんは納得しない。インプラントを使用して永遠に愛しあう事を望む。愛情を現在の状態にロックするのだ。正直奥さん怖い…。サラの存在は一種の「隠喩」なのかな。
 「ふたりの距離」…正直主人公二人とも頭おかしいと思った。かなり気持ち悪い。依存が強すぎるのは私は受け付けない。
 「オラクル」何というか、宗教に対する嫌悪感を植え付けたいのかな?と思える内容。宗教家が物語に大きく関わっているのは理解できるのだけれど、いかにもな宗教家臭がダメだ…。物語自体は面白い。多次元ものです。
 「ひとりっ子」AIのもっと進んだ状況で生まれた子供を作った夫婦の物語。内容は難しくてよく分からない部分が多いのですが、ストーリー自体は分かります。著者の描く夫婦は難解すぎる。女性の個性が強すぎるなーという印象です。

2017年8月9日水曜日

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真訳 
(カバー裏より抜粋) 12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作…。

 表題作「しあわせの理由」。これは怖い。化学物質云々の難しい話はともかく、実際脳の腫瘍で性格が変わるのは聞いた事のある話です。この話の主人公は、腫瘍の影響で幸せな前向きな気分になっていました。で、腫瘍をやっつけたら…その薬の影響で…。脳をテーマにした作品で、人のしあわせなどの感情、その人生観、テーマはかなり重い。私は多分、いや絶対理解できていないと思いますが、それでも面白い作品です。
 「適切な愛」愛はどこまでできるか?愛する人を生かす為に、お腹(子宮)に脳をかかえられますか?女性が読むと気分が悪くなるかもしれません。
  「血を分けた姉妹」むー、現実的なテーマです。ありそうで怖い。簡単なあらすじは双子の姉妹が同じ病気に掛かったのだけど、一人は完治、一人は亡くなった。実は薬は…偽薬…。現実的なテーマと言ってもSFですから、その面白さはあります。でも、何というか重いな…と。

 他7編。どれも面白い作品です。お勧めの作品集です。

2017年8月4日金曜日

ゴッド・ガン (ハヤカワ文庫)

バリントン・J・ベイリー著 中村融訳
(カバー裏より抜粋) 設計技師にして発明家のわが友人ロドリックはある夜、自分は神を殺すことができると語った…。

 表題作を含めて10篇の短篇集です。どの作品も読み易くて面白いです。好みのタイプ。ただ一部の作品で主人公が…主軸となるのが誰なのか分からない作品があります。ちょっと引っかかる部分でした。

 「ゴッド・ガン」主人公の友人の不安定さ。無神論者でありながら神の存在を肯定し、神の否定する。ちなみに主人公はただの傍観者です。
「空間の海に帆をかける船」宇宙は海だった…ある次元の生物にとっては。エイリアンとの遭遇ものですが、アイデアが面白い。
「死の船」タイムトラベルものです。難しい理論は分かりません、ごめんなさい。永遠のループに巻き込まれた?と思わせてのオチが秀逸。最後のほうで急に「彼」が何度も使われだしているのですが、原文もそうなのかな。それまで主人公には「ティーシュン」(主人公の名)が使われていたのに、ちょっと戸惑いました。
「ブレイン・レース」脳のレース。まんまですww この作品、主人公がコロコロ変わります。ちょっと気持ち悪い。
「蟹は試してみなきゃいけない」別に蟹を食べる話ではありません。異世界に生きる蟹種族のお話。青春しています!!全然SFっぽくないけど、この話、好きだー!!
「邪悪の種子」主人公は二人。不死の「不死身」とサイコパス気味のジュリアン。とにかく執拗に「不死身」から不死の秘密を得ようとするジュリアン。スルーしようとする「不死身」の戦い。ジュリアンへの不快感が凄いけど、結局とんでもない結果になって、でも「ザマー」という感じでもない。

 気に入った話の感想でした。この著者は日本で現在手に入るのは長編ばかりで、短篇好きには残念な状況です。長編試してみるかな…。

2017年8月2日水曜日

万華鏡 (創元SF文庫)

レイ・ブラッドベリ著 仲村融訳
(カバー裏より抜粋) "SFの叙情詩人"ブラッドベリがみずから選んだ傑作26編を収録。

 他の短篇集と被っている作品が多いかな。
 「草原」子供の残酷さ、後味の悪さは「小さな暗殺者」に並びます。子供のほうが上手で大人は翻弄されて…。コワイコワイ。
 「鉢の底の果物」殺人を犯した主人公が指紋を拭き取る…拭き取る…拭き取る…強迫観念。狂気。最後のオチがよかった。
 「ちいさなねずみの夫婦」主人公夫婦が怖い!!実際存在しそうなタイプで怖い。おせっかいから一種の監視。余計なお世話。自分が正義が一番怖い。
 「骨」骨と肉の戦い!!神経症の夫と天然な奥さんの組み合わせ。神経症の夫は自分の骨に異物感を感じて…。気持ち悪い。
 「日と影」も同じような強迫観念と粘着質が何とも気持ち悪いです。 こちらはまたまた実際に存在しそうなタイプなのがヤバ過ぎです。
 表題作「万華鏡」うーん、切ないというかやるせない…。でもこの先こういう事故が起こらないとは限らない…。
 「すばらしい白服」貧乏な男達がお金を出し合って購入した白服。それを順番に着てそれぞれの思いを果たす。作品集の締めに相応しい作品。

 SFというよりホラーでは?と思う作品が多いです。私はホラーも好きだからOKですが、SFを読みたい人にはどうでしょう??あと、私は政治色とかが濃い作品は好まないのでパスです。

2017年7月22日土曜日

ハイ・ライズ (創元SF文庫)

J・G・バラード著 村上博基訳
(カバー裏より抜粋) ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす新築の40階建の巨大住宅。全室が入居済みとなったある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配し始めた。

 J・G・バラードの名前を見た覚えがあったので、購入してみました。ちなみに映画は存在を知らなかった…。
 で、これはSFなのか??個人的にはホラーだと思うのですが。個人の印象ですし、カテゴリがどうあれ面白い作品です。長編苦手な私でも、次々という感じで引き込まれました。主人公は三人。始めは戸惑いましたが読み進めれば平気です。一つの高層マンションが、三つのカテゴリーに分裂。マウンテンしながら、戦争へと突き進みます。主人公三人はそれぞれのカテゴリーを代表するイメージを持っています。
 電気・水道等ライフラインが壊される、ゴミ収集もストップでマンションはゴミでバリケードが作れる状態。プライバシーなんて崩壊。他人のものは自分のもの。所謂「ヒャッハー」な世界です。それを底辺な人々ではなく、上流階級な人々がやるのですから。
 酷い惨状ですが、住人は決して警察に助けを求めません。惨状を外へは漏らさないのです。そして出て行かないのです。一種のマインドコントロールのような気持ち悪さを感じました。普通なら誰かが話してしまうでしょうし、私は逃げますけど、そこは小説ということで。
 ラストは中々良かったです。うまくまとめたというか、そう来たかというか。男弱ーみたいな。

  ちょっと失礼な事書いてしまいますが、ちょーと文章が読みにくかったです。それが残念。

2017年7月18日火曜日

時をとめた少女 (ハヤカワ文庫)

ロバート・F・ヤング著 小尾芙佐他訳
(カバー裏より抜粋) 千一夜物語に登場するシェヘラザードに恋した時間旅行員の物語「真鍮の都」ほか、愛と叙情の詩人ヤングの名品全7篇を収録。

 著者の作品「真鍮の都」を別の短篇集で読んだ事があります。その時は甘い恋がいい感じと思ったので、他の作品も読んでみようと購入しました。
 表題作「時をとめた少女」はタイムパドラックスをテーマにしています。作品で使われている理論は、私のような素人が読むと「マジできそう?」なんて思ってしまいます。実際はどうなんだろう。恋をした少女(異星人)が別の異星人に恋した片思いの相手を取り戻すためにタイムパドラックスを利用するお話。同じタイプで「わが愛はひとつ」も収録されています。千一夜物語をテーマにした「真鍮の都」もですが、むず痒くなりそうな愛のお話が多いです。なんというか小説というより「物語」といったふうに感じました。「真鍮の都」を別の短篇集で読んだと言いましたが、これはテーマで集めた作品集(著者はバラバラ)だったので、他の作品とのバランスで甘さを心地よく感じたのかな…。正直私の好みからは外れていました。これは好みの問題ですね。

TAP (河出文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真訳
(カバー裏より抜粋) 究極の言語表現を可能にするインプラントTAPを使用していた詩人が、謎の死を遂げた。捜査を依頼された私立探偵が見た真相とは…

 インプラント…これ欲しい…。マジで。著者の作品は「脳」をテーマにしたものが多いのですが、インプラントは他の作品にもよく出てきます。表題作の「TAP」はハードSFぽくて科学的な定義は私にはさっぱりです。でもその辺りをテキトーに読み飛ばしても面白いと思えるのは作品として凄いなーと思います。
 個人的なお気に入りは「新・口笛テスト」。CM等で流れる曲をいつの間にか覚えてしまって口ずさんでいることありませんか?私はスーパーのテーマ曲に洗脳されていますww 一時イオンのお魚コーナーの曲に脳がやられていました。大した曲ではないはずなのにーです。これをテーマというか、人の脳に影響を与える音をCMに組み込んで大ヒットさせる話なのですが、この影響を過敏に受ける人達がいた。テーマが身近なのが面白いです。
 「銀炎」は名作とされていますが、私はパス。病気に冒された人の症状を想像して…所謂「グロ注意」で…。
 「視覚」もいいですね。視線というか見る事を考えさせられます。「ユージーン」は息子ひでーなお話。 「要塞」アメリカにはゲートといわれる地域遮断したいな壁があるそうですが(「ゲーテッド・コミュニティ」という本を参考に読んでいます)、これは身体的な壁です。あらゆるウィルスを無効化できるDNAを持つ人々の存在。移民問題をテーマにしたお話です。他も面白いです。お勧め。

 最近グレッグ・イーガンに嵌っています。

2017年7月3日月曜日

カニバリズム論 (ちくま学芸文庫)

中野美代子著
(カバー裏より抜粋) 人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。

 学術系ですが、内容はエッセイ集っぽいので私でも読み易い。カニバリズムでは、よく取り上げられる事件も出てきます。有名な民話もありますし、意外と馴染み易い内容です。読み易い、馴染み易いだけではなく面白い。ただ気になったのは、古代中国の政治や体制と現代の中国ではなく日本と比較するのはなぜだろう?ということ。著者は左な人??多分そういう側面はあると思うけど、でも改めて後書き読んで理解。中国人のイメージは超合理主義ですが「近代合理主義精神」とは違うように思います。あと、纏足とか宦官とか中国の超田舎とか闇な世界に未だ公然と残ってそうですから。←偏見ww

 とりあえず青空文庫に魯迅の「狂人日記」あったかなと。読んだ事があるはず、でも食人の話だったっけ?と思ったらゴーゴリでした。

2017年6月14日水曜日

中世ヨーロッパの騎士 (講談社学術文庫)

フランシス・ギース著 椎野淳訳
(カバー裏より抜粋) 騎士階級が、近代の中に朽ちていくまでを描く。

 騎士というと私はどうしてもゲーム、漫画でのイメージが強くて、だからこの文庫を見た時欲しくなってしまった。
 表紙に騎士のイラストがあるのですが、よくこの装備で馬に乗って戦えたものだと感心します。体を守るというのはわかるのですが、動きにくくないか??と聞きたい…。あと馬に乗ってないと結構間抜けにみえるのでは…等と。
 で、内容はゲームや漫画で理想化された騎士ではない現実が書かれています。騎士階級の始まりから黄昏まで。政治的に利用されたり(特に真面目な人が振り回されるのは…)、逆に報酬によって蓄財に走ったりと。現実は現実で面白いです。軽く歴史の好きな私程度の人にはお勧めです。

2017年4月20日木曜日

怪書探訪 (東洋経済新報社)

古書山たかし著

 古本をこよなく愛する著者による古書の紹介本です。あ、ブックオフなどで手に入るタイプの本ではありません。前半は古書の世界で有名なー一般人には縁のないー内容はZ級、だがその凄さで有名な古書の紹介です。値段は恐らく一般人では手が出ないと思われます。恐らく手に入って読んだとしてもつまらなくて後悔するでしょう。面白おかしく紹介されたあらすじを読んで「うわーこんな本あるんだ」と楽しんでおくのが一番です。それをさせてくれるのがこの著作。奥深さの一端が垣間見えます。それにしても古本集めの人って凄い…。私も本好きの端くれで、絶版本に涙する事が多いのですが、古本で探し抜く、そして大枚を叩く事はできない…。
 後半第一部は有名作家がこんな本を!!え、こんな本出していたのかをお楽しみ下さい。尾崎紅葉、カントまで出てきます。桃太郎の続編があったなんて初めて知りました。カチカチ山の続編とか…。

 個人的には前半のほうが面白いです。著者の愛が感じられます。後半も面白いけど。好みの問題かもしれません。

2017年2月21日火曜日

くじ (ハヤカワ文庫)

シャーリイ・ジャクスン著 深町真理子訳
 (カバー裏より抜粋) 毎年恒例のくじ引きのために、ムラの皆々が広場へと集まった。子供たちは笑い、大人たちは静かにほほえむ。この行事の目的を知りながら…。

 シャーリイ・ジャクスンの作品の後味の悪さ天下一品です。←褒め言葉。表題作「くじ」は、もうねえ…。穏やかなのだけれど不気味な雰囲気が…。でラスト。偏見といわれそうだけど未開発の国の田舎ならありそうな話と思いました。「魔性の恋人」…恋人が魔性というより、主人公やばい、怖い。相手が魔性でよかったレベル。他どこかしら狂った人達で構成されている物語群。でも、これをもっと軽くした状況なら現実にありそうで怖いのですよ。読んで凄く嫌な気分になるのですが、止められないのは世間の現実とリンクする部分があるからかなと思うところもあるのです。優れた作品とは思うのですが、人には勧められないな…。

2017年2月19日日曜日

死の鳥 (ハヤカワ文庫)

ハーラン・エリスン著 伊藤典夫訳
 (カバー裏より抜粋)「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」など、半世紀にわたり、アメリカSF界に君臨するレジェンドの、代表作10篇を収録した日本オリジナル傑作選。

 作品によっては難解です。←私のレベルでは、です。「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」はストーリーは分かるのですが、ラストが今ひとつ理解が…。内容は面白いです。だからこそラストが理解できないのが悔しい。ハーレクィンのしたことはないよりましーなことだったのか??「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」うーん、映画の題材になりそう。コンピュータに取り込まれて…。ちょっと気持ち悪い部分もあります。「プリティ・マギー・マネー・アイズ」スロットに閉じ込められた女が自分の代わりとなるターゲットを見つけたという話ですが、これが中々面白い。特にラストが…。「世界の縁にたつ都市をさまよう者」切り裂きジャックのその後。自分が皆を恐怖に陥れていると持っていたら、ただの見せ物でした。「死の鳥」は面白いのですが、意味がよくわからない…。哲学的なものは苦手です。他、難解なものが多いです。特にオチをどう理解したらいいのかな…と戸惑うものが多い。読んでいて面白い作品ばかりなのですが。

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2017年2月3日金曜日

ルーフォックス・オルメスの冒険 (創元推理文庫)

カミ著 高野優訳

 (カバー裏より抜粋) 名探偵ルーフォック・オルメス氏。オルメスとはホームズのフランス風の読み方。シャーロックならぬルーフォックは「ちょっといかれた」意味する。

 シャーロック・ホームズのパロディ短編集です。短い話ばかりなので軽い暇つぶしにと思って購入したのですが、私、シャーロックホームズって大して読んでいない…。軽く読めるのですが、元話が分からないと面白さが半減という感じです。あと「スペクトラ」というライバル怪盗が登場してから、ちょっとつまらなくなります。原作というかホームズ読んでいる人にはお勧めだと思います。

2017年1月8日日曜日

妖怪の理 妖怪の檻 (角川文庫)

京極夏彦著
 (カバー裏より抜粋) 妖怪を愛し、数多くの妖怪小説ほ生み出してきた著者が、深く愉しく、縦横無尽に「"妖怪"とは何なのか?」を解き明かす。

 妖怪というと私の頭に浮かぶのは漫画、アニメです。おばさんなのでどうしても水木しげるのイメージは強いです。映画だと「妖怪大戦争」とか古い化け猫の映画等々。さて、この文庫本、すごく真面目に妖怪について論じてみえます。「民俗学」「柳田国男」は重要なキーワード。私が知らなかった事は本来「妖怪」とは物、者ではなくて事だということ。うーん柳田国男の著書もそこそこ読んでいるのですが、気にした事なかった…←底が浅い、きちんと読んでいない…。あと幽霊の扱いの微妙さ。私は幽霊と妖怪は別物と考えていたので、ちょっと「ええっ」みたいなところもありました。妖怪の扱いの歴史、成り立ち、有名な著書の紹介、興味深いです。キャラクターの造形についてはちょっと退屈でしたが。

 怪談等に興味を持っていて、詳しく知りたいけど初めから民俗学は…な人向けです。 現在の子供に人気の妖怪の筆頭はジバニャンですが、この著書的には妖怪には入らないようですww 当たり前か。

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