2014年5月24日土曜日

宇宙の小石 (ハヤカワ文庫)

アイザック・アシモフ著 高橋豊訳
(カバー裏より抜粋) 遥かな未来へタイムスリップし、怖がるべき陰謀の渦中に巻き込まれた老人の驚くべき冒険を、巨匠アシモフが、サスペンス溢れるミステリタッチで描く傑作長編。

 主人公のシュヴァルツ…スーパーじーさんに変身!悪い奴らをやっつけろ、みたいな内容。心を操るとかは設定としてちょっとずるくない?とか思ってしまった。でも内容はそれぞれの思惑が交錯していて面白い。最後、すっきりとミステリ解決。でもね…なんだか
シュヴァルツが救われないような気持ちが残ってしまう。だって、子供や孫の待つ時代には戻れないのだから…。すっきり終わらせてはあるのだけど、私はモヤモヤしてしまった。

2014年5月20日火曜日

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)

シェイクスピア著 福田恒存訳
(カバー裏より抜粋) "おれはシーザーを愛さぬのではなく、ローマを愛したのだ" 高潔な勇将ブルータスは、自らの政治の理想に忠実であろうとして、ローマの専政君主シーザーを元老院で刺殺する。

 主人公はシーザーではなくブルータスなのか。ブルータスの高潔…正しくあろうとして、失敗を犯す。アントニーを生かしておくという大失態。そして自らが追いつめられる。なんというか、始めから行き当たりばったりを認めているからね、本人達が。そしてシーザーの幽霊を見るというのは、自らの行動への疑問というか自責の念があるのだから、やめておけばよかったのだ。理想に酔い、自分を見つめる事のできない人物でもあったのか?
 シェークスピアのブルータスは高潔の人だけれど、実際のブルータスはどういう人物だったのだろう。立派に描かれれば描かれる程に気になる。

ソクラテスの弁明 クラトン (岩波文庫)

プラトン著 久保勉訳
(カバー裏より抜粋)プラトンの初期の作であるが、芸術的にも完璧に近い筆致をもって師ソクラテスの偉大な姿を我々に伝えている。

 私は俗人です。正直読んでいて、ソクラテスのような人が周囲にいたら嫌だな…と。何というか賢いのだけど、適当な周囲との付き合いに対してはバカだなと。本人にとってはそれが正しい生き方なのだから余計なお世話なんだけど。でも、自分が賢者か確かめるために他人を貶めているようにしか思えないし、恨まれて当然だし…。
 ま、生き方も考え方もそれぞれという事で。

2014年5月19日月曜日

ミクロの決死圏 (ハヤカワ文庫)

アイザック・アシモフ著 高橋泰邦訳
(カバー裏より抜粋) 手術不可能な脳内出血で昏睡状態にある彼を救うため、医師らを潜水艇ごとミクロ大に縮小し、博士の体内に注入する事になるが!?

 例えば「あり」から見た世界は?生物は大きさによって世界観は全く変わるだろう。人間だって子供の頃と大人になってからでは、世界観も時間感覚も大きく変わる。ましてや体内、そこは一つの宇宙。体内の描写はこの作品の魅力の一つ。白血球ってどんなだろう。そして体内で主人公たちに襲いかかる困難。とても面白い作品なのですが、著者は不満だったようです。

2014年5月18日日曜日

アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)

シェイクスピア著 福田 恒存訳
 (カバー裏より抜粋)多様な事件と頻繁な場面展開を用い、陰謀渦巻くローマ帝国を舞台に、アントニーとクレオパトラの情熱と欲情を描いて四大悲劇と並び称される名作である。

 アントニーが実に人間らしく描かれている。強さと弱さ、海戦の最中、女の尻を追っていくなんて本当に情けなくてそして人間臭い。シーザーは逆に魅力を感じないな。主役じゃないから仕方ないか。クレオパトラは…ここで描かれている限りは根っから女といった雰囲気。実は国を守るために…という話もあるけど、シェイクスピアの戯曲の中ではの印象。私は面白かった。今時の人にはどうかな??

2014年5月15日木曜日

砂男/クレスペル顧問官 (光文社古典新訳文庫)

ホフマン著 大島かおり訳
 サイコ・ホラーの元祖と呼ばれる、恐怖と戦慄に満ちた傑作「砂男」。芸術の圧倒的な力とそれゆえの悲劇を幻想的に綴った「クレスペル顧問官」。魔的な美女に魅入られ、鏡像を失う男を描く「大晦日の夜の冒険」。ホフマンの怪奇幻想作品の中でも代表作とされる傑作3篇。(Booksデータベースより)

 人間が何より恐ろしい…。狂気…それが幻か現実なのか分からないけど、主人公たちは運命を狂わせていく、周囲を巻き込んで。いつも思うのだけど、周囲の人間の我慢強さには本当に驚いてしまう。「砂男」のクララには「もうほっとけば??」とか思ってしまう。その点「大晦日の夜の冒険」の奥方はよかった。突き放し方が最高。

2014年5月12日月曜日

火星の笛吹き (ちくま文庫)

レイ・ブラッドベリ著 仁賀克雄訳
レイ・ブラッドベリの短編集。20編はかなり多い。SFというジャンルだけには収まりきれない作品ばかり。

 SFというよりファンタジーの趣のある作品が多いような印象。 科学的かと問われれば否という作品が多い。でも、ロマンチックがいいのですよ。
「地球のはぐれもの」真実とは?人間の幸せとは?エカテリーナ女帝は幸せだと思う。
「海中の監視者」うーん、ロマンすぎるでしょう。
「宇宙ヒッチハイカー」ヒッチハイカー…恐…。

変種第二号 (ハヤカワ文庫)

フィリップ・K・ディック著 大森望編
「変種第二号」「ゴールデンマン」と映画化された作品を含む短編集。初翻訳の「戦利船」も掲載。

 他の短編集に収録されている作品が多いかな。私の未読は「戦利船」「奉仕するもの」「歴戦の勇士」。「戦利品」は設定が面白い。非科学的かどうかはさっぱりだけど。あの文学は実は…とか考えると楽しい。「歴戦の勇士」もそういうことみたいな感じで良かった。「奉仕するもの」は後味が悪いというか…ディックの作品に後味を求めてはいけないのだが…。
 「変種第二号」は何度読んでも怖い…。

2014年5月7日水曜日

にょっ記 (文春文庫)

穂村弘著
 歌人穂村弘の日記。体の力を抜いて穂村ワールドを楽しもう!

 穂村弘氏は歌人である。言葉のプロである。彼のエッセイの類いはとても面白い。この日記も面白い。難しいことは考えずに、ただただ楽しもう。

2014年5月6日火曜日

おとぎの国のモード (勁草書房)

酒井妙子著
 なぜ絵本に登場する動物達は服を着ているのか?児童文学からその謎、理由を解き明かす。

 服を着ている事に何の疑問も感じた事がなかった。ああいうのは擬人化だから、人が服を着ているのと一緒といった感じで。だから、この本に興味を持った。これは人の衣服の意味にも通じるから。著作の中で、様々な文学、絵本の登場人物の衣服について考察されている。そしてそこから浮かび上がる、人間社会。使われている挿絵がイギリスの古い時代を感じさせて、これもとてもいいです。

宇宙ランデブー (ハヤカワ文庫) その2

アーサー・C・クラーク著 山高昭訳
 ラーマ2が出現。再び調査隊が組織され突入した。それぞれの思惑が交錯、地球はラーマを危険と見做し、核弾頭を発射する。

 前作より人間臭くなってしまった。叙情詩的な部分は無くなり、人間たちの思惑が交錯する。ここから先主人公は最終巻までニコルという女性。ラーマ人なども登場。正直、がっかりした。本当に普通のSFになってしまったから。宇宙人の描写とか止めてほしかったよー。
 否定的な事ばかり書いてしまった、ごめんなさい。ストーリーとしては、山あり谷ありで面白いです。ラーマ3の中で地球より乗り込んだ地球人が、地球と同じ組織を作り上げる。当然と言えば当然。その中でニコルは自分の正義を貫く。そして最後まで自分の生き方を自分で選択する。その当たりは気持ちいい。その子供達はそれぞれの生き方を持つが、母であるニコルのロボット(だったっけ) を生活の中に置くものも現れる。ニコルの絶望…は大げさだけれど、それは自分の存在への否定にもつながるだろう。あー、こういう展開って2001年宇宙の旅でもあった。続刊がだんだんと人間臭くなっていくのよね。

空飛ぶ円盤地球襲撃す (1956 アメリカ)

フレッド・F・シアーズ監督
観測衛星が破壊される事件が発生。マービン博士は空飛ぶ円盤と遭遇する。やがて空飛ぶ円盤に攻撃される事件が多発。彼らは地球を第二の故郷としようとしていた。

 続けてみたハリーハウゼンものの中では一番の出来。円盤や宇宙人の造形は…だけど、空飛ぶ円盤の動きと破壊力は魅せてくれます。何より核を安易に使わなかった事は拍手。で、ヒロインの胸はやはりしっかりしていました。
 最後は音波のような武器でやっつけていましたけど、マーズアタックはここからきてるのか、と。やはり古いSFはいいなー。

地球へ2千万マイル (1957 アメリカ)

ネイザン・ジュラン監督
イタリア海岸沖にロケットが墜落。金星より帰還したロケットは金星生物を持ち帰っていた。生物は孵化し巨大な怪獣となる。

 ハリーハウゼンの特撮もの!!です。怪物の動きは「あー、ハウゼンだー」みたいな感じで、堪能できます。象との絡みとかどういうふうに撮影したの??先に象?演技させるのが大変だ。
 で、ストーリーですが…。怪物を博士に売りつけた上、軍からお金を巻き上げたぺぺ少年だったっけ、色々な意味で大物になると思われます。ヒロインとヒーローの絡みはありがちで、ヒロインの胸は相変わらず凄いなと。ところで死病の設定は??感染はしないのね。すでにロケット墜落で突っ込めるし。んで象は基本おとなしい動物だし、あんな怪物と対面したら逃げないか??巨大になった生物をあんな陳腐なところに縛り付けただけで、何安心してるの??…古い映画にツッコミを入れるのは間違っていると思うのだけど、ま、それも楽しみの一つかな、と。
 最後に敗れた怪物が再び目を開かないところが、時代だな。現代だったら絶対もう一暴れがある、絶対。