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2023年11月30日木曜日

ギリシア・ローマの文学(講談社学術文庫)

 高津春繁著
(カバー裏より抜粋)  二千年以上読み継がれてきた西洋の古典は、どのような背景から生まれたのか。膨大な作品とともに、歴史上の傑作を時系列で、鮮やかに解説し、その時代精神まで描き出す。
 
 いやー、この本を手に取ってパラパラと見て「おお、ホメロスとかの文学解説!!」←内容的なと思い込んでしまった。違いました。ローマ・ギリシアの時代を追いながら、その時代の文学を、生み出した作家とその背景を描き出すものでした。

 素人が知っているのは有名どころのホメロス、キケロ、セネカ、サッポーとか限られますが、それ以外にも多い!!当たり前と言えば当たり前。今の時代もプロ、セミプロ踏まえて、作家はどれほどの数がいるのやらですから。
 
 知らない作家の知らない作品。時代が時代なので、まともに残ってはいない。本人の作品は無くなって、伝承のみとかも多い。そこから時代を彩り、時代に消えていった作家たちを紹介する内容…かな。最後に年表が付いています。この方面へ進みたい人の入門書みたいな立ち位置の一冊です。
 
 ちょっと読みにくいのが玉に瑕かなー。

2016年1月5日火曜日

逆行の夏 (ハヤカワ文庫)

ジョン・ヴァーリイ著 浅倉久志・他訳
(カバー裏より抜粋) 怜悧で官能的なヴィジョンがあれる6篇を収録。ヴァーリイの粋を結集したベスト・オブ・ベスト。

  表題作は以前読んだ「汝、コンピューターの夢」に収録されていた作品。同時収録されている作品はどれも傑作。副題の「ジョン・ヴァーリイ傑作選」にふさわしい内容。特に「群像」と「PRESS ENTER」が私の好み。「群像」はユートピア論としても読むことができる。聴覚障害と視覚障害の両方を持つ人々のコミュニティ。彼らは彼らの言語(コミュニケーション)、ルール、道徳を持って存在している。決して排他的ではなくまた受け身でもない。外部からの攻撃に対抗する気概も持っている。すごく面白かったのだけど、ラストが…。私に哲学的素養が足りないので理解できなかった。残念。書いていて、この作品「バービーはなぜ殺される」と土台が同じなんだと気づいた。こちらは読んでいて気分が悪くなってしまったのだけど。同じ顔をした人々のコミュニティでの殺人事件。みんな同じ顔、服装だから犯人が分からないのだ。設定は面白いのだけど、「私」がない世界が気分悪くて受け入れられなかった。「PRESS ENTER」はコンピュータ…ネットワークの殺人事件。登場するコンピュータが懐かしい。電話線のネットかー遅いだろうな…。画面焼けとか久しぶりの言葉。で、この作品犯人が分からず。分からないけどイライラはしない。すごく不気味で、そこがいい。「ブルー・シャンペン」もいい。特にオチが。「もともと彼女のしたことは、おれが許すも許さないもなかったのだ、と」泣ける。
 ジョン・ヴァーリイの短編集「さようなら、ロビンソン・クルーソー〈八世界〉全短編2」が2月に発売されるようで、絶対買いですね。 「さようなら、ロビンソン・クルーソー」はこの作品集にも収録されてます。で、また私の頭を悩ませる、クローンに記憶移植が登場するわけです。記憶移植してもクローンは別個体だと思うのだけれど…。

2015年5月15日金曜日

逆転世界 (創元SF文庫)

クリストファー・プリースト著 安田均訳
(カバー裏より抜粋) 〈地球市〉と呼ばれるその世界は、全長1500フィート、七層からなる要塞のごとき都市だった。ー中略ー月も太陽もいびつに歪んだ異常な光景だった。

 序盤・中盤とグイグイと読ませてくれます。主人公ヘルワードが外に出ることを許可されて、状況が少しずつ明らかになりつね世界の異常性が暴かれていきます。なぜ?という疑問のヒントは原住民という形ででてきますので、物足りなさを感じるかたも多いでしょう。でも、SF部分だけではなく読ませる力のある作品です。ヴィクトリアの存在は序盤中盤、終盤初めまでは効いていました。ただ…非常に残念なのが終盤…。エリザベスの存在。ネタばらしがこういう形というのは納得できません。ヘルワード自身に解いて呈示して欲しかったです。もっともヘルワードはエリザベスのネタばらしに納得していません。私もヘルワードの納得のしなさに、この小説内での事実はエリザベスの言う通りでいいの?という疑問を持っています。

2012年12月20日木曜日

牛乳屋テヴィエ (岩波文庫)

ショレム・アレイヘム著 西成彦訳
(カバーより抜粋) ユダヤ人集落のしきたりを破って伝統の枠から飛び出してゆく娘たちの姿に民族離散の主題を重ねた、イディッシュ文学の金字塔。『屋根の上のバイオリン弾き』の原作。

 調子のいいおっちゃんが主人公…なんだけど、子供が次々と離れていくのは読んでいて辛い。ツェィトルが一番幸せな結婚だな、と思ったけど、亭主に先立たれて子供抱えてって…。弄ばれて身を投げた娘の話は哀しいし。革命家と結婚した娘の後日談は出てこなかったけど、どうなったんだろう。玉の輿のはずの娘は零落してしまうし。おっちゃんと最期に一緒にいるのはツェィトルとハバァだけだけど、ハバァも幸せだった様子でもない。でも、生きていく力というか強さを感じさせられる作品だった。重い作品なのに語り口が軽快というか軽い調子なので、読み易くもあった。

2011年5月6日金曜日

ギリシア・ローマ古典文学案内 (岩波文庫)

高津春繁・斎藤忍随 著
西洋の文学の基礎であるギリシア・ローマ文学。その成り立ちを紐解いていく。

 紀元前ですよ、その時点で文字を持ち、叙情詩が口伝とはいえ存在し、今なお断片とはいえ伝えられている。ギリシャって凄い国だったんだ。…今は非常に残念になっているけど。
 ホメーロスが代表的な叙情詩に始まり、やがて舞台へと移り演劇へ。もちろんソクラテス、プラトーンに代表される哲学についても綴られている。そしてギリシャの影響を受けたローマ文学へ。他の有名どころも語られている。私程度で知っている人物や作品が多いので、臆することなし。十分楽しめます。ギリシャ・ローマに思いを馳せてみませんか。

2010年6月19日土曜日

ギリシア案内記 下 (岩波文庫)

パウサニアス著 馬場恵二訳
2世紀後半( ローマ最盛期 )に書かれたギリシアの紀行文の下巻。抄訳。コリント・アルゴリス・フォキス編。

 今回の訳注は1/3。訳者は涙をのんで妥協したらしい。ん…文庫の読者は専門外の一般人が多数だろうから仕方ないだろう。訳者のこだわりが感じられて私は好きなんだけど。
 著者はホメロスの詩歌をまるごと信じていたのか?伝承についての考察で、ホメロスが歌っているから、という理由付けが多々見られる。この時点で10世紀前でいいのかな、そして現在まで残っているのだから、ホメロス恐るべし。人類最強の文学者かも。
 面白いのは「○○はこの土地発祥」とか「○○はこの土地の生まれ」とか多い事。いつの時代も…発祥の地争い、笑える。
 今から1800年前…でいのかな…の紀行文が残されている、しかも著者が自分で歩いて見た正確なものが残されているのは素晴らしい事だ。そして、この時代に既に廃墟となっていたものが廃墟のまま今の時代まで残っているとか、石、恐るべしなのだ。

2010年6月16日水曜日

ギリシア案内記 上 (岩波文庫)

パウサニアス著 馬場恵二訳
2世紀後半( ローマ最盛期 )に書かれたギリシアの紀行文。抄訳。学術的に貴重な作品らしい。著者については名前以外詳しい事は分かっていない。 

 "この本の成分は半分注釈でできています" な作品。パウサニアスがきちんと自分の計画した順路に従い、当時有名だった名所旧跡を解説していくのだが、それに対して訳者が詳しい解説をつけている。その建物、美術の現在の状況、発掘現場等、解説の正否など丁寧にされているので読む価値はあると思う。
 石は強いな。この紀行文が著されたのは2世紀、それよりも以前の作品が、完全な形でないにしろ現在にも残っている。パウサニアスが観ていたものを観る事ができるのはすごい事だ。何世紀後にも残したければ、やはり石最強か。そして面白いと思うのは、パウサニアスの間違いや勘違い( 酷い時は騙されている )を今の調査で指摘できる事。技術が進んで細かい検証ができるようになったとはいえ、不思議に感じてしまう。
 ギリシャは現在一般人がなぜこうったの?状態になっているけど、この2世紀後半ローマの支配下のギリシャで、パウサニアスもギリシャの状況を残念に思っていたのだろう。

2010年2月24日水曜日

ギッシング短篇集 (岩波文庫)

ジョージ・ロバート・ギッシング著 小池滋訳
ロンドンの下層の人たちを中心に据えた短編集。8話収録。

 登場人物が自分の鏡のようだ。「境遇の犠牲者」「塔の明かり」「クリストファーソン」…、ああ、嫌だ嫌だ。彼等の滑稽さ、愚かさは笑えない。「境遇の犠牲者」、自分を客観視できず悲劇の主人公という妄想に生きる男、「塔の明かり」も似たような主人公、現実を見つめられない。「ルーとリズ」何という自己中。「クリストファーソン」、本の話は積ん読趣味の者には他人事ではない。妻の命か本か? 当然命なんだけど、それまでにやはり葛藤はある…クリストファーソンの気持ちは理解できてしまう。
 何だか悲壮な話ばかりみたいだけど、そんな事はない。読みやすくて面白い、けれど胸がズキズキしてしまうのだ。