2019年7月24日水曜日

夜想曲集 (ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳
(カバー裏より抜粋) 音楽をテーマにした5篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描き出したブッカー賞作歌初の短篇集。

 ノーベル文学賞の頃に買いました。一読して「誰だ?SFとかのたまった奴…」私の読むタイプの作品ではないので放置。少し気が向いたので再度読んでみました。

 あれ、思っていたより面白い。予め私のタイプの作品ではないという心構えの上で読んだためかもしれません。ちょっと心理描写が多過ぎで私には退屈な部分がありますが(あくまで私にとって)、内容は面白い。

 お気に入りは「チェリスト」11歳から一度もチェロを弾いていないのに「私は一流チェリスト。私は知られていて当然」という完全に中二病、もしくはメンヘラ、ありがとうございました的キャラの師匠が、正規の音楽教育を受けた若きチェリストを指導…というお話。とりあえずピーター逃げてー(師匠の婚約者)。若きチェリストは師匠から持ち上げられて傲慢に。ま、音楽家には必要なスキル?主人公はそう言っている。ちなみに主人公は第三者的立場。
 「モーバンヒルズ」も中々。文句言うなら出て行けよ的なキャラな主人公。金も住むところも無くてねーちゃん夫婦の世話になってるのになー。若き日の傲慢、他人を格下に見る傲慢。誰でも記憶にあるところではないでしょうか。
 「降っても晴れても」…友達止めろよ…。親友とか言って利用されてるぞ!!と言いたくなる人の好い主人公。夫婦二人にバカにされてるのに。だいたい「レイモンド、月曜日来訪。嫌だ、嫌だ。」「レイは明日。どう生き延びる?」「ぐちぐち王子にワインを」とか自分が手に取る範囲のノートに(これ見よがしに置かれている)書かれてたら、私なら帰る。縁切る。それをしない主人公にイライラ。こういう主人公だから利用されてへらへらしてるのか…。

 …もしかして私、かなり気に入ってる??

2019年7月23日火曜日

危険なヴィジョン2 (ハヤカワ文庫)

ハーラン・エリスン著 浅倉久志他訳
(カバー裏より抜粋)奇才ハーラン・エリスンが、英米SF界の変革を試みた、原書で全23万9000語におよぶ書き下ろしアンソロジー。

 これは…好き嫌いが別れそうな短篇集です。うーん、収録されている作品は面白いです。でもエリスンの序文が鬱陶しい…。これが掲示板、SNSの書き込みだったら「自分語りウザい」と言われそうな…鬱陶しさです。だったら読まずに飛ばせ、ですが、いや途中から飛ばしていましたが「このページ数、勿体ない!!」とか思ってしまって。

 作品は好きなものが多いです。好きな話だけ挙げてみると「わが子、主ランディ」現代の神の子、過去の神の子とは違う現代の子。彼に許しはない。「ドールハウス」預言をする巫女を譲られた主人公←屑人間。ギリシア神話等に出てくる預言はどうにでも解釈可能じゃね?みたいなものが多いですが、この巫女もその類い。ただし預言は読み解けば当たる。前の持ち主はそれなりの生活をしていた…が、主人公は借金まみれでひちすら一攫千金。巫女に対して癇癪を起こして…。この巫女下さい。でもラテン語なんて無理だからだめか。

 他も面白いです。序文が無ければ3も買ってもいいのだけど買わないかな。