2010年8月31日火曜日

西洋事物起原 全4巻 (岩波文庫)

ヨハン・ベックマン著 特許庁内技術史研究会訳
ヨーロッパを中心とした技術史。18世紀の著者から見た、科学、生活を支える技術の歴史を紐解く。

 とても興味深い内容なんだけれど…眠くなる。困った。興味のある項目はしっかり読んで、後は軽く読み跳ばすのがいいかも。取り上げられている内容は幅広い。技術史というと科学中心のようだけど、保険・為替・野菜・夜警他色々。どんなものにも歴史あり。私は毒・手品師・富くじあたりが面白かった。ちょっと著者の生国ドイツ贔屓を感じるところも。仕方ないかな。あくまでヨーロッパ、特にドイツの話が重点なので注意。アジアは中国が起原として出てくる程度。

2010年8月30日月曜日

トルストイ民話集 イワンのばか (岩波文庫)

トルストイ著 中村白葉訳
トルストイの短篇。民話をモチーフに改作している。

 うーん、説教臭い、宗教臭い。私はこの作品ダメです。「洗礼の子」は何が言いたいのか理解できない。洗礼父、性格悪くないか?って30年間も子供を親の元に帰さず…誘拐ですか?民話なんて矛盾とお約束の集まりなんだけど、トルストイが改作しているので突っ込みたくなる。「イワンのばか」で手にマメを作って働く事を奨励しているのに、「洗礼の子」は何やっているのだか…。「人はどれほどの土地がいるか」は良かった。

2010年8月29日日曜日

可愛い女・犬を連れた奥さん (岩波文庫)

チェーホフ著 神西清訳
チェーホフの晩年の作品三篇。

 人間の愚かさ、でもそれが愛しい。「犬を連れた奥さん」よくある不倫なんだけど、もどかしい。このままズルズルとどうなるわけでなく続いていく二人が予想できる。周囲の人間を馬鹿にしているのだけれど、本人たちも哀れな…。「イオーヌッチ」主人公と猫ちゃんのすれ違い、寂しい物語なんだけれど、何だろう?この滑稽さは。「可愛い人」いるよね、このいう人、男女かぎらず。っていうか、怖い。
 ちょっと思ったこと。最後に訳者の人の解説…つまり神西清氏の功績等を別の人が述べているんだけど、必要?その世界では重要な人だったかもしれないけど、作品解説の何倍のページを取ってあるのって。文庫って一般人の読書の取っ掛かりとなる場合が多いのだから、作品解説に力を入れるべきでは?と思った。

2010年8月28日土曜日

死刑囚最後の日 (岩波文庫)

ユーゴー著 豊島与志雄訳
死刑囚の死ぬ瞬間までの苦悶を描く。

 で、この人何したの?たぶん著者は死刑囚の苦悶を描きたいのであって、犯罪はどうでもいいのかもしれないけど、その犯罪によって印象変わる。死刑が恐い、残されたものの事を思うなら殺人なんてしなければ良かった、もっとうまくやればよかったのに。人為的に命を奪う死刑制度というけど、この死刑囚も人為的に人の命を奪ったんだよね。殺された人を天命というなら、死刑も天命では?これを読んで思ったのが、秋葉原の大量殺人の犯人の加藤って人の弁論(でいいのかな) 。自分が可哀相で仕方ないといったふうな印象を持ったのだけど、それとこの作品は重なった。
 別に死刑賛成というわけでもない、教育等の必要もあるだろうし、見世物なんてとんでもない。でも、運命を変えられる被害者とその家族は置いといて、大切なのは常に犯罪者ですね、と。ようは片一方のみを描く、こういう作品には腹が立つということです。

2010年8月26日木曜日

今日の積ん読

世事見聞録 武陽隠士 岩波文庫
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー ハヤカワ文庫
アイ・アム・レジェンド リチャード・マシスン ハヤカワ文庫

 「世事見聞録」は岩波文庫の復刊なのだが、何となく面白そうと思い、ポチ。「そして誰もいなくなった」DVD観たら欲しくなった。映画の方は面白いと言えば面白いけど、何となく緊張感がない印象を持った。さて小説は?「アイ アム レジェンド」何でタイトル変えてしまうのかね?まあ、ウィル・スミスだっけ?の主演の映画に便乗して売ろうという気持ちは理解できるけど。小説は面白いようなので買ってみた。今身内が入院中なので、付き添いついでに読もう。でも、意外と付き添いは読めないんだ、これが。

 現在の積ん読 本:186冊 DVD:80枚

 自炊計画進行中。30冊すんだ。たぶんペース激遅。裁断した後、ページがきちんと切れているかチェック。スキャンしてからページが飛んでないか、汚いページがないかチェック。30分で一冊終了ペース。まあボチボチ行こうと。本棚が空いていくのは嬉しいな。

カルメン (岩波文庫)

メリメ著 杉捷夫訳
歌劇で有名なカルメンの原作。

 自由奔放な悪魔カルメンを愛したために運命を狂わせるホセ。私は人形劇で観た事があるだけで、本格的な歌劇は観た事はない。ホセがたまたま知り合った学者に、カルメンとの出会いからを物語るという形になっていたとは知らなかった。カルメンはどうしようもない悪女なんだけど見事すぎて、ホセが情けなさ過ぎて…。でも人間が堕ちていく時というのは、こういう風に少しずつズブズブと自分でコントロールできないままいってしまうんだろう。意外と淡々とした哀しい物語だった。

2010年8月24日火曜日

遊女の対話 (岩波文庫)

ルーキアーノス著 高津春繁訳
今も昔も変わらない人間喜劇。娼婦、オカルト、占い、預言者、哲学者たちを、そして振り回される大衆を笑う。

  著者はローマ時代の人で、その頃の話でいいのかな。表題作「遊女の対話」では遊女を中心として、客、恋人、同僚と悩みや恋の駆け引き等を会話で進めている。内容は本当に今も普通によくある事。こうやって客観的に考えると本当にくだらない事なんだけど、当人はヒロイン状態になっていたりして大変だ。「嘘好き、または懐疑者」オカルトの世界です。真面目に信じていたのか、こういう荒唐無稽を。時代といえば時代だし、現代もここまででなくても周りから見ると馬鹿げてたことを信じている人いるし。私はオカルトも占いも遊びとしては大好きだけど、信じてはいません。昔は風水とか嵌った事あったけど、今から見ると本当に馬鹿だったと思う。「偽預言者アレクサンドロス」麻原彰晃を思い出した。アレクサンドロスは実在の人物で、麻原より上手に生き抜いた。今もよく似た人たち一杯いるよね。追随者も一杯いるよね。人間の精神面って進化してないような気がしてきた。「ペレグリーノスの昇天」ギリシャ人の名誉欲について解説で述べているけど、どっちかというと引くに引けなくなって、というような気が。現代だと一人で死んでいくのではなくて、集団自殺になってしまうんだろうな。
 何というか、今も昔も人間のやっていることは本当に変わりません。

2010年8月21日土曜日

イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)

和辻哲郎著
著者のイタリア美術紀行。

 古寺巡礼しいう題名だが、美術品…絵画、彫刻を中心に考察されている。写真が多く掲載されているのが嬉しい。その美術品のどこを素晴らしいと思うのかが、抽象的すぎず、素人にも分かり易く述べられている。また、宿の様子、汽車の窓辺からの風景を日本と比較して表現してある。真っすぐ伸びた松の木の話等興味深い。私の頭に浮かぶ松の木って幹が曲がったイメージが強い。ヨーロッパの松の木か…。同じ種類の木でも日本とはまったく違う風景を作り出しているのだろうな。イタリアの旅のお供に、また空想の旅のお供にどうぞ。

2010年8月20日金曜日

世界十大小説 上・下巻

W.S.モーム著 西川正身訳
モームが選んだ小説十篇の、その著者の生涯と人物像、それをふまえて作品解説を行っている。有名どころが選ばれている。作品は読んだことがなくても、大概著者の名前なり題名は知っているだろう。

 うわー、何という偏った人物ばかり。今なら精神科医に「○○性人格障害」とか言われそうな人たち。天才や長く作品を残す人はこういう傾向があるのかな。自己顕示欲の固まりだ。どの著者も人物像がもの凄くて、各著者の伝記が面白い。著者の性格そのまま作品も突っ走っていたり、ディケンズのように家庭が破綻している状態で「クリスマスキャロル」書いたり (これでこそプロなんだろうけど) 、トルストイは本人も周囲も一種の宗教団体…。
 実はモームの作品は今イチ好きになれないのだけど、この作品は面白かった。面白いのはいいのだが、取り上げられている作品はモームの解説だけでお腹いっぱいになって、本編読みたい気が起こらない…。モームは読者が読んでいることを前提にして書いているから仕方ないか。取り上げられている作品は「トム・ジョーンズ」「高慢と偏見」「赤と黒」「ゴリオ爺さん」「デイヴィッド・コバーフィールド」「ボヴァリー夫人」「モウビー・ディック」「嵐が丘「カラマーゾフの兄弟」「戦争と平和」。これらの作品もこの著作もどちらもこれから読む人は、先に各作品を読んだ方がいいと思う。

2010年8月18日水曜日

不幸なる芸術 笑の本願 (岩波文庫)

柳田国男著
「笑い」「ウソ」をその語源から探っていく。それとともに、それらの人生に置ける意味を問いていく。

 「笑い」はあまりに身近すぎて、深く考えたことがなかった。読んで笑うことを考えてしまった。笑うということは笑う対象がある。大概がその相手や物言に対する嘲笑だよね。テレビのお笑い番組。ボケ役の言動、行動を笑っているんだよね。もちろんタレントの人はそれを糊口としているのだけど、それを現実に持ち込んで周囲を笑う。p123「女の咲顔」の一節「笑われるものの不幸を予期している」。笑うなら遠い存在である政府とかメディア、タレント、企業とかにしときましょう。あーこの著作は「笑い」の語源や本質を突き詰めようとする内容で、啓発本とは全然違いますのでご注意を。「女の咲顔」での「咲顔」えがおと読むのだが、良い漢字でと思う。昔はこの漢字が使われていたそうだ。
 「不幸なる芸術」のパートは「ウソ」「バカ」についての話。「ウソのようなウソ」はついてもよすが「誠のようなウソはいけない」と徳川家康が言ったそうだ。うーん、良い言葉とは思うけど、家康も…ではないのか?ここでも、語源や歴史から考察がされている。
 「笑い」「ウソ」は一般人にも身近なので考えることも多い。柳田国男氏の著作の中では素人にもとっつき易い内容なので機会があったら御一読を。

2010年8月16日月曜日

ScanSnapがやって来た! その4

 で、デスクトップでの表示は、こんな感じです。もう一段階虫眼鏡+すると見やすくなるけど、私のMacBook小さいから…カーソル動かしながら読むのはちょっと。私としては、保存用だし満足です。ScanSnap気に入りました。コンパクトで机の脇に置けるのもいい。ちょっとしたスキャンならこれでOK。


  自炊するのは500冊位…かな。何千冊という人がゴロゴロしている世界では少ないですが、それでも場所はとるから…。全てを自炊するつもりはなくて、何度も読み返したいお気に入りは本のまま、また絵本等本の形に拘ったものもそのままですね。お気に入りの本はもう一冊買って、本で読む用と自炊保存用にしたいのですが。
 で、まだ購入する気はないけど、キンドルの詳細を知りたくてアマゾンのサイトへ。…キンドルってjpでは買えないのですか…そうですか。支払いのトラブル等は英語ですか…本体の故障の問い合わせも英語ですか…。敷居高すぎ。こういう敷居の高さの隙をついて、日本のメーカーに頑張って欲しいのだが。iPadは長時間の読書には…だし、e-ink等目に優しい組頑張ってくれ。
 今の電子書籍ブームで一番得しているのって、富士通とPLUSだったりして( PULSは裁断機で自炊派から注目されている )。電子書籍の出版は値段等でいまいち、私の興味のある分野がないので期待してない。私は、とりあえずiPadなりキンドルなり表示する媒体は出ているしこれからも増えそうだから、手持ちの本自炊してもいいかな、という気になった。そういう人多いのでは?表示媒体は後になる程高機能、低価格になってくるだろうし、低機能の廉価版も期待できる。いつの日か買うとして、とりあえずPDFなりzipにしておこうという人が買うのはスキャナと裁断機。…富士通の株、買い?

ScanSnapがやって来た! その3

 端が汚いので、カッターで裁断。裁断機を購入するのがいいのかもしれないけど、物はあまり増やしたくないし…。カッターの交換はこまめに。


 





このようになりました。







いよいよスキャンです。設定はグーグル先生で検索して、自分なりに調整するといいと思います。時々、汚くなったり、変な横線が入るページがあったので注意。
読み込みは速い。その後の処理でちょっと時間がかかりますが、問題ないレベルです。印字が極端に薄いものは苦しいかも。フラットのスキャナと上手に併用しましょう。
 読み込みでそのままPDFにしました。アドビのアクロバットが付属していますので、変なページはスキャンし直して置換することができます。一度にスキャンできるのは50枚なので、アクロバットでつなぐ事もできます。もちろんjpg取り込みもOK。
 私はかなり不器用ですし要領も悪いです。カッターや裁断機を使う人は、アイロンは用いずそのままズバッと本の解体に入るようですが、私はそれやると間違いなく本を破いて破損するのでやってません。おとなしく火傷増やします。解体の写真を掲載されているサイト、YouTubeもあるので、いろいろ巡られるといいと思います。

ScanSnapがやって来た! その2




 剥がれました。アイロンが高温すぎたり、長く当てすぎて糊が溶けすぎたりすると、糸を引いたりして↓になるので注意。








 糊がページの中まで…。










 気を取り直して、キッチンペーパーを背表紙にあててアイロンします。糊をキッチンペーパーに吸い取らせ、また柔らかくなった余分な糊をカッターで取り除きます。










こんな感じ…。あまり…いえかなり不器用なので、こんなものです。

ScanSnapがやって来た! その1

 ScanSnapがやって来た!13日アマゾン注文、次の日到着。お盆で渋滞時で…この状況で速い!嬉しい!で、早速自炊開始。グーグル先生で自炊サイト巡り、大体のやり方をチェック。家電量販店の店頭で見た時、WEBと違うと思ったのは、Win版とMac版は外部のデザインが違うためでした。手持ちのMacBookも白でお似合いです。

   まず始めの犠牲者…として「コンタクト」ハードSF、とても良い作品です。








 クッキングペーパーで背表紙を包み、アイロンに当てて背表紙の糊を溶かします。火傷に注意。私はもちろん火傷しました。手の向きが変なのは、右手でカメラを持っているためです。

2010年8月14日土曜日

ピンクパンサーX (1982 アメリカ)

監督 ブレイク・エドワーズ
ピーター・セラーズの追悼映画。ピンクパンサーがまた盗まれた。クルーゾー警部は捜査を開始するが、彼の乗った飛行機が行方不明になる…。後半はクルーゾー警部の生い立ちをレポーターが取材するという形になっている。

 前半はフィルムをつなぎ合わせて、行方不明になるまでのストーリー。ボケの応酬が続いて食傷気味になる。あー、でもドレフュスが面白いからいいか。クルーゾーが行方不明になってからは、レポーターが主役。過去の出演者も登場するのだが、ケイトー、老けたな…。チャールズ卿も…。エルキュール刑事は存在忘れてた。ストーリーは大して盛り上がらない。あくまでファンのための追悼映画。こんなシーンあったな…とか懐かしみながら観るといいかも。
 始めに「...The one and only Inspector Clouseau.」とか出るんだけど、スティーヴ・マーティン版が公開されたな…。いや、そっちも好きなんだけど。

2010年8月13日金曜日

今日の積ん読

読書案内 W.S.モーム 岩波文庫

「世界十大小説」が面白かったので、「読書案内」を買ってみた。最近積ん読用本棚が空いてきて嬉しい。不必要に増やさないよう注意しよう。

現在の積ん読 本:191冊 DVD:80枚

 さすが盆休み、人が多い。私もその人出の一人なんだけど。近所のセブンイレブンは国道沿いにあるんだが、大変な事になっていた。田舎なので大型トラックも駐車、方向転換等できるよう駐車場が広いんだけど、それを普通車が埋め尽くしていた。みんなどこ遊びに行くんだ?
 で、ついに本の自炊を決意した。既読の本で、読み返すか微妙だけど置いておきたい本を何とかしたい。いい加減ブックオフを富ませるは止めよう。とりあえず雑誌で試してみる。裁断器は買わず、アイロンとカッターで挑戦。これが一番の難関のような気がする。スキャナは薄い雑誌なのでフラットで。文庫などの自炊はフラットのスキャナではやってられないので、富士通のScanSnapを購入予定。大型家電店で見てきたけど、見た目が富士通のHPの写真と違うような?どちらにしてもマック版Acrobat付が欲しいので、ネット通販利用するけど。地方にマック版が売っているわけがない。で、保存用の外付けHDD買う羽目になったりして…。大量の本が占めてる場所を考えれば外付けHDDの出費くらい…。

2010年8月12日木曜日

ピンクパンサー4 (1978 イギリス)

監督 ブレイク・エドワーズ 20世紀フォックス
麻薬組織が信用を取り戻すため、クルーゾー警部を暗殺…したと思ったら人違い。クルーゾー警部死亡のニュースに麻薬組織大喜び、ドレフュス復活、葬式まで執り行われる。その隙をつきクルーゾーは香港の麻薬取引の現場に乗り込む。

 ピンクパンサーのシリーズは新作の毎に評判が下がってる?私は過去4作よりこれが好きだ。ドレフュスが大好き、もっともっとクルーゾーに絡んでほしかった。ケイトーもボケぶりがいい!内容としては、王道を行くストーリーで捻りも何もないけど、というかこれまでの作品の中で一番内容が無いけど、ギャグとボケのアクションを楽しむ映画だし、細かいことはいいっこなし。娯楽映画です。頭空っぽにして楽しんで下さい。

2010年8月9日月曜日

鳥 デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

ダフネ・デュ・モーリア著 務台夏子訳
表題作「鳥」他7篇。

 映画の「鳥」を観て原作を読んでみたくなって購入。どちらも鳥の恐怖を描いているのだけれど、こちらは救いがない。小さな地域の、特に個人宅を描いているんだけれど、周囲の描写からだんだんと追いつめられていく様が分かる。逆に主人公はやたらと精力的になっていくのが怖い。一応原因らしい描写はあるけど、原因は重要ではなく、追いつめられる過程が面白いのだ。で、やはり「アメリカが」…大変だなー、世界の警察は。
 他の作品はゾゾッと云う風ではなくて、奇妙な怖さを持っている。「番」やられた。「林檎の木」日本の怪談にもこういう感じの作品なかったっけ。「裂けた時間」もだけど、追いつめられていく様が面白い。「写真家」は主人公が間抜けすぎて…。「動機」自殺の動機を解明していくのだけど、意外性がいい。「モンテ・ヴェリタ」ちょっと私の趣味ではなかった。「恋人」主人公のこれから先に興味を持たせてくれる。歯車を壊した感じ。
 何というか色々な形の恐怖…とまではいかないけど怖さが詰め込まれています。

2010年8月8日日曜日

オデュッセウスの世界 (岩波文庫)

M.I.フィンリー著 下田立行訳
イギリスの歴史家フィンリーが「イリアス」「オデュッセイア」を読み解き、古代ギリシャ社会について考察する。

 以前、昔話は実はこうだったとか、そこから人々の生活など社会を読み解くみたいなのが流行らなかったかな?これは真面目な著作なのだけど、古代の社会を覗き見るという意味で素人でも十分楽しめる。訳者の解説によると、抒情詩などから社会を考察するという方法は、著者が生きている時代には新しい見方だったよう。
 p136見てびっくり。ほぼ裸で戦っている。兜だけ被って胸当てのようなものだけでって…。頭隠して尻隠さずという言葉が浮かんだ。実際はどうだったのか分からないけど、考えてみたら 「イリアス」「オデュッセイア」等で語られるオリンポス宗教神話は破天荒だよね。この著作ではオデュッセウスの冒険とトロイ戦争を中心に王、貴族などの社会観を述べている。成る程、こういう見方できるよね、でも実際のオデュッセウスやアキレウスはどんなだったんだろう、と自分なりに考えてもみる。庶民はほとんど蚊帳の外です。
 この著作が正しい分けではないし、時代が進むにつれ発掘などで新しい情報が得られるので、この著作の内容も古くなっている部分があるけれど、真面目に古代ギリシャが知りたいという人にはお勧め。

2010年8月7日土曜日

10の世界の物語 (ハヤカワ文庫)

アーサー・C・クラーク著 中桐雅夫訳
クラークの短編集。15篇が収録されている。奇妙な印象の作品が多い。SFなんだけど、人間に重点が置かれている。

 私の知識不足で理解できない作品があるのが悲しい。「思いおこすバビロン」オチはどういうことだろう。お気に入りは「幽霊宇宙服」ネコ可愛い。子猫と一緒に宇宙服着て探検したい。っていうか、妊娠チェックせずに宇宙へ連れてきたの?「軽い日射病」実際やったらどうなるんだろ?サッカーファンとかやりそうじゃない?偏見かな?審判の人はくれぐれも注意。ソロバン、クラークは知っていたのか。日本人でも知らない人、増えていそうだけど。
 作品全体に地味な印象がある。派手なSF求める人は避けた方が良さそう。

2010年8月6日金曜日

古寺巡礼 (岩波文庫)

和辻哲郎著
著者が30代の頃の著作。その頃巡った奈良近辺の寺院に収められている仏像・仏画について考察している。宗教ではなく、芸術の視点から観照されている。

 「古寺巡礼」という題名だが、寺そのものよりも中に収められている仏像・仏具について考察されている。宗教の側面からではなく、芸術として観照し、そこから作品の由来、背景にある歴史を著者の感性により述べている。古い時代は面白そうだ。ギリシャ→インド→中国→朝鮮→日本と伝わっていくうちにそれぞれの国に咀嚼され、それぞれの文化を育む。仏像にもロマンがあるんだ。それぞれの仏像の特徴がよく表現されていて、私は仏像とかサッパリだけど、こういうところを観るのだとか参考になった。ただ、それぞれの写真が欲しかったかな。写真は掲載されているけれど、全てではない。
 仏像とは関係なく不思議だったのは、百年の間に体の線が出る衣服から十二単に変化したこと。考えてみれば、江戸末期・明治から昭和まで百年で着物から洋服に転換したのだから不思議ではないのかな。

2010年8月5日木曜日

幼年期の終わり (ハヤカワ文庫)

アーサー・C・クラーク著 福島正実訳
人類が宇宙へ進出しようとした日、巨大な宇宙船団が突如現れた。それは平和な管理社会の始まりだった。

 はっきり言って凄く後味の悪い作品。気分が重くなるので、精神的に不安定な方は読まないほうがいい。後味が悪いというのは作品の質が低いという意味ではない。素晴らしい作品と思う。でも鬱になる。地球という動物園に入れられた人類。他から管理された平和、囲まれた娯楽。不都合な科学、宗教の押さえ込み。ニート天国、ネットし放題…いいかもとちょっと思ってしまった。最後はオーバーマインドの餌…一部になるっていうけど、どう考えても餌だよ。至高の存在のように描かれているけど、宇宙の独裁者では?この作品、オーバーロードが主人公っぽくもある。石女の種族、ただオーバーマインドに使われるだけ、一部にさえなれない。この先彼らはオーバーマインドに近づくことができるのか?
 この作品は光文社文庫にもなっているが、始まりが違う。個人的にはハヤカワ文庫版のほうが好きかな。

2010年8月4日水曜日

ジュラシック・パーク (1993 アメリカ)

監督 スティーブン・スピルバーグ ユニバーサル
クローン技術によって甦らせた恐竜の島「ジュラシックパーク」。見学ツアーに参加した一行が内部の抗争によるトラブルで、暴走した恐竜に襲われる。

 CGが本格的に使われだしたのはこの頃かな。初めて観たときは、恐竜の迫力に驚いた。今観ても十分な出来と思う…マニアの人は別だろうけど。恐竜のロマン。実際こんな島があったら…行きたい…かな?役どころもオーソドックスに割り振られていて、安心して楽しめる。つまり、いかにもなヤラレ役、鬱陶しい子供。クローン批判とかもあるのかな?ちょっと引かかるけど、気にしなければ問題無し。途中で出てくるクローン再生の説明のアニメーションはよくできていると思った。オチはここまで追いつめられて、これかよ、とちょっと思った。
 ストーリー自体はよくあるパターンでいろいろ突っ込みどころは多いけど、(肉食恐竜を飼っている状態でいざというときの対応人員少なすぎじゃないか?とかT-REXの食料少なくね?とか) 映画の分岐点の一つといってよい作品。

2010年8月3日火曜日

ふしぎの国のアリス (1951 アメリカ)

監督 クライド・ジェロミニ他 ディズニー
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を原作にしたアニメーション。

 500円DVDはさすがに画質が…。私は気にしないけど、気にする人は避けたほうがいい。アリスは制作者によってバリエーションが豊富で楽しい。これはディズニーらしく夢一杯の世界。カラフルで万人に親しまれるキャラクター。毒がないのでお子様と一緒にどうぞ。現在のアニメに慣れている人には退屈かもしれない。

2010年8月2日月曜日

トリフィド時代 (創元SF文庫)

ジョン・ウィンダム著 井上勇訳
緑の大流星群を観た人たち全員が、翌日視力を失った。混乱が世界を覆う、そして第二の脅威「トリフィド」が人々を襲い始めた。

 日本だとヒッキーの視力は助かるか?!でも、家から出ずにトリフィドに囲まれて終了。実際起こったらどうなるのだろう。作品に描かれる以上の状況となるか。北斗の拳の世界?もっと火事が起こりそうとは思うけど。トリフィドがイメージしきれない。映画版観たけど、あまり覚えていないんだ。読んでる途中は、サガフロンティアというゲームに出てきたサボテンモンスターが鞭もっている姿を思い浮かべていた。主人公はこういう作品に出てきそうなタイプ。ヒロインが意外に逞しくて好感が持てた。登場人物それぞれの考え方も納得できる。「救援が…アメリカが…」私もこういう事態が起こったらそう思うだろう。序盤はちょっとかな…と思ったけど、徐々に引き込まれていった。SFの古典として推されるに相応しい作品。
 視力を失った原因、トリフィドの正体などは作品の中で解明されていない。序盤に衛星兵器に触れているし、主人公の口から出ているから、まあそういうことだろう。彗星だとイギリスの裏側は無事じゃね?とか思うし。兵器としてもちょっと疑問あるけど。とりあえず、流星群等のイベントは絶対観ないと心に誓った。

 筑摩書房でちくま文庫の復刊リクエストが始まりました。読みたい本が絶版で涙している方は投票を。願!復刊「トイレの文化史」!!

2010年8月1日日曜日

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

ジェイムズ・P・ホーガン著 池 央耿訳
突如ガニメデに現れた宇宙船。そこから現れたのは、二千五百万年の旅を経たガニメアンたちであった。「星を継ぐもの」の続編。

 「星を継ぐもの」が面白かったので、続編を買ってしまった。期待した通り面白い。前作で推論とされていた部分が解明されている。ルナリアンについては謎を残したまま、これは次巻かな。前巻もそうだったのだけど、悪人がいない。臆病な人、懐疑的な人がぽつぽつオマケ程度にでてくるけど、悪人というわけではないし。どのような作品でもでてくるドロドロとした部分が描かれていない。異星人とのコンタクトとしては理想的な形。人間とガニメアンを比較しての批判等があるけど、強烈というわけではない。登場人物の行動よりも議論に重きが置かれていて、それが面白い。ゾラック、ちょっと万能過ぎ。こういうコンピュータはどうしても「2001年宇宙の旅」のHALと比較してしまう。最後、ダンチェッカーが前作同様おいしいところを持っていきました。