2018年5月25日金曜日

祈りの海 (ハヤカワ文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真編・訳 (カバー裏より抜粋) バックアップ用の宝石を頭の中に持った人類の姿を描く「ぼくになることを」ほか、遥か未来世界や仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短篇集

 この短篇集は私には当たりでした。どれも好みに合う、面白い。「ぼくになることを」要は脳のクローンですよね、これ。そのクローンは老化しない。でも、その脳=宝石の自分は元の脳の自分とイコールなの??作品を読むと別人格を示唆しているようで。「誘拐」誘拐されたのは最愛の妻。でも現実の妻は側にいる。誘拐されたのは仮想空間で作られた彼の理想の妻(と私は思った。現実の奥さんがこうだったらいいのに…みたいな) 。あなたは身代金を払いますか?「百光年ダイアリー」未来の自分の日記を読んでその通りに行動する、その通りのことが起こる。みんながそれに従い生きていく。嫌だなーこんな世界と思うのだけど、主人公はそれに疑問を持たずに生きていく。でもある日気付かされる。歴史は勝者が作るのだと。表題作「祈りの海」宗教の強い世界。信心深い主人公。ある儀式を経て神ベアトリスに自分が愛されていると確信している。だがその儀式は、ある向精神性分解生成物が関連していて…。正直主人公が信心深過ぎて共感できない。周囲にいたらドン引きするタイプ。もっとも登場する宗教家連も同じだから…。ラストが…主人公の未来の道筋がみえない。
 他にも面白い短篇が収録。あ「キューティー」も良かったなー。主人公の気持ち分かる気がする。可愛い時で止まっていてくれたら…。とりあえずお勧めです。

2018年5月4日金曜日

監督小津安二郎 (ちくま学芸文庫)

蓮貫重彦著
 (カバー裏より抜粋) 人々がとらわれている小津的ななるものの神話から瞳を解き放ち、その映画の魅力の真の動因に迫る画期的著作。

 実は私は小津監督の映画は観た事がありません。私の観ているDVDのタイトルを観て頂いたら理由は分かると思います。難しい映画は無理。それなのになぜこの著作を買ったのか?というと、難しそうな映画への憧れかな?もしかしたら観てみようかと思うきっかけになるかもと思いまして。

 内容は様々な観点から小津映画を考えてみるみたいな感じです。第一章の「否定すること」では常に否定…褒める場合も否定から入る…通常の映画(通常という言い方も変ですね)のあり方から小津映画を観ると…みたいな。私のような素人でも納得することが綴られています。納得しても理解は難しい内容です。私の印象では有名な小津映画は箱庭的?のように思いました。

 映画(アイドル映画とかハリウッド大作のみが好きな人は止めたほうがいい)に興味ある方は読んで損は無いと思います。で、小津映画を観てみようと思ったか?というと…多分退屈してしまいそうなので無理です。