2015年12月30日水曜日

天使と宇宙船 (創元SF文庫)

フレドリック・ブラウン著 小西宏訳
(カバー裏より抜粋) 鬼才ブラウンの、SFとファンタジイの名品16編をよりすぐった傑作集。

 ショートショートと短篇が収録されています。軽く楽しめる作品集です。お気に入りは「悪魔と坊や」。オチが良かったです。「不死鳥への手紙」アメリカの死んでも生き返る検死官(?) のドラマ思い出しました。「挨拶」ブラックジョークっぽいですね。差し込まれているイラストが、懐かしい感じがします。初版が1965年ですからなるほどと思いました。私の生まれた年だww 考えてみると、ここまで再版されているのは時代を超えて読み易い作品だということでしょう。でも、著者の作品は絶版も多くて残念です。

2015年12月25日金曜日

水鏡奇譚 (ちくま文庫)

近藤ようこ著
(カバー裏より抜粋) 鏡子の家を探す旅の途中、護法童子、白比丘尼、外道丸…などによるさまざまな怪しい事件に出会う。そして二人は…。

 さまざまな怪異のなかの人間模様。絵柄がサラリとしているので、嫌らしい面も不快にならずに読めます。ワタルは決して正義の味方というわけではないけど、でも私も彼の立場ならこうしただろうと共感が湧きます。そして鏡子。無垢な少女。ぼんやりしているようで、決して守られているばかりではない。二人の旅が終わるとき…。気持ちのいい終わり方で良かった。

汝、コンピューターの夢 (創元SF文庫)

ジョン・ヴァーリイ著 大野万紀訳
(カバー裏より抜粋)性別変更や身体改造、記憶の移植とコピー、惑星環境の改変すら自由な未来を描く天才作家の代表シリーズ。

 未来で何ができるかという下敷きがしっかりしている(全短篇共通している) ので世界に入り易いです。訳者の方が巧いのかな?とても読み易い。小説だと理解しながらも考えてしまいました。性別を変えることや夫婦関係、親子関係、政治宗教観などはそういう世界だで理解できるのですが、クローンへの記憶の移植は?です。クローンに移植しても別個の個体だからクローン元の人間ではないし、意味あるの??生き返ったと言えるのか??「カンザスの幽霊」で答えはあったような。今ひとつでした。 といっても作品全て面白かったです。これはシリーズになるのかしら。続けて読んでいこうと思います。

2015年12月22日火曜日

招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)

クリスチアナ・ブランド著 深町眞理子訳
(カバー裏より抜粋) 英国史上、ひときわ異彩を放つ重鎮ブランド。本書には、その独特の調理法にもとづく16の逸品を収めた。

 うわー…すごい後味の悪い作品ばかり…。ちょっと参った。私の好みとはかけ離れてた。今まで読んだことのない作者の作品をネットで注文しているのだから仕方ないのだけど。作品のレベルは高いのは間違いない。高いから後味の悪さも高い…。後味の悪さは「婚姻飛翔」「もう山査子摘みもおしまい」「この家に祝福あれ」最高!!もう、マジでうわーな気分にしてくれた。「ジェミニー・クリケット事件」は最後のオチが面白かった。これは好き。「バルコニーからの眺め」もオカルトというかメンヘルちゃん系で面白い。「スコットランドの姪」「目撃」も良作。「囁き」の自己中女子がザマーでよい。あれ、かなり気に入ってる作品もある。とにかくハッピーエンド好きには絶対にお勧めできない作品集。

2015年12月18日金曜日

街角の図書館 (創元推理文庫)

(カバー裏より抜粋) 本書には翻訳アンソロジーの名手が精選した作品ー異色作家の埋もれた名作、スタインベックら大家によるユーモア譚、SF界の鬼才の本邦初訳作など18篇を収めた。

 タイトルがいいですね。作品セレクトも良かった。不条理の怖さを味合わせてくれる作品が主だけど、微笑ましい作品もある。…微笑ましいのは「お告げ」くらいだったww不条理好きな方にはお勧め。個人的に(良い意味で)胸糞悪くさせてくれる作品もあった。「ディケンズを愛した男」とか(良い意味で)最悪。気分が悪くなった。人間の怖さを味合わせてくれた。他も良作品ばかりで気に入った。

手斧が首を切りにきた (創元推理文庫)

フレドリック・ブラウン著 青田勝訳
(カバー裏より抜粋) 1940年代後期のアメリカ地方都市を舞台に、ブラウンが趣向を凝らして描く初期長編異色作。

 「著者は小説の合間に、ラジオ、映画、スポーツ放送、ビデオ、講演等の台本の形式を挟みストーリーを展開させ…」裏表紙に結果書くなよww 「形式を挟み」で読者を軽い混乱に陥らせてくれる。良くも悪くもなのかもしれないけどストーリーがぶつ切りになっているような気がする。元々短篇を好む私のようなタイプには読み易い。登場人物が少ないのも○。で、何が現実だったのか??が私の疑問。彼から観た現実は、エリーにとっての現実だったのか?? 理由はラスト。伯父さんの証言は彼の現実と食い違っている。真実は?父親の死も実際はどうだったのか??ま、何が真実なのかを追求するタイプの作品ではなくて、その混乱を楽しむ作品なのだろう。

2015年10月30日金曜日

未来世界から来た男 (創元SF文庫)

フレドリック・ブラウン著 小西宏訳
(カバー裏より抜粋) SFのショートショートの名手ブラウンの傑作集。趣向を凝らした戦慄と幻想の世界があなたの目の前に展開します!

 本の後ろにその出版社の本が紹介されているが、それを見て購入。ネットで一応チェックしたら、星新一との比較がされていた。読み出して納得。星新一系の作品が好きな人にはお勧めかな。どうだろう。どちらもSF系ショートショートなのだけど、味わいにかなり差が有り。落ちに面白さを感じられない作品もあり。個人的にお勧めは「人形」。ちょっとゾクッとした。

2015年10月16日金曜日

スは宇宙のス (創元SF文庫)

レイ・ブラッドベリ著 一ノ瀬直二
 (カバー裏より抜粋) 「ヴェルヌがぼくの父親、ヴェルズが懸命なる伯父さん、ポオは蝙蝠の翼を持った従兄弟でシェリー夫人は僕の母親だったこともある。

 「火の炎」が良かった。映画にもできそうなストーリー。墓に眠る遺体が焼却処分されていく中、一つの遺体が甦った…。仲間を増やすために殺人を続け、焼却場を破壊していくのが面白い。怖いと思ったのは殺人する主人公ではなく、まだ意識を持つ主人公を焼却処分するその時代の人間。何事もなかったことにしてしまったのだから。「あの男」こういう奴いるいるという典型の船長。むかつく。
 「ウは宇宙船のウ」とこの短編集、他はあまり読んでいないけど、著者の危惧する未来像がはっきり示されている。まー人間が感情を去勢されることはないというか、無理だと思うけど。

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

レイ・ブラッドベリ著 大西 尹明
 (カバー裏より抜粋) 「太陽の金色のりんご」「霧と炎」「霧笛」など、ブラッドベリ自身が16編の自選した珠玉の短編集!

 「タイムマシン」が良かった。まさにタイムマシン。こういうほのぼの系は清涼剤になる。何となく重い話が多いので、余計そう感じるのかも。表題作は未来を夢見る少年の物語なのだけど、残される人々の影が…。「長雨」SFとして好みだけれど、これって太陽ドームが見つかって助かったのか?著者が何を語りたかったのか、戸惑う作品が多いように感じた。自分の感じたように受け取れば良いのだろうけど。

2015年10月7日水曜日

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

レイ・ブラッドベリ著 宇野利泰訳
 (カバー裏より抜粋) 叙情詩人ブラッドベリの名声を確立した処女短編集『闇のカーニバル』全編に、新たに五編の新作を加えた作品集。

 ちょっとオカルトっぽい。メンタルヘルスに問題を持つ登場人物ばかりで…ちょっと気持ち悪くなる部分もあった。例えば「こびと」。主人公はちょっと自分の正義が強いタイプ?と思っていたら、ちょっとではなかったww その友達はこびとの男を笑うしか能のないDQN。なんかなー。「熱気のうちで」主人公達…笑うしかない。他の作品も偏った人達のオンパレード。
 好きな作品は「ダッドリー・ストーンの不思議な死」。これは別の短編集にも掲載されていた。気持ちよく読める作品。

 私はSFのブラッドベリが好きです。

2015年9月15日火曜日

小鼠 ニューヨークを侵略 (創元推理文庫)

L・ウイバーリ著 清水政二訳
 (カバー裏より抜粋) かの大国への宣戦布告!折もおり、アメリカでは旧効く兵器が完成?大国支配の国際政治を笑い飛ばす、痛快無比のユーモア冒険小説!

 ジョーク集で読んだことがある。アメリカに宣戦布告してすぐ降伏して援助してもらうみたいな話。この作品は上手に肉付けしているなーと。現代のファンタジーと言ってもいいかも。美人の大公女、彼女を慕う才能豊かな青年、究極兵器にどこかズレている大国の上層部。いや、市民もズレていた。ストーリー自体は単純で、現実こんなふうに進むわけないでしょなのだけど、とにかく気持ちよく読み通せる。大円団で終わるところもとても好きだ。元気になれる一冊。

2015年7月16日木曜日

ユダヤ人と経済生活 (講談社学芸文庫)

ヴェルナー・ゾンバルト著 金森誠也訳
(カバー裏より抜粋)近代資本主義の発展を促したのは、プロテスタンティズムではなくユダヤ教の倫理だったー。

  私のように、日本に、自分の狭い生活圏に籠っている人間にとって、ユダヤ人とは?と問われると、アウシュビッツとかパレスチナとかモサド等々ニュースの世界の存在です。故に面白く読むことができました。とにかく行動力がある民族ですよね。色々な国に存在し、そこから追い出されると、「次行こ、次」みたいに旅に出る。なによりもその民族同士のネットワークが途切れないのが凄い。現代のような通信機器がない時代から。ある意味寄生かな…とも。読みながら「ヴェニスの商人」って実は元ネタのような事実があるのでは?などとも思えました。羨ましいですね。行動力と理数系に強そうなところが本当に。
 私は軽く楽しんで読みましたが、実際はお固い内容です。あと抄訳ですよ。

2015年7月6日月曜日

現代という時代の気質 (ちくま学芸文庫)

エリック・ホッファー著 柄谷行人訳
(カバー裏より抜粋) 大学の教壇に立ちながらも若き日から従事してきた湾岸労働を続け、「沖仲士の哲学者」と呼ばれたホッファーによる、ちに足の着いた社会批評集。

 この薄さで1000円(税別)…。本当に本が高くなりました。ですが、中味が薄いということは決してありません。私でも楽しんで読めました。本屋で手に取った時は「黒人革命」という黒人の状況についての章に興味をもったからです。かなり古い時代に書かれた著作ですが、現代も状況は何も変わっていないのではないの?と考えさせられました。納得できる内容です。もっとも著者や訳者が意図している理解をしているかと言われたら「違うかも」ですけど。知識人についても中々面白く読めました。というか、TVには知識人(笑)がたくさん…。
 本当に薄い本ですが、内容は1000円の価値はあると思います。この本を読みながらTVの知識人をpgrしましょう。ってそういう著作ではないけど。

2015年7月3日金曜日

魔女と聖女 (ちくま学芸文庫)

池上俊一著
 (カバー裏より抜粋)中世から近世にかけて、西洋世界において魔女狩りの嵐が吹き荒れる。しかし、それと時を同じくして、その美徳と超自然的力によって聖女と崇められる女性たちも現れる。

 魔女と聖女から中世の女性の立場や生活を考察した一冊。まず魔女の考察には、気の毒の一言です。底辺だと火あぶりかよ…みたいな。次に聖女の考察は…。おいおい、聖女って「メンヘラちゃん」??抑圧されてヒステリー起こしているとしか…。この時代の女性の状況の生活、精神面での悲惨が理解できました。が、聖女ってこんな人ばっかりだったの??
 で、一般女性の宗教と生活。こういう歴史の積み重ねによって現代の西欧があるのか、と考えることしかり。でも、ちょっと行き過ぎてない??と疑問を持つことも多いのですが。どちらにしてもその国が背負う課題ですが。
 であとがきで出てきたトゥームレイダー。現代版「サロメ」「ユディット」的な部分あったっけ??一番最初の映画しか観ていませんが、そんな印象なかったなー。

2015年7月1日水曜日

ヴァルカンの鉄槌 (創元SF文庫)

フィリップ・K・ディック著 佐藤龍雄訳
 (カバー裏より抜粋) 20年以上続いた核戦争が終結したのち、人類は世界連邦政府を樹立し、重要事項の決定をコンピュータ〈ヴァルカン3号〉に委ねた。

 コンピュータ〈ヴァルカン3号〉が今時の映画などのスマートなイメージではなく、無骨な作りのイメージがとてもいいです。そして文字通り鉄槌を振り回します。また、敵味方ともうさん臭くて素敵です。ただ、「癒しの道」と〈ヴァルカン3号〉が強くて、主人公のいた組織が弱すぎてwwとにかく〈ヴァルカン3号〉を楽しんで下さい。

2015年6月27日土曜日

旅するように読んだ本 (ちくま文庫)

宮田珠己著
 (カバー裏より抜粋) 旅と同じ目線で読書をする。本を読むのと同じ目線で旅をする。これが宮田スタイル。
 本屋さんで何気なく買った本ですが、うおー、本の趣味が近い!!元々あらすじなどの内容を取り出した批評本…みたいなものは好きなので、これは本の趣味が合っていますし、楽しく読めました。マニアックな本の独自な視点を、著者のまた独自な視点で読み解くといった感じでしょうか。学術系の本だって、自分なりに楽しく読めたらそれでいいんだよ、と言ってくれているよう。本屋さんでタイトルを見たことのある本などは「こういう内容だったのか…」と次に見かけたら買ってしまいそうです。ミチオ・カクさん、本も執筆されていたんだ。ヒストリーチャンネルなどで以前よく見かけたけど、うさん臭い人かと思っていました。ごめんなさい。ちゃんとした科学者だったんだ。

2015年6月23日火曜日

痕跡本の世界 (ちくま文庫)

古沢和宏著
 (カバー裏より抜粋) 古本の中には、元の持ち主によるメモ、付箋などが残っていたり、手紙や写真が挟まっているものがある。

 本屋でタイトルを見て手に取り、ちょっと読んでみて「あるあるある」と共感するところがあり買ってみました。私はたまに古本を購入しますが、そんなとき書き込みや意味不明なメモに出会うことがあります。古本を買われる方なら一度は経験されているのでは?私が一番印象に残っている痕跡は講談社学術文庫「西洋哲学史」に勉強したのであろう多数のラインとともになぜか「チ○○」の書き込み…。きっと前の持ち主は疲れていたのでしょう。そんな様々な痕跡から、著者が妄想を爆発させている本です。コンセプトはとても面白いです。でも、前半妄想が独りよがりというか今ひとつ面白みがない…。だけど第3章に入り俄然面白くなりました。本のカスタマイズとか全然考えも付かなかったし、正直やりたいとは思えないのですが、それを見る分にはとても面白い。その他様々なかたちが紹介されていました。考現学などが好きな方にお勧めします。

2015年6月14日日曜日

英国に就て (ちくま学芸文庫)

 吉田健一著
 (カバー裏より抜粋) なにも絵画や彫刻、音楽だけが文化なのではない。当たり前の日常にいちばん近い部分を発達させること。それこそが文化なのだ。

 イギリスについてのエッセイ…という表現は失礼かもしれない。ので随筆。著者は本当に英国が好きなのだな、と感じさせられました。私が好きなのは英国の冬の話のところ。当たり前だけど、四季というのは国によってこんなに違うものなのだと。遠い国に思いを馳せながら読みました。
 ただちょっと思ったのは、よく書き過ぎでは??英国人にも色々いるでしょうに。

2015年6月13日土曜日

柳宗悦 民藝紀行 (岩波書店)

 (カバーより抜粋) 美しい品物・良い工藝を求めて、日本各地・朝鮮・中国の民藝を訪ね歩いた柳宗悦の紀行文。

 私はかなりBBAですが、ここに掲載されている民藝品で知っているものは、現在も形だけ継承されているようなものだけです。色々なものが無くなってしまったんだな…しみじみと感じました。それを防ぐために著者は各地を旅してみえたのでしょう。その情熱には頭が下がります。

2015年6月12日金曜日

宇宙人ポール (2012アメリカ)

監督 グレッグ・モットーラ
 イギリスからアメコミイベントにやってきたグレアムとサイモン。キャンピングカーでドライブを楽しむ二人は、ひょんなことから宇宙人ポールと出会う。ポールを追う政府機関との追いかけっこが始まる。

 楽しー!!さすが、ショーン・オブ・ザ・デッドのコンビ。主人公二人はオタクだけど結構まとも。でも、その他のキャラがイカれてる。ポールは人間にかぶれてるし、ルースは神の僕だし、そのお父さんもどうかしているしで。敵も中々で、現場指揮を執るMIBっぽい人は結構まとも(ラストにどんでん返し有り) だけど、その部下は…。とにかく追いかけっこ。私でも分かるパロディ満載。ラストはポールは某未知との遭遇っぽく、命の恩人の女性を連れて母星に戻って行きますが、その前のラスボスの最後が…。wwwでした。とにかく楽しい映画を観たい人にお勧めします。

ソフィストとは誰か? (ちくま学芸文庫)

納富信留著
 (カバー裏より抜粋)古代ギリシアで、華々しい活躍をした一群の知識人「ソフィスト」。新たな思想と弁論り技術をもって市民を魅惑した彼らは、やがて詭弁を弄して人々を欺く知者という汚名を着せられる。

 p136で「私たちに突きつけられた問いは、哲学者としての生を生きるか、それとも、ソフィストとして生きるか、の選択である」…私はソフィストとして生きます。っていうか、真理の追求なんてしたくないしー、別に他人を追求したいとか貶めたいとか魅惑したいとか思わないけど、お金貰って適当に状況に合わせて働いてー、で十分です。
 それ以前にソクラテス像にもの凄い疑問を抱いてしまいました。どこまでが実際のソクラテスに近くて、どこからがプラトンの願望か。この著作を読んでいて、プラトン自身に疑問を感じました。ソクラテスを作り上げたのでは??と。
 で、哲学って何??著者も哲学で本書いてお金儲けているのだから「ソフィスト」ですよね。哲学者って存在するの??

2015年5月29日金曜日

ザップ・ガン (ハヤカワ文庫)

フィリップ・K・ディック著 大森望訳
 (カバー裏より抜粋) 西側陣営の兵器ファッション・デザイナーであるラーズ・パウダードライと、人民東側のリロ・トプチェフは、日々、超次元に意識を浮遊させ、独創的で戦慄すべき殺戮兵器を開発していた。

 始まりは良かった。トランスして武器を設計、一般人を騙して実は両陣営はそれなりに仲良し。いいよいいよ。でもそのあとが…。なんというか思いつきのつぎはぎというか…。伏線の回収がおざなりー。迷路のゲームで敵を撃退はいいけど、なんというか撤退しましたーで終わりだし。フェブスは本編と絡みがなさ過ぎだし。でも、そこはディック節。なぜか面白く読める。ラスト、迷路の標的がKACH??私がなにか読み落としているのか??

2015年5月23日土曜日

太陽の黄金の林檎 (ハヤカワ文庫)

レイ・ブラッドベリ著 小笠原豊樹訳
 (カバー裏より抜粋)  冷えきった地球を救うために太陽から"火"を持ち帰ろうとする宇宙船を描いた表題作「太陽の黄金の林檎」ー中略ー詩情にあふれる22篇を収録した短編集。

 「人殺し」が私の好み…というか、私も音があまり好きではないので、共感できます。昼休みも誰もいなければTVは切ります。「目に見えぬ少年」も面白く読めました。自分で自分を追いつめてしまって、途方に暮れる様子がよいです。「空飛ぶ機械」は賢い王様なんだろう…でも、終焉がみえているような気がします。全体にSFくささはありません。SF苦手な人でもOKです。「夜の出来事」など通常とは違う意味で考えさせられる作品が多いと思いました。

2015年5月18日月曜日

黒いカーニバル (ハヤカワ文庫)

レイ・ブラッドベリ著 伊藤典夫訳
 (カバー裏より抜粋) ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女作品集「黒いカーニバル」から精選した作品に〈ウィアード・テールズ〉などのパルプ雑誌に発表された作品を加えた初期傑作選。

 SFというよりはファンタジーです。だから難しいSFは分からない私にも楽しめました。「ほほえむ人々」…あー現代でも実際にありそうな話ー。「再会」哀しい。でも気持ちは痛い程分かる。「全額払い」読んでどうかしている、とは思うけれど、彼らの行動は理解できてしまう。他にも多く収録されています。 ブラッドベリファンはもとより幅広く楽しめる作品集です。

2015年5月15日金曜日

SFマガジン700【海外篇】(ハヤカワ文庫)

山岸真編
(カバー裏より抜粋)1959年の創刊から、つねにSF界を牽引してきた〈SFマガジン〉の創刊700号を記念する集大成的アンソロジー【海外編】。

 うーん、正直いうと好みの作品がありませんでした。唯一は「息吹」。主人公の設定と世界観が面白かったです。あと「小さき供物」。環境汚染の進んだ世界での妊娠をテーマにした作品…環境汚染がテーマなのかもしれません。この「小さき供物」の意味が…。「耳を澄まして」と「孤独」も良かったですね。あれ?結構好きな作品多いかも。

逆転世界 (創元SF文庫)

クリストファー・プリースト著 安田均訳
(カバー裏より抜粋) 〈地球市〉と呼ばれるその世界は、全長1500フィート、七層からなる要塞のごとき都市だった。ー中略ー月も太陽もいびつに歪んだ異常な光景だった。

 序盤・中盤とグイグイと読ませてくれます。主人公ヘルワードが外に出ることを許可されて、状況が少しずつ明らかになりつね世界の異常性が暴かれていきます。なぜ?という疑問のヒントは原住民という形ででてきますので、物足りなさを感じるかたも多いでしょう。でも、SF部分だけではなく読ませる力のある作品です。ヴィクトリアの存在は序盤中盤、終盤初めまでは効いていました。ただ…非常に残念なのが終盤…。エリザベスの存在。ネタばらしがこういう形というのは納得できません。ヘルワード自身に解いて呈示して欲しかったです。もっともヘルワードはエリザベスのネタばらしに納得していません。私もヘルワードの納得のしなさに、この小説内での事実はエリザベスの言う通りでいいの?という疑問を持っています。

2015年2月17日火曜日

怪獣総進撃 (1968)

本多猪四郎監督
 キラアク星人対地球人、キングギドラ対地球怪獣…なんだけどね。

 古き良き時代のSFとゴジラの合体みたいな。宇宙、地球どこでも行動可能なスーパーマシン。夢多き時代。でも宇宙服というか戦闘服のデザインはもう少しだけなんとかならなかったのか…普通の自衛隊の制服っぽいほうがいいと思うけど。始めに登場する「怪獣ランド」すぐ終了します。モスラまで飼われているのか?小美人はどうした??最後のほうのキングギドラ対地球怪獣達のシーン、マスゴミ…。なんか、イスラム国へ行きたがる人達を思い出したわ。おまけにちょっと多勢無勢だし、戦いというよりいじめになってるしで、ちょっと…。ゴジラの光線で一発でのほうがすっきりするのにね。

2015年2月15日日曜日

召使心得他四篇 (平凡社ライブラリー)

ジョナサン・スウィフト著 原田範行訳
(カバー裏より抜粋) 執事や女中のあるべき姿を説いた「召使心得」。『ガリヴァー旅行記』作者の面目躍如たる痛烈作品。

 うーん、実は期待していたほどには面白くなかったのです。理由は私の完全なる知識不足のためです。スウィフトが生きていた当時の状況に詳しくないので、この作品の面白さが理解できないのだと思います。当時の時代への批判や当てこすりでできていると言ってもいいでしょう。はい、私自身が原因です。

2015年2月13日金曜日

ゴジラ 三大怪獣 地球最大の決戦 (1964)


 宇宙超怪獣地球を大襲撃!ゴジラ・ラドン・モスラと世紀の怪獣戦争!

 冬なのに気温が28℃…ああ、ぜひ!!で、セルジナ公国、思いっきり日本人…の国。簡単にモスラの双子がTVに出てるし。大人の事情なんだろうけど。…色々突っ込みどころが多い…迷走感アリアリです。ゴジラもなんだか頼りないし、ラドンとのからみも痴話げんかっぽい。モスラはさなぎだし、可愛いけど(片割れは亡くなったそうです)。暗殺団はキングギドラに簡単にやられてるし。ギドラ戦は三対一のいじめっぽいし。結局ギドラ逃げて行くし。ミニチュアもちゃちい気がします。でも、こういう積み重ねで現在のゴジラの多様な楽しみ方があるのだと思います。

2015年1月28日水曜日

美術手帖11月号増刊「特集トーベ・ヤンソン」

 あー買ってしまった…。内容はよくあるものです。それほど新鮮味はありません。イラスト・写真多めです。トゥーリッキさんのことをはっきりパートナーと書いてあるのは新鮮でした。私の読んだ本ではっきり書いてあったのはこの雑誌が初めてだったので。ファンにはこういう本や雑誌は何冊あってもいいものだと思います。
「黒いムーミントロール」の複製画が欲しい…。

今日の積ん読

召使心得他四篇 ジョナサン・スウィフト 平凡社ライブラリー

 本屋さんで見かけて衝動買い。面白いといいなー…。

2015年1月20日火曜日

美術手帖2014/11月号 ティム・バートンの世界へ、ようこそ!

世界ツアー展がついに日本上陸!ティム・バートン インタビュー

 はい、ティム・バートン目当てです。表紙はティム・バートン、広告・目次があって編集長のティム・バートン特集の挨拶…まではOK。で、いよいよ…って何で関わりのないアーチストの作品が6ページも続くの??そしてやっと本編。本当にこういうのが嫌。ご本人や関係者のインタビューはよかった。関係ある建築物、作品、特に影響を受けた作品…本人のインタビューで出てきた「怪獣第戦争」が載ってないの?…やエドワード・ホッパーの「線路わきの家」これは欲しくなった。ティム・バートンの世界は楽しい。私の大好きな「マーズ・アタック」にこんな深い意味を捉えることもできるんだ。でも、セバスチャンいらない。何か自分の作品のアピールばっか。つまんない。
 他の特集もザッと読んだけど、興味引いたのは「ホドラー」という画家の作品くらいかな。好きなタイプの絵。
 私はアートや芸術に興味のないのでこういう感想になりました。

2015年1月16日金曜日

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

デーブ・グロスマン著 安原和見訳
(カバー裏より抜粋) 戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。

 驚いたのは第二次世界大戦以前の発砲率は低かったと。どうしても映画などの影響で鉄砲をバンバン撃って人がバタバタ倒れるイメージが強い。そして「突く」という行為への嫌悪感。へーへーへーでした。自分が死ぬことではなく、人を殺すことへの嫌悪感。実際の現場に立ったことのない人間には当然理解できないことです。そして、その嫌悪感を減らすためのプログラム…。映画やゲームの影響も述べられています。そこら辺りはどうなんだろ?みたいな感じもあります。…ゲームにもよるけど。薬剤も使われている…。ゾッとする。間に空間があると嫌悪感が減るというのは理解できます。最近の戦争…のイメージは米国・欧州側が空爆で、その相手側がテロ・白兵ですね。
 良書です。でも非常に気分が悪くはなりました。

2015年1月12日月曜日

服従の心理 (河出文庫)

スタンレー・ミルグラム著 山形浩生訳
(カバー裏より抜粋)権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために、前代未聞の実験が行われた。通称、アイヒマン実験

 人間の服従について調査する「アイヒマン実験」。すごく興味深い。簡単に説明すると、参加者が先生の指示に従って、犠牲者に電撃を加えるというもの。さて、私ならどうするのか??参加者によっては、ちょっと「ゾッ」とすることも…。逆にきっちり抗議する人もいる。私は…きっと「こんなことするの嫌だ」といいながら、言われた通りやるかも…。きっちり拒否できる自信がない。
 実験は条件を色々変えて行われますが、基本は同じ。その結果から色々考察されています。この実験に関して色々批判があったようで、「アメリカ人はこんな非人道的なことはしない」というのが根本にあったようです。…マジで言ってるのか??アメリカ人…本当にそう思いました。こうした批判は論外として、訳者が後書きで批評をしてみえます。それもまた興味深い。お勧めの一冊。で、今「戦争における「人殺し」の心理学」を読み始めました。続けて読むと色々考えさせられて、可哀想な頭脳の私を混乱させてくれています。

2015年1月5日月曜日

古代文明と気候大変動 (河出文庫)

ブライアン・フェイガン著 東郷えりか訳
(カバー裏より抜粋) 洪水や干魃などの大災害に対する現代文明の脆弱さに警鐘を鳴らす、壮大な人類史。

 「頻繁に起こる小規模な気候の脅威から身を守ろうとして、われわれはむしろ稀にしか起こらない大災害にたいして、いっそう無防備になりつづけているのである。」(p17より)
この文章が全てを現している。
 私が実感しないところで少しずつ変化は起こっているのだろう。日本は大きな変化のなかで、どのように変わっていっているのだろうか。変化が本当に実感となったとき、私には…大半の日本人には逃げ場はないだろう。
 気候の大変動と歴史…人類の移動、文明の崩壊との関係について書かれているのだけれど、とても分かりやすく面白い内容です。なるほどと思うところあり、もうちょっと考えたいところあり。どうしても生活の中では現在の気候に振り回されてしまいますが、たまには大きな視点で考えるのも悪くないと思います。

2015年1月3日土曜日

人間以前 (ハヤカワ文庫)

フィリップ・K・ディック著 大森望編
(カバー裏より抜粋) 人間と認められるのは12歳以上、12歳未満の子供は人間と認められず、狩り立てられてしまう…

 正直再録が多いです。表題作も読んでいますから。私程度で読んだ作品が多いのですから、詳しい方にはどうなんだろ。でも初めて読む作品も多い。 「この卑しい地上に」は好きになった作品です。ありきたりのラストでは、と言われそうだけど、ストーカーの究極ですよね。ストーカーの理想型なのかも。
 再録が多いとは言いましたが、ディックの狂った感は堪能できます。でも「新世代」はちょっとありきたりかな。

2015年1月1日木曜日

蜘蛛巣城 (1957 日本)

黒澤明がシェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えて映画化した戦国絵巻。難攻不落を誇る蜘蛛巣城の城主・都築国春に仕える武将・鷲津武時と三木義明は、城の前にある蜘蛛手の森でひとりの老婆と出会い、ある予言を聞かされる。
(「キネマ旬報社」データベースより)

 初見はTV放映でしたが、山田五十鈴がヤバすぎて、もの凄く印象に残っていました。今回改めて観てみたのですが、三船敏郎だけ顔が濃すぎ、他の武者はのっぺりの日本人顔なのに。山田五十鈴顔の化粧ヤバすぎ。実は物の怪の化身では??と思わざるを得ない迫力です。鷲津=三船は顔は迫力なのですが、奥さんの尻に敷かれている小心者。奥さんと物の怪に踊らされて、自滅してしまいます。奥さんも死産で気が狂ってしまいます。最後がどうなったのかは分かりませんが、狂ってしまった以上、武家の妻としての自害もなさそう。圧巻はラストの鷲津への弓矢攻勢。これは素晴らしい出来です。全体に間が長過ぎて、人によっては退屈してしまうかもしれません。お話自体もマクベスの焼き直しですから、特にドラマチックというわけでもありません。あと、何言っているのかわからない部分も多いです。万人に勧められる作品ではありませんが、自ら狂気に陥って行く主人公夫婦とラストだけは一見の価値はあります。

バペットの晩餐会 (1987 デンマーク)

ガブリエル・アクセル監督
ただひたすらに牧師の父の教えを守り続け、慎ましく生活を送る姉妹。
そこに現れた一人の女性により、姉妹、そして周りの人間が幸せを感じ始める。
食べることの幸せ、そして心と体が温まる逸品! 


 ああ、海亀ちゃんうずらちゃん、なんという哀れな姿…!!運ばれてきた姿と料理された姿のギャップに笑ってしまった。牛の頭にも…ごめんなさい。信者のみなさんの見たこともない食材へのビビりっぷり。誰もが未知への恐怖は当然。でも基本が優しい。料理のことは何も言うまいと。で、そこから生まれる晩餐会でのギャップ。うまくできてるなー。

 姉妹の父である牧師さん、神のためなら娘の幸福は犠牲。村人も何とも思っていない様子。ある意味狂信的なんだけど、そういう集団につきものの怖さがない。優しいのです。フランス革命で追われてきた女性も受け入れる。

 小説版もとても良いです。もっと細かい事情や状況も分かりますし。でも料理自体の描写、また料理が進むにつれての村人の表情の変化などは映画の強みですね。 ようはどちらも良作なのでお勧めです。あ、力一杯のドラマを求めておられる方はパスした方がいいと思います。