2013年7月26日金曜日

メソポタミヤの殺人 (ハヤカワ文庫)

アガサ・クリスティー著 石田善彦訳
(カバー裏より抜粋) 考古学者と再婚したルイーズの元に、死んだはずの先夫から脅迫状が舞い込んだ。ー中略ー 過去から襲いくる悪夢の正体をポアロは暴くことができるのか?

 クリスティーの名作の一つ。主人公はルイーズではなく彼女付きの看護婦のレザランです。でも、個性的…いや意外といそうなタイプ、芸能人なんて基本こういう人たちだろうし、一般にもみられるタイプの、女性から見ると非常に嫌なタイプのルイーズがよく描けていると思います。嫌なタイプだから、余計生き生きと感じられるのかも。うん、シーラも嫌な意味でよかったし。で、私は見事に引っかかってしまいました。てっきりルイーズの自作自演と思ってしまった。犯人は…だろうなとは思ったけど、のめり込ませてくれるのは、さすがと思います。ポアロはおまけ。

宇宙気流 (ハヤカワ文庫)

アイザック・アシモフ著 平井イサク訳
(カバー裏より抜粋) カート貿易独占を死守せんとするサーク人と、それに対抗して暗躍するトランター帝国との対立を激化させ、ついに全銀河を震撼させる大事件へと進展した!

 主人公が乱立している…。一応リックが主人公なんだろうけど、テレンスに食われているような。サミア嬢、好きなタイプなのに、出番が今ひとつなのが残念。何となく詰め込みすぎの印象もあり。でも、やはりアシモフ、読ませてくれます。
 で、意外な人物が…。私は全然分からなかった。

ゲーテとの対話 上中下 (岩波文庫)

エッカーマン著 山下肇訳
著者エッカーマンとゲーテの対話。ゲーテという人物の第三者からの視線。

 …といっても、ゲーテの崇拝者の視点であるから、ゲーテがいかにすばらしい人物であるか、その周辺の人物も素晴らしい人格者ばかりで…ちょっと本当かな?と疑問を持ちたいところ。っていうか、何という格調高い生活。ま、読者の人生に対する格言集と思っておけばいいのでは。正直、最後の方は飽きてしまった。

2013年7月16日火曜日

空間亀裂 (創元SF文庫)

フィリップ・K・ディック著 佐藤龍雄訳
(カバー裏より抜粋) 時間理論を応用してつくられた超高速移動機の内部に亀裂が発見された。そこからは別の時間、別の世界が覗き見られるという…。 

 ディックの日本未発表作品!!ということで飛びつきました。で、感想は?作品という鍋の中に色々材料と言う名の要素を放り込んで、とりとめが無くなったのでは?という印象でした。面白いといえば面白いのだけれど。有色人種と白人、人口冬眠、別の進化を遂げた世界、移民、異世界の住民への徹底した差別意識…面白いキーワードだらけなんだけど。しかし、ビル・スミスはこちら側に残ってどうするつもりだろう。

表と裏 (弘文堂)

土井健郎著
(カバーより抜粋) 甘えの観点を下敷きにして、新たに「表と裏」「建前と本音」の観点から人間の現象を鋭く捉え、秘密や愛についても言及する。

  始めに…これから興味を持ってちょっと読んでみようかという方たちに。ちょっと文章読みにくいです。難解とはちょっと違う読みにくさがあります。
  中井久夫作品に名前が挙がっていたのと、「甘えの構造」は有名なので、ちょっと読んでみようかと。日本人についての考察は、常に自分自身を考察することになって面白い。建前と本音とは言うけれど、建前に守ってもらっているのが本音ではと思うし、本音も本音という建前だし。結局本音なんて本人にも分からないのではないかな。私がころころその時の気分で建前から距離を置いた本音をかえていくからそう思うのかもしれないけど。しかし「坊ちゃん」の主人公ボロクソですね。坊ちゃんは読み始めて好みではなかったので放棄しているのだけど、なるほど、こういう主人公なのか。実際自分で読んでみないとわからないけど。あと、秘密について、なかなか面白いことを書いてみえると思いました。

岡本綺堂随筆集 (岩波文庫)

千葉俊二編
(カバーより抜粋)江戸の風情の残る東京の町と庶民の日常生活、旅の先々で出会った人々、自作の裏話ー穏やかな人柄と豊かな学殖を思わせる。情感あふれる随筆集。

 淡々とこの著者らしい語り口…でも内容は中々…関東大震災に被災されていたんだ。旅の話、生活での話、海外留学、劇団、歌舞伎…恐ろしく幅広い。でも、別に肩肘はって読む物ではない。拷問や敵討ちの話は興味深く読んだ。思っていたのとはちょっと違うな。どうしてもドラマ、小説の影響を受けてしまうからね。

今日の積ん読

売笑三千年史 中山太郎 ちくま学芸文庫
中世ヨーロッパの家族 ジョセフ・ギース 講談社学術文庫
ネクロノミコン ドナルド・タイスン 学研M文庫

 調理師試験を受けにいったついでに買い物…なんてしてるやつの試験の結果は…。発表は来月だけど、「ダメダこりゃ」。来年に向かって一年かけて勉強しよう。それくらいやらないと私は無理だ。調理師の勉強自体はとても面白いと思ってます。
 で積ん読、上二つは買う予定だったけど、「ネクロノミコン」は何か買ってしまった。ま、試験終わったし、読むぞ、観るぞ!

聖なる酔っぱらいの伝説 (岩波文庫)

ヨーゼフ・ロート著 池内紀訳
(カバー裏より抜粋) ある春の宵、セーヌの橋の下で、紳士が飲んだくれの宿なしに二百フランを恵むー。

 なんというか、主人公は所謂非常に嫌なやつです。ただ、この嫌なやつに、いつ自分もなるか分からない危険性に満ちています。よくあること、ありそうなこと、自分が主人公の立場にあれば、同じ行動を取るのではないかということ。人間の弱さか強さか。どのお話も明るい調子なのですが (原著もそうなのかは分からないけど) 非常に嫌な感じなのです。そして悲劇的で…。個人的には「皇帝の胸像」がよかったかな。