2018年7月27日金曜日

ポンド氏の逆襲 (創元推理文庫)

G.K.チェスタトン著 南條竹則訳
(カバー裏より抜粋) 逆説の法則にさえ逆説的に挑戦するポンド氏が語る、論理的かつ意外な真相。

 逆説というか会話に於ける説明不足では?と思ってしまった私は、きっとバカなのです。ちゃんと筋道通して話せば理解できる事を難しく言ってる、としか読めなかった…。いや、推理小説としては面白かったですキャラクターは立っていますし、主人公のポンド氏より、脇役が良いです。ガヘガン、エイサ・スミス、ヴァイオレット・ヴァーニー、特に女性二人は出番少ないのに、印象強いです。実際に周囲にいたら嫌な人物ですが。ウェットンの影の薄さには涙。
 語り手はどういう人物なのか?あまりよく分かりませんでした。そこは重要ではないのかもしれません。
 どうも個人的に逆説に引っ掛かってしまったこと、ポンド氏の魅力が私には今一つでした。ただ、推理小説としては面白いですし、チェスタトンの作品ですから、気にかかる方はどうぞ。

2018年7月13日金曜日

古代ローマ旅行ガイド (ちくま学芸文庫)

フィリップ・マティザック著 安原和見訳
(カバー裏より抜粋) 人口も規模も世界最大の、古代都市ローマ。タイムスリップしてそこを訪れるとしたら?そんな想定で作られたのが、このトラベルガイドブックだ。

 初めてローマに触れる人向けかな。いや、ある程度知っている人でも楽しめます。ローマへの旅行者を案内する視点でローマを語る…みたいな。私はどちらかというとローマの事件、人物等に知識(というほどでもないですが)偏っていますので、地理、建物、食べ物等興味を誘ってくれる内容で面白かったです。ローマの歴史に詳しい人には物足りないかもしれません。ちょっと知ってる程度が一番楽しめる内容です。

2018年7月3日火曜日

ゆるい生活 (朝日文庫)

群ようこ著
(カバー裏より抜粋)ある日突然めまいに襲われ、訪れた「漢方薬局」。ここから漢方薬を飲むだけでは終わらない、我慢と忍耐の暮らしが始まる。

 このエッセイを著者が書いた頃と年代が近いので買ってみました。時々この手の作品を買いたくなります。心が疲れているのかも…。
 内容は漢方薬局でのやりとり、注意された事を守りながらの生活が描かれています。正直「私には無理ー」な内容。いやー全然ゆるくないけど…。でも楽しそうに描かれているので、ちょっといいなーとも思ったり。でも漢方薬局…高そうだなー。
 面白いなーと思ったのは、受験生を合格させる為に漢方薬局訪れたり(いや勉強できる環境整えて勉強させるのが普通では??)、家事をする必要のない奥さんの指が腫れた話(指を使わな過ぎて)等々。あるある話も多くて、寒くてもファッション優先で冷え性になる女性、お受験したいけど多動性でじっとしていられない子供、痩せてるのにまだ痩せたい女性、食事制限はいや、でも痩せたい女性等々。あるあるだから興味深く読んでしまいます。
 これを読んで、下着のパンツをお臍までのBBAパンツに変えようかと思ってしまった。多分もうしばらくは変えませんが。
 ただ、ここに書かれている事を鵜呑みにするのは危険です。著者も書いてみえますが、体質、生活状況は個々で違いますから。著者ば座業です。私のような肉体労働者が同じ事をしたら、間違いなく熱中症で倒れます。でも甘いものを減らす等は真似していいかも。

 私と同年代の方向けです。読み物としても面白いです。著者のエッセイは読み易くて面白い。ちょっと生活を見つめ直すのにはいいかもしれません。

2018年6月26日火曜日

ホームズと推理小説の時代 (ちくま学芸文庫)

中尾真理著
(カバー裏より抜粋) イギリス、アメリカ、そして日本の推理小説を概観し、正当な評価を与えるべく英文学者、愛好家の視点から考察する。

 正直言いますと、ホームズは大して読んではいないのです。どちらかというとクリスティが好きかな。マープルとかポアロとか。でも推理小説への興味というか歴史には関心があるので購入してみました。
 ホームズ関連の話は面白いです。意外だったのは本当に推理小説といえるものが少ないということ。でも、そんなことは関係なく読ませる魅力があるのでしょうね。ただ復活に関しては、今時の漫画をパターンを思い出して「昔からあるんだー」と笑いました。ホームズは今もドラマ・映画になっています。それだけの魅力があるのですね。私はエレメンタリーホームズ&ワトソンが好きです。そしてホームズの設定は大概変わり者、ワトソンは愚鈍で率直な常識人。
 ホームズの話だけではなく、ホームズ以前の推理小説…ポーについて、ホームズの影響を受けている推理小説、様々な視点で語られています。日本の推理小説の歴史も述べられています。
 ホームズをメインにおいて推理小説全般について語られています。推理小説自体にちょっと関心があるという方でも楽しめると思います。

2018年6月19日火曜日

ヨゼフ・チャペックエッセイ集 (平凡社ライブラリー)

ヨゼフ・チャペック著 飯島周編/訳
(カバー裏より抜粋) 鋭い観察眼で人々のの暮らしや社会、芸術、戦争などを見つめたエッセイ26編とナチス強制収容所で死の直前に綴られた詩9編。

 正直に言います。カレル・チャペックと勘違いしてました。お兄さんのほうのエッセイ集です。チェコという国、政治背景がなかなか難しい国です。そして有名な芸術家を多数輩出している国でもあります。私はアニメーションが好きで観ることが多いのですが、テーマの重さは常に感じます。この作品も然り。背景が分からない部分が多いので、著者の本音がくみ取りにくかったり。始めのテーマ「人々」のあたりは面白く読めるのですが、それ以降は厳しいです。未来派、ピカソを皮肉っているのかなーとか私の知識の限りで頑張りましたが、無理でした。そして段々と重くなる…。

 背景が理解できている方にはお勧めです。そうでないと飽きるかもしれません。

2018年5月25日金曜日

祈りの海 (ハヤカワ文庫)

グレッグ・イーガン著 山岸真編・訳 (カバー裏より抜粋) バックアップ用の宝石を頭の中に持った人類の姿を描く「ぼくになることを」ほか、遥か未来世界や仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短篇集

 この短篇集は私には当たりでした。どれも好みに合う、面白い。「ぼくになることを」要は脳のクローンですよね、これ。そのクローンは老化しない。でも、その脳=宝石の自分は元の脳の自分とイコールなの??作品を読むと別人格を示唆しているようで。「誘拐」誘拐されたのは最愛の妻。でも現実の妻は側にいる。誘拐されたのは仮想空間で作られた彼の理想の妻(と私は思った。現実の奥さんがこうだったらいいのに…みたいな) 。あなたは身代金を払いますか?「百光年ダイアリー」未来の自分の日記を読んでその通りに行動する、その通りのことが起こる。みんながそれに従い生きていく。嫌だなーこんな世界と思うのだけど、主人公はそれに疑問を持たずに生きていく。でもある日気付かされる。歴史は勝者が作るのだと。表題作「祈りの海」宗教の強い世界。信心深い主人公。ある儀式を経て神ベアトリスに自分が愛されていると確信している。だがその儀式は、ある向精神性分解生成物が関連していて…。正直主人公が信心深過ぎて共感できない。周囲にいたらドン引きするタイプ。もっとも登場する宗教家連も同じだから…。ラストが…主人公の未来の道筋がみえない。
 他にも面白い短篇が収録。あ「キューティー」も良かったなー。主人公の気持ち分かる気がする。可愛い時で止まっていてくれたら…。とりあえずお勧めです。

2018年5月4日金曜日

監督小津安二郎 (ちくま学芸文庫)

蓮貫重彦著
 (カバー裏より抜粋) 人々がとらわれている小津的ななるものの神話から瞳を解き放ち、その映画の魅力の真の動因に迫る画期的著作。

 実は私は小津監督の映画は観た事がありません。私の観ているDVDのタイトルを観て頂いたら理由は分かると思います。難しい映画は無理。それなのになぜこの著作を買ったのか?というと、難しそうな映画への憧れかな?もしかしたら観てみようかと思うきっかけになるかもと思いまして。

 内容は様々な観点から小津映画を考えてみるみたいな感じです。第一章の「否定すること」では常に否定…褒める場合も否定から入る…通常の映画(通常という言い方も変ですね)のあり方から小津映画を観ると…みたいな。私のような素人でも納得することが綴られています。納得しても理解は難しい内容です。私の印象では有名な小津映画は箱庭的?のように思いました。

 映画(アイドル映画とかハリウッド大作のみが好きな人は止めたほうがいい)に興味ある方は読んで損は無いと思います。で、小津映画を観てみようと思ったか?というと…多分退屈してしまいそうなので無理です。

2018年4月24日火曜日

ヒトラーの描いた薔薇 (ハヤカワ文庫)

ハーラン・エリスン著 伊藤典夫訳
 (カバー裏より抜粋) アメリカSF界のレジェンドが華麗な技巧を駆使して放つ全13編を収録した日本オリジナル短篇集。

 「ロボット外科医」これは怖い…。ロボットに支配されたというと陳腐だけど、掘り下げが深いし感情を理解することの大切さ。今はやりのAIはどういう方向に向かうのか。「恐怖の夜」差別問題をテーマにした作品。重いテーマなので、気分が悪くなる。「冷たい友達」ストーカーこわーなお話。でも主人公の軽さも怖い。「ヒトラーの描いた薔薇」テーマは「神」かな?人間と変わらない、真実ではなく信じられている事で裁き…あれ、今時の「神」像かな。

 胸糞悪い作品、希望があるようで実はない作品が多いような。現代のSFに用いられるテーマの先駆者といった感じです。何というか重い作品が多いです。

2018年3月2日金曜日

昔には帰れない (ハヤカワ文庫)

R.A.ラファティ著 伊藤典夫/浅倉久志訳
 (カバー裏より抜粋) SF界きってのホラ吹きおじさんの魅力あふれる中短篇16篇を収録した日本オリジナル傑作集。

 作品は前半(1)と後半(2)に分けられており、作品の傾向に若干差があります。前半の作品は気楽に楽しめる小品群です。
 「素顔のユリーマ」(おいおい天才じゃないの?と思わせる主人公。制作物や世間に蔑まれて復讐を…と書くと重い作品?っぽいですが、全然。軽快に楽しく読ませてくれます)「楽園にて」(楽園と思わせて実は…。詐欺してやったと思っていたら…)は特に好き。
 後編はどれも面白いけれど、解釈するのが難しいです。私はあまり深く考えず楽しく読みました。 
 「廃品置き場の裏面史」二重人格の犯人を追いつめようとする警察官。でも実はそれは…。何が真実??何も真実はなかったの??「大河の千の岸辺」太古のマイクロフィルムに収められた岸辺。制作者は何者か??奥さんのジンジャーが実は意味深??浮気相手が気になる。他どの作品も面白いです。

2018年1月16日火曜日

紙の動物園 (ハヤカワ文庫)

ケン・リュウ著 古沢嘉通訳
 (カバー裏より抜粋)魔法のような母さんの折り紙だけがずっと僕の友達だった……。

 表題作「紙の動物園」泣けるー!!魔法のような折り紙。命を吹き込まれた折り紙。母親の愛情のこもった折り紙。母を理解できなかった息子。仕方ない部分もあるけれど、それでももう少し…と思ってしまった。拗れてしまった感情は難しい。
 「月へ」主人公の成長物語??重い。主人公が家政婦にした事、初めて担当する事案、絡み合って…。結局何もできない。
 「結縄」…これは日本の農業にもあるある話。種。例えばイモ。昔は作った作物からの種芋で次の作物を作ったけれど、今は作れない…というか、できのよくないイモしか作れません。種芋は種芋として買わないと…。これは実際起こった、起こっている話でしょうね。
 他、中国・台湾の絡んだ…正直重い話が多い。そういうのが好きでない人は避けたほうがいいです。重い作品が苦手な私には向かないです。ただ、作品としては素晴らしいと思います。これは本当です。

2018年1月9日火曜日

明日は舞踏会 (中公文庫)

鹿島茂著
(カバー裏より抜粋) フロベール、バルザックなどの作品を題材に当時の女性たちの夢と現実を鮮やかに活写。

 女の子の憧れの世界ですよ!!舞踏会!!王子様!!その華やかな世界の舞台裏は?…寄宿舎で生涯を過ごす貴族女性は多かったのでは?どうなのでしょうね。既婚の貴族女性が多産とは思えませんし、死産・夭折も多かったでしょう。生き残って舞踏会に立った勝ち組女性の人生を時代背景とともに軽い感じで紹介されています。 
 主人公は二人。勝ち組街道まっしぐら、母親は社交界の女王であるルイーズ。その親友のルネは政略結婚で年寄りの旦那と地味ながら堅実な生活。その理由や貴族女性の現実。どうしても華やかなルイーズの生活が中心となります。華やかなルイーズの生活を手紙で読むルネ。私なら無理。 
 読み易くて軽く楽しめる内容です。フロベール、バルザックは読んだ事はありませんが(ちょっと苦手分野)、読んだ気にさせてくれます。

 そしてこの本の何よりの魅力は挿絵です。文庫ではなくて書籍で買ったほうが良い著作かだと思います。どうしても舞踏会、お姫様ドレスというとディズニーのシンデレラ、白雪目のイメージが強いのですが、実際は意外と靴がしっかりみえているタイプもあります。そして、ヘアスタイルの多様な事。ドレスより頭のほうがスゴい。挿絵だけでも十分楽しめると思います。お姫様好きな方はぜひ。

2018年1月5日金曜日

クレオパトラ (1986 日本)

手塚治虫・山本瑛一監督
(カバー裏より抜粋) 人間が宇宙に乗り出している21世紀、パサトリネ星の住人が「クレオパトラ計画」企んだいる事が判明。その計画の真相を探るため。3人の未来人の精神が、クレオパトラが生きていた紀元前50年のエジプトに転送された。

 クレオパトラのパロディアニメです。若い人にはキャラデザ等古くさく感じるかもしれません。シーザーが宇宙戦艦ヤマトのガミラスにみえる…。
 内容は基本クレオパトラの伝説というか一般に知られている内容に沿って改変しています。エロ要素が強い?と期待されている方、そういう描写はありますが大した事はありません。あとパカボンパパ、アッコちゃん、カムイもいたような…古い有名アニメキャラがチラホラ。
 アニメの始めで、黒人の扱いについての長い話がツラツラと流れます。こういうのいい加減鬱陶しい。5分くらい流れていたような。そしてようやくアニメです。基本クレオパトラは悲劇の主人公。乳母が黒幕です。クレオパトラを整形させて、色仕掛けができるように仕込んで…と。その間にパロ要素や架空の人物のドラマやらと楽しませてくれます。私は割と好きなのですが、ストーリーとしての盛り上がりが今一つなので好き嫌いが出ると思います。あとオチがなー。
 手塚治虫氏のファンなら買いかもしれません。

2018年1月1日月曜日

バイオハザードTHE FINAL (2016 アメリカ)

ポール・W・S・アンダーソン監督
(カバー裏より抜粋) 人工知能レッドクイーンとの戦いに破れ、瓦礫の下でひとり目を覚ましたアリス。そんな彼女の前に廃墟のコンピューターを通じてレッドクイーンが現れ、48時間以内に人類は滅びること、そしてそれを食い止める方法を告げる。

 ついにファイナル!!酷評もありますが、私は結構好きで観てきました。何よりも強いアリスが好き。アクションが好きです。お祭り映画として十分に楽しめました。
 今回はアクションが続いて観ていて楽しいです。もちろんストーリーに必要な情報はありますし、人間関係もありますが、結構抑えられてる印象でした。グロも昨今の作品よりは抑えめです。だからグロ耐性のない私でも楽しめました。酷評もありますし、お勧めできる映画というわけではありませんが、私には大好きな映画シリーズです。

 個人的バイオハザード1〜ファイナルまでぶっ通しやりたいなー。