2010年9月30日木曜日

こいつらが日本語をダメにした (ちくま文庫)

赤瀬川原平、ねじめ正一、南伸坊著
諺、格言を嬲って遊ぼう。

 知らない諺がある…情けない…。諺等の意味を言葉通にストレートに捉え( もちろん元々の意味とは違う )、そこから発想を逞しく色々な方向へ話を延ばしていく。例えば「首を長くして待つ」ろくろ首から歌手の話へととりとめなく進む。エロ系、下ネタにくるとがぜん盛り上がるのは男性の性なのか。真面目な本ではありません。お気楽に読んで下さい。日本語の再発見にもなるかも。

2010年9月29日水曜日

どんぐり民話館 (新潮文庫)

星新一著
奇妙な味わいの短篇を民話風に読ませる。そして最後にオチが。

 バラエティに富んだ短編集。SF、童話調、現代ものの作品まで幅広い。この幅広さは著者の魅力の一つ。この短編集に収められた作品は、人間の奥底をくすぐっているような感じだった。「王様」主人公の息子は、主人公と同じような道を歩みそう。「影絵」何が何だか。「さもないと」たたりとかこんなものかも。童話等とは違って。
 気楽に楽しめる作品ばかりです。

2010年9月25日土曜日

中世賤民の宇宙 (ちくま学芸文庫)

阿部謹也著
中世賤民の外部観に関する著作。宇宙といっても所謂宇宙ではないので注意。

 基本は現代の時間感覚や空間感覚を、中世に持ち込んで物事を測ってはダメだ、ということ。私たちの今の文化感覚も、後世の人々には理解仕切れない部分があるに違いない。こういうふうに考えると、歴史について絶対確実な事はないのではないかと思えてしまう。タイトルに宇宙とあるが、これは自分たちの内部を小宇宙とし、その外部を大宇宙と設定している。排泄物も宇宙から宇宙に送り出されたもの。正直言うと、本当にその時代の人が述べられているように感じていたのかちょっと疑問だけど、これが現代感覚なのでしょう。感覚が違うのに、その物差しで死生観など文化を測っては勘違いの元ととなるよ、と。遺言書の話は面白かった。っていうか、教会って清貧…。現代の日本の寺と張る貪欲さ。
 で、著者が西洋には賄賂がないと述べてみえるけど、本当なの?日本に本物の無礼講が存在するの?存在するとは思わないけど。無礼講は建前で、ぜーったい何だかの報復やらがあると思う。

2010年9月24日金曜日

にぎやかな部屋 (新潮文庫)

星新一著
高利貸しといんちき占い師夫婦、娘一人が商売をする一室。住んでいるのは三人だけ?長編。

 生きている人間が欲望に忠実に生きる様を観ている死者たち。夫婦に取り憑いた心中カップル、娘に取り憑いた老紳士。騒ぎをもたらす連中にも死者が憑いている。けれど彼らは決して現世に口出しする事はできない。ちょっとだけ通じる事もあるけど。ただ観ていて、あれこれと話しているだけ。で、それを観ている…もとい読んでいるだけの読者…で私たち読者を観ているのは?部屋の中は実はギュウギュウ詰めかも。

2010年9月23日木曜日

スケッチ・ブック (新潮文庫)

W・アーヴィング著 吉田甲子太郎訳
各地の風習や伝説を集めた一冊。スリービー・ホローの元ネタが収録されている。

 とりあえずタイトルを「スリービー・ホロー」に変えられなくてよかったな、と。日本の出版社ならやりかねないから。各地の不思議な話や風習を、著者がロマンチックに歌い上げているといった感じ。個人的には「幽霊花婿」が好きかな。何となく他でよく似た話を読んだ気がするけど。「ジョン・ブル」もいい。映画で有名になった「スリービー・ホロー伝説」、原作とはいえない。原案かな。短いお話。主人公はかっこ良くはない。…というか首切られてるし。

2010年9月21日火曜日

お世継ぎのつくりかた (ちくま学芸文庫)

鈴木理生著
江戸時代の後継者事情を描くことで、江戸時代のシステムを浮き上がらせる。

 江戸時代の大店は娘に婿を取って後継者としていた。…意外だった。落語や時代劇で、商人の放蕩息子の話を観て聞いていたので、まさか叩き上げのシステムだったとは思わなかった。とにかく一般人には意外な話が一杯。…もしかして私が物知らずなだけなのか?あ、「藩」が明治以後の呼び方だと知らなかったのは物知らずかも。
 以前「生む機械」が話題になったことがあったけど、江戸時代はまさしくそのもの。男のほうもただの注入器。製造することが仕事。p149の「武士道とは死ぬことをみつけたり」の下りは笑えた。大人はそれでいいけど、「生む機械」といっても見返りは大きいし、でも殺された赤ん坊のことはつらいね。いったいどのくらいの人数だったのだろう…。読んでいると、十分有り得ることと思える。
 後継者についてのことだけではなく、そこから江戸時代の様々なシステムに話が広がっている。読み物として十分楽しめた。

2010年9月19日日曜日

今日の積ん読

エジプト神イシスとオシリスの伝説について プルタルコス 岩波文庫

 出版社取り寄せだったんだけど、思ったより速く届いた。ちょうど読書の秋、虫の声をBGMにして本を読みたい。最近購入する本の数が減った。意識的に減らそうとしているのと、ブックオフへ行く暇がないのと、どうも興味のある新刊がでないのと…。来月は2冊購入予定。

現在の積ん読 本:172冊 DVD:80枚

2010年9月17日金曜日

きまぐれ体験紀行 (角川文庫)

星新一著
星新一のアジアを中心とした旅行記。

 ソ連、東南アジア、香港、韓国を巡る旅。ソ連の小説は純文学とSFだけ、は驚いた。SFはアリか。アメリカと競争していたし、小説であろうと科学への発想は貴重と考えたのかな。フィリピンの心霊治療も面白い。実際体験しようとする姿勢がすごい。私は興味はあるけど、挑戦する度胸はないから。一応星氏は手品の類いだろうと述べてみえる。ただし非難はしてみえない。私も星氏の理論に納得。他にも占い等いろいろ体験してみえる。ただ、昭和56年以前の旅行だから、その辺を差し引いて読んで下さい。

2010年9月16日木曜日

河童の手のうち幕の内 (講談社文庫)

妹尾河童著
エッセイ集。タイトルの通り、いろいろ詰まってます。

 妹尾河童氏節のエッセイ集。取材の記録から自伝、雑学まで詰まっている。本の旅は興味深かった。本屋の悩みは今も昔も変わらないんだ。配本がされない、客が離れる。これは1992年に単行本として発刊された作品。今はネット通販が、地方で日にちが多少かかっても配達してくれる。ここに紹介された本屋さん、どうなっているんだろ。他旅の記録はこの著者らしくて楽しい。著者の頭の中どうなっているんだろ。羨ましいような、ないような。河童氏の自伝のパートは「河童のおしゃべりを食べる」とダブっている部分あり。最後に河童氏の俯瞰図の描き方が掲載されている。簡単そうに述べているけど…。

2010年9月13日月曜日

宇宙への序曲 (ハヤカワ文庫)

アーサー・C・クラーク著 山高昭訳
月への旅の準備が着々と進む。現代の"ギボン"たる主人公は、それを歴史として後世に残すため、取材を行う。

 その時何が起こっていたか。ドラマチックな展開などはまったくない。淡々と起こる事や人間模様を描いているといった感じ。私はこういうの好きだけど。解説の人が述べてみえるように「幼年期の終わり」みたいなクラーク作品を求める人は読まない方がいいと思う。あー、この作品、特別な悪人はいなかったな。ちょっといってる人が一人いたけど。
 現実に月への旅は行われているのだけれど、だからこの作品が古くさいかといえば、そうではないと思う。宇宙への憧れ、初めての一歩、群がる人々、興味はそこにあるから。実際はもっと凄まじいのだろうな。一つのパラレルワールドとして楽しんでみるといいかも。

2010年9月12日日曜日

華氏451度 (ハヤカワ文庫)

レイ・ブラッドベリ著 宇野利泰訳
本を持つ事を禁じる時代、焚書官の主人公は、不思議少女と手にした本によって運命を変える。

 主人公が酷く間抜けに感じた。感情だけで走って冷静な判断ができないタイプ。読みながら「何だ、こいつ」状態。ごめん、私の嫌いなタイプだったんだ。自分を一つ上において、人を見下しいるのがどうにも…。奥さんのほうが理解できる。こんな亭主、つきあってられないし。最近、レイ・ブラッドベリが デジタル書籍批判したっけ。私はこの「華氏451度」という作品は、紙云々より思想弾圧への批判と受けとっていただけに、ちょっと…だった。本の形ではなく中身だろ。( 絵本やアート系の本の形からの表現物は別 ) 読む事とそこから考える事が大切であって、形ではないと思うんだけど。言っておくが、私は本の形は好きだし、読むなら紙の本がいいと思っている。けれど、デジタル書籍の利便性やそちらの方が読み易いという人がいるのは当たり前だとも思う。で、日本人は自炊を始めました。
 最後に解説が載っているんだけど、ちょっとズレてる気がした。とりあえず本を読む読まないと人間性は関係ないだろ。私は一般よりは読むとは思うけど、嫌な人間だぞ。私は本は娯楽と考えているから、叡智とかどうでもいいし、解説の人とは相容れないかも。

2010年9月11日土曜日

今日の積ん読

お世継ぎのつくりかた 鈴木理生 ちくま学芸文庫

 お世継ぎというと陰謀…学術文庫でこういう話はではないだろうけど、下世話な一般市民には興味深いところ。
 「エジプト神イシスとオシリスの伝説について」(岩波文庫) 7月の復刊なのだが、全然入荷されないので意を決して出版社取り寄せというので注文した。岩波書店のHPでは在庫ありのようなので、1ヶ月程度待てば入荷されるだろうと期待したいところ。 

現在の積ん読 本:172冊 DVD:80枚

 最近は少々忙しくて、寝る前や空いた時間に手軽に読める本や薄い本に偏っている。自炊は進んでないし…やっと47冊…。はやく通常に戻りたい…。

2010年9月9日木曜日

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫)

アガサ・クリスティー著 清水俊二訳
全く面識のない、経歴、出自が違う十人が、オーエン氏を名乗る人物に「インディアン島」に招待された。そして殺人が始まる。何度も映画化された名作。

 映画版を先に観ていたのは失敗。頭に映画の方の絵が浮かんでしまう。私としては、小説のほうが面白いと思った。ああ、観てなかったらもっとドキドキできたのに!!で、一番酷い奴を最後に殺すとなっていたけど、秘書さんが一番罪深いと判断されたのか。純粋な金目当ての執事夫妻のほうが上と思ったけど。
 実はアガサ・クリスティーの著作読んだのは初めて。推理ものが苦手で、手を出さなかった。もったいない事してたな。何というか、途中で止められない面白さがある。これからちょっとずつ読んでいきたいと思った。

2010年9月8日水曜日

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫)

リチャード・マシスン著 尾之上浩司訳
突如蔓延した疫病で人類は絶滅の危機、恐らくただ一人の生き残りであろうネヴィルは絶望と自暴自棄とヤツらと戦いながら、生き抜くのだが…。何度も映画化されている名作。

 元々のタイトルが「I AM LEGEND」だったのか。1964年版の映画はかなり原作に近かったんだ。ラストが違ったような気がするけど…覚えていない。映画版より主人公の感情が行ったり来たりしているのが理解できていいと思う。犬の辺りは切なくなった。ラストはどうなんだろう。結局人間という種族の愚かしさでいいのかな。

2010年9月7日火曜日

蝸牛考 (岩波文庫)

柳田国男著
蝸牛を表す方言から、言葉の分布を考察する。方言周圏論。「かたつむり」ではなく「かぎゅう」と読む。

 私が使うのは「でんでんむし」「かたつむり」かな。「マイマイ」は知識として知っているだけ。考えてみると不思議。蝸牛にこんなにたくさんの呼び方があるとは。それがどうようにして発生したか、影響されているかを考察しているのだが、蝸牛のほかの方言を考えてみても面白い。自分の住んでいる地域の呼び方を探してみるといいかも。
 現代の言葉はメディア、ネットの影響で全国でそれほどの違いはなくなっているのだろうけれど、新しい呼び方や隠語は発生している。隠語が一般に広まって使われるのは今も昔も変わらない。そういえば本の自炊も隠語だったとか。ネットがあるので、昔より広まるのも廃るのも早いかもしれない。
 蝸牛の話なんて退屈そうに思うだろうけれど、中々面白い。 今まで読んだ柳田国男氏の作品の中では一番好みに合った。

2010年9月6日月曜日

ビーグル号航海記 上・中・下巻

チャールズ・ダーウィン著 島地威雄訳
有名なガラパゴス群島での記録を含む旅行記。

 ダーウィンというと「種の起原」(もちろん積んであります) 、その元として有名なガラパゴス群島。ガラパゴス群島での記録はとても興味深く面白いけれど、他にもブラジル、ペルーなどオーストラリアなどの記録も面白い。動植物、地形、気候はもちろん、人種、その性質、西洋から移住した人々の事などにも言及がある。現地人に対する視線は、基本的に冷たいかな。イギリス万歳西洋万歳みたいなところが多い印象。仕方ないか。土地の記録としてだけではなく、旅行記として十分楽しめる。

2010年9月5日日曜日

おみそれ社会 (新潮文庫)

星新一著
短編集。表題作ほか11篇。

 じつは星氏のファンだったりする。この著者の作品は子供から大人まで楽しめるところがいい。長編より短篇がいい!他のイラストレーターの方には申し訳ないけどこの著者の作品は和田誠氏の挿絵がとてもよく似合うと思っている。あくまで個人的な意見。
 この短編集の中では「はだかの部屋」と「ああ祖国よ」がよかった。「はだかの部屋」どんどん同じ場所に閉じ込められる話は古い物語によくあるけど、興奮した男女が裸ですよ。どうなるかは自分の想像力で。 「ああ祖国よ」は皮肉。古いジョーク集にアメリカに宣戦布告して、さっさと負けて援助をもらおう、というのがあったっけ。日本の場合は?

2010年9月4日土曜日

河童のおしゃべりを食べる (文春文庫)

妹尾河童著
著者が客人を招きまた招かれ、馳走し馳走され、馳走を肴におしゃべりを楽しむ。

 馳走される料理がおいしそう。楽しそうな雰囲気が余計おいしそうに感じさせる。おしゃべりが読者にはおいしい。ただ、私は他のシリーズを読んでいるので、他の著書とよく似た話が多いかな、みたいな印象もある。良く言えば安心して読めるという事。佐藤信氏の回のほか弁シリーズがよかった。ほか弁並べてつつき合うのっていいなー。とにかく気楽に楽しめる一冊。

2010年9月3日金曜日

読書案内 (岩波文庫)

W.S.モーム著 西川正身訳
モームの読書の手引き。欧米文学の紹介。

 「世界の十大小説」が面白かったので、同じ著者の同系列の作品を買ってみた。紹介されている作品で読んだ事あるのは、ポーだけでした。フローベールは「紋切型辞典」は読んでるけど、小説とは違うな。「世界の十大小説」を先に読んだせいか、淡々としすぎているような気がした。雑誌連載だったようで、文字数の制限もあったせいもあるだろう。ちょっと不満。ただ、著者の読書することへの考え方には同意する事しかり。楽しめない作品はつらいだけだし。つまらないところは飛ばせばいいとか、飛ばす事に妙な罪悪感を持っていたけど、飛ばしていいんだ。p69詩に関しても同じ事思ってた。詩は原語だろ、やはり。俳句が英訳されているけど、あれで理解できるのかな?あー、もちろんどんな作品でも原語で読むのが一番なんだろうけど、詩、俳句等は特に原語であることに意味があると思った。
 18、19世紀の欧米文学に興味のある人は一読するのもいいと思う。

2010年9月2日木曜日

失われた世界 ロスト・ワールド (岩波文庫)

アーサー・コナン・ドイル著 加島祥造訳
新聞記者の主人公は、女の戯言のために南米へ旅立った。そこは未だ恐竜や猿人が暮らす失われた世界だった。昔懐かし冒険活劇。

 某掲示板で「失われた世界なんて書いてる暇があったら、ホームズを書けば良かったのに」とか書かれていたのを思い出した。そんな酷い作品とは思わなかったけど。昔の冒険活劇、荒唐無稽だけれど、私はそういうの大好きなので問題ない。ハードSFを好む人にしてみたら噴飯物なのかも。荒唐無稽がダメな人は、この作品はパスしたほうがいい。ま、でも、昨今のライトノベルだってむちゃくちゃだし、この程度問題ないと思うけど。
 主人公の新聞記者が情けない、というかありがちのキャラ。グラディスが名声に靡く女ではなくて良かったじゃないか。チャレンジャー教授が個性強すぎて笑える。猿人が奴隷になったけど、外の人類が歩んだ道を繰り返すのね。この世界のインディアンたちの行く末が気になる。いずれ外の世界から…。
 最後は大円団。あらすじは王道で今更かもしれないけど、気楽に楽しめる一冊。

2010年9月1日水曜日

ハンニバル 地中海世界の覇権をかけて (講談社学術文庫)

長谷川博隆著
大ローマ帝国とカルタゴの将軍ハンニバルの戦いについて。小説ではない。

 実はハンニバルについて全く知らなかった。なんか映画になってたな、程度。でも知らない人でも判りやすく理解しやすい。戦略等も図が付いていてる。著者もあとがきで学生、一般読者を対称としていると述べてみえる。
 カルタゴ側に資料が残っていたらよかったのに。大概のローマ系の本はローマ贔屓で、ローマが勝利して良かったと結ぶものが多い。歴史は勝者によって作られるとは良く言ったものだと感心した。ハンニバルにもカルタゴ側にも言い分はあったろうに。結構長く生き延びていたのに驚いた。大人しく引退はできない人だったんだ。大人しくしていてもローマから睨まれていたし、結果は変わらなかったかな。