2016年12月25日日曜日

アルファ・ラルファ大通り (ハヤカワ文庫)

コードウェイナー・スミス著 伊藤典夫/浅倉久志訳
 (カバー裏より抜粋) 〈人類補完機構〉未来史中、最大のイベントである〈人間の再発見〉期の珠玉の7短篇を収録する短篇全集・第二弾

 「スキャナーに生きがいはない 」に続く第二弾です。第一弾を先に読んでいたので、第一弾よりは世界に入り込みやすかった。短篇毎の順序は気にしない事。全体のテーマは〈人間の再発見〉。これは難しいですね。苦しみ、哀しみ、悲しみ、病、危険、悲嘆から解放された世界。逆に実は管理社会である。何を人間の幸せとするか?ですね。

 いくつかを簡単に紹介。「クラウン・タウンの死婦人」ジャンヌ・ダルクものです。テーマはキリスト教的。途中が平坦で退屈気味でした。「ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち」主人公の盗賊に感情移入できない。ママ・ヒットン頑張れだった。盗賊の追いつめ方と負わせた借金。面白かった。表題作「アルファ・ラルファ大通り」。〈人間の再発見〉の混乱期、もしくは過渡期。人類補完機構の保護下にある二人が、それ以外の地域にちょっと出掛けたら…。当たり前の事が当たり前でない現実。主人公は愚かにみえるけれど、自分が同じ立場に置かれたら…。

 第三弾は「三惑星の探求」。近日発売です。

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2016年12月23日金曜日

スキャナーに生きがいはない (ハヤカワ文庫)

コードウェイナー・スミス著 伊藤典夫/浅倉久志訳
 (カバー裏より抜粋) 1950年、あるSF雑誌に無名の新人の短篇が掲載された。異様な設定、説明無しに使われる用語、なかば機械の体の登場人物が繰り広げられる凄まじい物語…

 「人類補完機構」というシリーズです。用語に説明がないのは大概のSF小説はそんなものなので気にしなくて問題無しです。ただSF初心者向けではありません。結構展開が唐突ですしから混乱するかも。ただ読んでいくうちに世界観は理解できてきますし、こういうものなのだーと進めていけます。…と言いながらも、私は一度目あまり面白さが理解できなかったのです。半年程放置して2回目で嵌りました。

 いくつかかいつまんで紹介。「第81Q戦争」これを元ネタにした漫画か小説読んだ事あるような。一種のシュミレーション戦争のお話。表題作「スキャナーに生きがいはない」利権問題のお話。スキャナーは助かるけど、奴隷は安楽死。「人びとが降った日」どこかの国の人間の盾思い出しました。気分悪いなー。「鼠と流のゲーム」猫好き歓喜!「燃える脳」女って怖い…。あ、全然紹介になってないですね。とにかく面白い作品です。お勧め。

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2016年12月11日日曜日

世界の中心で愛を叫んだけもの (ハヤカワ文庫)

ハーラン・エスリン著 浅倉久志/伊藤典夫訳
 (カバー裏より抜粋) 現代における"パンドラの箱"寓話を描いてヒューゴー賞を受賞した表題作をはじめ、核戦争後、がれきの山と化したシティを舞台に力で生きぬくちんぴら少年と言葉を話す犬との友情を描く「少年と犬」など、全15篇を収録。

 ずーとタイトルが某映画っぽいな…と思い、よく見かけるけれど手に取る気になれなかった作品。同じ著者の「死の鳥」を読んで「全然別物かも」とこちらも読んでみました。全くの別物でした。(もっとも某映画を観たわけではありませんw)
 かなり好き嫌いの分かれそうな作品群です。私は作品によって好き嫌いがありました。
 それを踏まえて頂いて良かった作品。「世界の中心で愛を叫んだけもの」表題作です。淡々と感情の揺さぶりもなく話が進みます。それがいい。「101号線の決闘」フリーウェイでのレース。緊張感のある描写が楽しめます。そして終わりのない決闘の絶望感。「サンタクロース対スパイダー」始めは意味が分からなかったけど、読み進めていくうちに面白くなりました。おちゃらけた感じがいい。「聞いていますか?」他人から認識されなくなったとき、あなたはどうしますか?ヒッキー系ボッチの私ですが、主人公と共感できます。「満員御礼」ラストのオチが良かった。

 中々楽しめました。二度、三度と読み返すと味がでてきそうな感じでした。