2011年1月29日土曜日

残酷な方程式 (創元SF文庫)

ロバート・シュクリー著 酒匂真理子訳
ロバート・シュクリーの短編集。人のもしも…心の片隅をつつくような、それでいて不条理のような作品集。16篇収められている。

 どれも好きなタイプの作品だけれど、特には「シェフとウェイターと客のバ・ド・トロワ」。三人三用の物の見方とはよくいうけれど、それが余りにバラバラで、どのように噛み合っていたのやら…。「倍のお返し」自分の幸運がその倍ライバルにも与えられる。さて、あなたならどうする?実を言うと、オチの意味がよく分からなかった。「石化世界」現実とは??どの作品も心地よくひねくれていて、楽しめた。

2011年1月26日水曜日

柳宗民の雑草ノオト (ちくま学芸文庫)

柳宗民著
雑草と呼ばれているけれど、その花々にも四季が感じられる。雑草バンザイ。

 雑草の蘊蓄本。雑草それぞれの名前の云われ、特徴、それにまつわる著者の思い出等が綴ってある。自分の知っている雑草あると嬉しい。自分が聞いていた名前とは違ったりしているのもある。地方によって違うのかな。何となく、もう一度庭の隅を見つめ直したい気分になった。
 三品隆司氏のイラストもとてもよく合っていると思った。

2011年1月24日月曜日

黄金の壺 (岩波文庫)

ホフマン著 神品芳夫訳
黄金色の蛇と純情な青年の恋。…というか魅入られてどこかへ引きずり込まれたのでは??

 主人公のアンゼルムスの優柔不断具合、フラフラしていてなんだか笑えてしまった。現実と虚構を行ったり来たりしていて、今なら病院へ行け、といわれそう。ヴェロニカ、何だか批判的に描かれているけど、普通…一時黒魔術に頼ったけどそういう弱さも含めて…だよね。変な男に引かからなくて良かった。しかし、アンゼルムスの最期の状況、…あーいうのが幸せなんだろうか??
 私個人としては好きな作品。でも、今はもっと刺激的なファンタジー作品はあるし、お薦めは難しいかも。

ムーミンのふたつの顔 (ちくま文庫)

冨原眞弓著
ヨーロッパと日本でのムーミンの愛され方の比較、様々なムーミンを考察する。

 「日本のムーミン」の章が面白かったかな。日本ではやはりアニメ版の影響は大きいのは誰もが認めるところ。スナフキン、好きだった。ちょっとカッコ良すぎだけど。でも、実はアニメ版は個人的にはイマイチ。でも小説に触れて…全然アニメと違って面白いと思った。コミック版のムーミンも大好き。DVD版は…このプログでもDVDBOXについて書いたけど、世界観は大好きだけど…眠くて…。
 ムーミンの成り立ちから、ヤンソン氏の生い立ち、様々なムーミンの紹介、ヤンソン氏の他の著作について、といった内容。ファンの人ならたいがい知っているよね。これからムーミンの世界に入る人、ムーミンに興味のある人にお勧め。

匪族の社会史 (ちくま学芸文庫)

エリック・ホブズボーム著 船山榮一訳
英雄視される匪族の成り立ち、種類、社会との関わりについて。

 ロビン・フッドって、実在の人物ではなかったのか…恥ずかしい。匪族と呼ばれる人物の中から、義族と呼ばれ、なおかつ農村出身者を中心に述べられている。それは一つの社会現象であり、また近世のものでもある。(中国は除く)…そういわれてみればそうなのかな。あくまでこの著作は、匪族の一般に伝わっている逸話等から考察するもので、実際どういう人物であったかは基本的に考慮していない。時代が生み出した存在としての匪族、民衆が自分たちの正義を求めて現れた存在。中々興味深い作品だった。

好物漫遊記 (ちくま文庫)

種村季弘著
著者の過去の体験談を万華鏡が巡るように語っている。

 欲あるタイプのエッセイなんだけれど、体験の幅の広さに、うわー私って小さいと改めて思ってしまった。もちろん体験していればいいというものではないのだけれど、著者の幅広い知識と噛み合って、作品の面白さが増している。一昔前のお話が多いのだけれど、その時代を知らなくても、時代に思いを馳せながら楽しめる一冊。

2011年1月23日日曜日

貧困の文化 (ちくま学芸文庫)

オスカー・ルイス著 高山智博 染谷臣道 宮本勝訳
メキシコの五つの家庭を対象としたフィールドワーク。各家族の一日を再現ドラマのように綴っている。

 これを読んで一番に思い浮かべたこと…今もやっているのかな?昔テレビで大家族のドキュメンタリーみたいなのやっていたけど、その手の番組に登場する家族のこと。この本で述べられているような貧困ではないのだけど、何だかパターンが似ているなと。負の連鎖が連続しているようで、読んでいて憂鬱になる。日本に住んでいる私からみると、「なぜこんな男に?」と思うけれど、生きていくためなんだろうな。最期の家族は金持ちなんだけれど、金銭感覚がスッ飛んでいる。生き様がそれまでの家庭と変わらないのが哀しい…。

古代大和朝廷 (ちくま学芸文庫)

宮崎市定著

 古代日本と周辺諸国との繋がりから、古代大和朝廷を推察する。

 一見取っ付きにくくて難しそうだけど(いや、実際難しいのかも) でも読んでみると面白い。ヒコとかミコトとか古代の物語に出てくる名前の由来、王と皇帝の違いとか、蘊蓄として一般人にも楽しめる。古代の話だけではなく、近代にまで話題は伸びている。明治維新辺りの攘夷論、面白かった。ヘエーヘエーみたいな感じで。なんだか今、よく似たことが繰り返されてるかも…とか思ったりして。

四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)

G.K.チェスタトン著 西崎憲訳

新聞記者が出会った四人の不思議な人物の体験談。奇妙さが心地よい中編。

 奇妙というか変なお話、でも面白い。実は…というドンデン返しがよくできている。まさに「誤解された男のクラブ」。とにかく読んで楽しんで下さい。G.K.チェスタトンは宗教臭が強い作品もあるのでどうかな?と思っていたけど、全然そんなことはなかった。

2011年1月19日水曜日

今日の積ん読

柳宗民の雑草ノオト 柳宗民  ちくま学芸文庫
柳宗悦コレクション1 ひと 柳宗悦 ちくま学芸文庫

 雪が積もった。そして積ん読も積もっている…。どうしよう。 

現在の積ん読 本:190冊 DVD:80枚

エビータ (新潮文庫)

ジョン・バーンズ著 牛島信明訳
アルゼンチンで聖女と呼ばれた「エビータ」の生涯を描く。

 「エビータ」アルゼンチンで崇拝されている人程度の知識で読んでみた。まあ何というか、歴史上よく出てくる独裁者なんだけれど、違うところは一番底辺の労働者からの支持が絶大だったこと、彼らに恩恵を与えたことなんだ。もちろん悪口を言った奴は除く。彼女がやったことは確かにいいことなんだ。虐げられるだけの階級を救ったのは確かなのだから。彼女がいなければ、自分たちの権利に対する意識を持つことも難しかっただろう。でもそれはあくまで彼女自身の満足のため、虚栄心がもの凄い女性といった印象。反面敵に対しては容赦ない。財産はそうとうため込んでいたようだし。経済もダメダメ。読んでいるだけで超インフレになってしまうのは目に見えるよなー、と。功罪については議論の多い女性だろうけど、これぐらいのことは実はどこの国でも影で起こっているんじゃないの?あと、大衆には肉と娯楽を与えておけ、ということで。なんかこういう諺というか格言があったような気がするけど、思い出せない。
 ペロン?あれは「エビータ」に付いているおまけでしょ。

2011年1月14日金曜日

今日の積ん読

匪族の社会史 エリック・ホブズボーム ちくま学芸文庫
ムーミンのふたつの顔 冨原眞弓 ちくま文庫 

現在の積ん読 本:188冊 DVD:80枚

 年始年末の仕事の忙しさに呑まれて、全然本読めてない…。買うペースは変わってないのに…。今年はもう少し気合い入れて読まないと積ん読が増え続けるままだ…。
 最近の出版関係のニュースで目立っていたのはポプラ社。なんていうか世の中目立ったもの勝ちだな。さすがに買う気にはなれないけど、そのうちブックオフに並ぶだろうから立ち読みしてみよう。でも、105円コーナーに並んでも買う気にはなれそうにない本だけど。

渚にて 人類最期の日 (創元SF文庫)

ネヴィル・シュート著 佐藤龍雄訳
第三次世界大戦勃発、核汚染から残されたのは、南半球の一部地域のみ。忍び寄る放射能汚染、人類滅亡までの人々を追う。

 たいてい人類滅亡ものだと集団の暴動やパニック、ヒステリーが描かれるのだけれど、それが一応あるのだけれど、淡々と描かれていて人間の心理、最期の迎え方に重点が置かれている。私は赤い箱の薬を飲む勇気があるかな。自分の子供に注射する勇気を持てるだろうか?まー、平気で自分の子供を虐待する親いるからね…。
 登場人物の行動、感情、理解できるし切なくなる。スウェイン…故郷に帰りたかったんだね、メアリ…誰でも自分は大丈夫と思いたいさ、タワーズ…軍人で海の男で、モイラ、オズボーン…らしい死を選んでいる、私は…フラウド氏だな。ヤバくなるまで飲み続けて、勢いで自決するかな。実際は酷い暴動起こるだろうし、…宗教関係がほとんど描かれていないことに今気づいた。終末には付き物なのに。