2017年7月22日土曜日

ハイ・ライズ (創元SF文庫)

J・G・バラード著 村上博基訳
(カバー裏より抜粋) ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす新築の40階建の巨大住宅。全室が入居済みとなったある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配し始めた。

 J・G・バラードの名前を見た覚えがあったので、購入してみました。ちなみに映画は存在を知らなかった…。
 で、これはSFなのか??個人的にはホラーだと思うのですが。個人の印象ですし、カテゴリがどうあれ面白い作品です。長編苦手な私でも、次々という感じで引き込まれました。主人公は三人。始めは戸惑いましたが読み進めれば平気です。一つの高層マンションが、三つのカテゴリーに分裂。マウンテンしながら、戦争へと突き進みます。主人公三人はそれぞれのカテゴリーを代表するイメージを持っています。
 電気・水道等ライフラインが壊される、ゴミ収集もストップでマンションはゴミでバリケードが作れる状態。プライバシーなんて崩壊。他人のものは自分のもの。所謂「ヒャッハー」な世界です。それを底辺な人々ではなく、上流階級な人々がやるのですから。
 酷い惨状ですが、住人は決して警察に助けを求めません。惨状を外へは漏らさないのです。そして出て行かないのです。一種のマインドコントロールのような気持ち悪さを感じました。普通なら誰かが話してしまうでしょうし、私は逃げますけど、そこは小説ということで。
 ラストは中々良かったです。うまくまとめたというか、そう来たかというか。男弱ーみたいな。

  ちょっと失礼な事書いてしまいますが、ちょーと文章が読みにくかったです。それが残念。

2017年7月18日火曜日

時をとめた少女 (ハヤカワ文庫)

ロバート・F・ヤング著 小尾芙佐他訳
(カバー裏より抜粋) 千一夜物語に登場するシェヘラザードに恋した時間旅行員の物語「真鍮の都」ほか、愛と叙情の詩人ヤングの名品全7篇を収録。

 著者の作品「真鍮の都」を別の短篇集で読んだ事があります。その時は甘い恋がいい感じと思ったので、他の作品も読んでみようと購入しました。
 表題作「時をとめた少女」はタイムパドラックスをテーマにしています。作品で使われている理論は、私のような素人が読むと「マジできそう?」なんて思ってしまいます。実際はどうなんだろう。恋をした少女(異星人)が別の異星人に恋した片思いの相手を取り戻すためにタイムパドラックスを利用するお話。同じタイプで「わが愛はひとつ」も収録されています。千一夜物語をテーマにした「真鍮の都」もですが、むず痒くなりそうな愛のお話が多いです。なんというか小説というより「物語」といったふうに感じました。「真鍮の都」を別の短篇集で読んだと言いましたが、これはテーマで集めた作品集(著者はバラバラ)だったので、他の作品とのバランスで甘さを心地よく感じたのかな…。正直私の好みからは外れていました。これは好みの問題ですね。

TAP (河出文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真訳
(カバー裏より抜粋) 究極の言語表現を可能にするインプラントTAPを使用していた詩人が、謎の死を遂げた。捜査を依頼された私立探偵が見た真相とは…

 インプラント…これ欲しい…。マジで。著者の作品は「脳」をテーマにしたものが多いのですが、インプラントは他の作品にもよく出てきます。表題作の「TAP」はハードSFぽくて科学的な定義は私にはさっぱりです。でもその辺りをテキトーに読み飛ばしても面白いと思えるのは作品として凄いなーと思います。
 個人的なお気に入りは「新・口笛テスト」。CM等で流れる曲をいつの間にか覚えてしまって口ずさんでいることありませんか?私はスーパーのテーマ曲に洗脳されていますww 一時イオンのお魚コーナーの曲に脳がやられていました。大した曲ではないはずなのにーです。これをテーマというか、人の脳に影響を与える音をCMに組み込んで大ヒットさせる話なのですが、この影響を過敏に受ける人達がいた。テーマが身近なのが面白いです。
 「銀炎」は名作とされていますが、私はパス。病気に冒された人の症状を想像して…所謂「グロ注意」で…。
 「視覚」もいいですね。視線というか見る事を考えさせられます。「ユージーン」は息子ひでーなお話。 「要塞」アメリカにはゲートといわれる地域遮断したいな壁があるそうですが(「ゲーテッド・コミュニティ」という本を参考に読んでいます)、これは身体的な壁です。あらゆるウィルスを無効化できるDNAを持つ人々の存在。移民問題をテーマにしたお話です。他も面白いです。お勧め。

 最近グレッグ・イーガンに嵌っています。

2017年7月3日月曜日

カニバリズム論 (ちくま学芸文庫)

中野美代子著
(カバー裏より抜粋) 人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。

 学術系ですが、内容はエッセイ集っぽいので私でも読み易い。カニバリズムでは、よく取り上げられる事件も出てきます。有名な民話もありますし、意外と馴染み易い内容です。読み易い、馴染み易いだけではなく面白い。ただ気になったのは、古代中国の政治や体制と現代の中国ではなく日本と比較するのはなぜだろう?ということ。著者は左な人??多分そういう側面はあると思うけど、でも改めて後書き読んで理解。中国人のイメージは超合理主義ですが「近代合理主義精神」とは違うように思います。あと、纏足とか宦官とか中国の超田舎とか闇な世界に未だ公然と残ってそうですから。←偏見ww

 とりあえず青空文庫に魯迅の「狂人日記」あったかなと。読んだ事があるはず、でも食人の話だったっけ?と思ったらゴーゴリでした。