2023年12月16日土曜日

ペルシャの神話(ちくま学芸文庫)

 岡田恵美子著
(カバー裏より抜粋) ゾロアスター教や古代ペシゃの伝承、そしいまなおイランの人びとがそらんじる叙情詩「王書」をもとに、ペルシャ神話の主要な登場人物・名場面を紹介する。
 
  神話系はいいですよねー。ファンタジーの基礎編みたいな感じで捉えています。←私的にはです。そしてペルシャ、何となくロマンを感じます。

 この著作は入門書。世界観を捉えるための一冊、または興味を持ってもらう為の一冊といった立ち位置のようです。実際厚みは薄い←物理的に。ので、読みやすいと思います。実際、読みやすいです。内容はサラッと書いてあっても、考えてみたらエグいなーみたいな部分も多々。神話系はそういうものなのでしょうが。
 実際、息子三人の首を部屋に飾るとか…どうよ?と思わざるを得なかった。日本人的には「墓に眠らせてやってくれ」と思ってしまいます。
 そういう違いなどを楽しむことも一興と思います。

2023年11月30日木曜日

ギリシア・ローマの文学(講談社学術文庫)

 高津春繁著
(カバー裏より抜粋)  二千年以上読み継がれてきた西洋の古典は、どのような背景から生まれたのか。膨大な作品とともに、歴史上の傑作を時系列で、鮮やかに解説し、その時代精神まで描き出す。
 
 いやー、この本を手に取ってパラパラと見て「おお、ホメロスとかの文学解説!!」←内容的なと思い込んでしまった。違いました。ローマ・ギリシアの時代を追いながら、その時代の文学を、生み出した作家とその背景を描き出すものでした。

 素人が知っているのは有名どころのホメロス、キケロ、セネカ、サッポーとか限られますが、それ以外にも多い!!当たり前と言えば当たり前。今の時代もプロ、セミプロ踏まえて、作家はどれほどの数がいるのやらですから。
 
 知らない作家の知らない作品。時代が時代なので、まともに残ってはいない。本人の作品は無くなって、伝承のみとかも多い。そこから時代を彩り、時代に消えていった作家たちを紹介する内容…かな。最後に年表が付いています。この方面へ進みたい人の入門書みたいな立ち位置の一冊です。
 
 ちょっと読みにくいのが玉に瑕かなー。

2023年8月23日水曜日

女官 明治宮中出仕の記(講談社学術文庫)

 山川三千子著
(カバー裏より抜粋) 明治四十二年、十八歳で宮中に仕えた華族・久世家の長女、三千子の手記。
 
 表紙の写真は著者かと思ったのですが、大正天皇のご生母でした。毎日こういう出立ではないですよね。歩くのも大変そう。この時代に写真に収めるのだから、正装だと思いたい。髪型も全部地毛??ではないですよね。欧米にしても日本にしても女性の正装は大変すぎる。そして、その生活は…。
 
 天皇家が垣間見えるのが、この作品の興味深いところです。いろいろなルール、行事、そして上流社会の闇闇闇
 何を嗅ぎ取るかは読者次第。私は、宮中生活に興味があって購入しました。面白いですよ。陛下ご夫妻の関係、権典侍の存在、人間関係に上下関係。あっさりとした筆致で書いてありますが、きっともっとドロドロだったのだろうと。

 日本の上流社会の資料としても面白い存在ですので、興味のある方はぜひ。

2023年8月2日水曜日

衣服のアルケオロジー 服装からみた19世紀フランス社会の差異構造(ちくま学芸文庫)

 フィリップ・ペロー著 大矢タカヤス訳
(カバー裏より抜粋)  服飾が記号として機能してきた全貌を、消費社会批判やジェンダー論に通じる視座も含めて体系的に描く、モードの歴史社会学。

 ドレスといえばフランスという意味不明の偏見を持つ私(ベルばらの影響大)はついつい手に取ってしまいました。そして、ベルサイユのばらの貴族の膨らんだドレスの内面に愕然とする。鋼鉄のアンダースカート(重かっただろーな)…はともかく腰下に藁で膨らみ作るの??女性のファッションへのこだわりは古今東西変わらないのだと思い知らされました。そして…よくダンスなんてできたな、とも。

 衣服の歴史はやはり女性が主眼になります。この著作もです。男性も取り上げられていますが。
 他に興味が向いたのは、オーダーメイドから既製服への転換。始めは既製服の概念がなくて、富裕層のお古が古着屋で下層に売られていく過程は面白いです。オーダーメイドにしても布屋は布屋、縫製は縫製で別の店…今からみると効率悪すぎですが、そうやって権益を守って自衛していたのは現代にも通じます。それが既製服から百貨店まで変わっていく過程が面白い。
 あとがきに消費社会批判とかジェンダーとか書かれていましたが、それほど鼻につくことはありません。ジェンダー以前にひたすら貴族のお姫様スゲーだけです。専門の衣服関連の方々向けでしょうが、素人でも読めます。鋼鉄のアンダースカートを身につけた令嬢の努力を想像して涙したい方にもぜひ。

2023年1月30日月曜日

失われた者たちの本(創元推理文庫)

 ジョン・コナリー著 田内志文訳 
 (カバー裏より抜粋) 母親を亡くして孤独に苛まれ、本の囁きが聞こえるようになった12歳のデイヴィッドは死んだはずの母の声に導かれて幻の王国に迷い込む。
 
 所謂異世界転移物です。 多感な時期に拗らせたデイヴィッド君が危険な世界に迷い込みます。拗らせる気持ちは分かります。まだ子供です。そしてその父、継母の気持ちも分かります。デイヴィッド君の異母弟に対する感情も。仕方ないよなーって。
 
 そして迷い込んだ世界で命を狙われて…元の世界に戻るため王様を探します。…拗らせながらも父が探していてくれると信じて…そして閑話のように差し込まれる残酷なお伽話。

 そして王様というのが、アレな人で。デイヴィッド君より拗らせすぎた人だった。
 
 うーん、面白かったのですが、私はハッピーエンド至上主義とは言いませんが、こういうお話はハッピーエンドで終わるべきでは??と言いたい。とにかくラストを読んでくれ。ないわー。話の深い部分を読み取れば理解できるとかいうタイプなのか??
 メリバといわれるタイプです。いやメリバではないのか?? ラストが納得いかない物語でした。