2011年9月6日火曜日

「つながり」の精神病理 (ちくま学芸文庫)

中井久夫著
家族、老人等私たちの身近な問題から、精神科医について綴られた作品集。

 テーマは家族。読んでいて、こういう家族の話、聞くことあるな、と思う。重要なのは母方の伯父叔母とされている。成る程とは思うけれど、今はどうかな。嫁に出すという意識が薄れ、今は嫁方の実家との繋がりが濃い場合が多くなっているように思うから…というか、自分の周囲を見ての話だけれど。
 漫画の話は食いついてしまう私。サザエさんの家族構成…変とは思っていたけど、ま、作者が描き易かったか位の事だと思っていた。でも、著者の掘り下げは面白い。ドラえもんは面白いけど、考え過ぎでは??とも。シズカちゃんのお風呂シーンはファンサー…いやいや。P127の「立体写真のような力」という表現は面白い。

ゲーテ スイス紀行 (ちくま学芸文庫)

ゲーテ著 木村直司訳
ゲーテのスイス旅行記。

 スイス…やっぱりハイジかな。ここに描かれているのは、ハイジ程に朴訥としてはないけれど。ゲーテは私の芸術家に対する偏見を砕きました。正直言うと、芸術家という人たちは、体力なしだと思っていたけど、ゲーテは山越えします。読んだ限りではかなりの山道、しかも冬のスイス…。そして、雪に閉ざされるような場所にも、昔から人は暮らしていた。ゲーテの描くスイスは、過酷であっても美しい。憧れをもって読むには良い一冊。実際は本当に過酷なんだろうけど。

年代記 上・下 (岩波文庫)

タキトゥス著 国原吉之助訳
ティベリウス帝からネロ帝までの治世を語る。歴史小説としても楽しめます。

 何というドロドロ。これを読んでいると、奥様御用達昼ドラなんて可愛いものだと思えてしまう。裏切り、復讐、虚偽、告発、なんでもあり。読んでいて、居たたまれないというか気分が悪くなる。でも、それは出来の悪い作品という意味ではなく、気分を悪くさせたりするだけの力量のある作品だということ。ローマがダメになっていく過程をお楽しみ下さい。
 ここで描かれているのは、上層部の人間なんだけれど、下層というか一般庶民はどうしていたんだろう。意外とそれなりの生活していたのかな。

世に棲む患者 (ちくま学芸文庫)

中井久夫著
様々な精神病と患者と治療者の関係を描き出す。プロでない一般人でも楽しめます。

 境界例を始め、様々な精神病について語られている。周囲の人間のあり方、関わりかたも考えさせられる所が多い。ここでは患者との関わり合いについて語られているのだけれど、つい普段の人間関係に置き換えて考えてしまう。あと酒の呑みかたも。ここに描かれているのは決して患者と治療者、その周囲だけのことではないと思う。
 統合症の患者が株などが巧いというのは驚き。この著作が書かれたころは電話がメインのようだけれど、今ならネット取引だし、患者には良い環境になっているのかな。ちょっと…いやかなり羨ましい。