2016年1月5日火曜日

逆行の夏 (ハヤカワ文庫)

ジョン・ヴァーリイ著 浅倉久志・他訳
(カバー裏より抜粋) 怜悧で官能的なヴィジョンがあれる6篇を収録。ヴァーリイの粋を結集したベスト・オブ・ベスト。

  表題作は以前読んだ「汝、コンピューターの夢」に収録されていた作品。同時収録されている作品はどれも傑作。副題の「ジョン・ヴァーリイ傑作選」にふさわしい内容。特に「群像」と「PRESS ENTER」が私の好み。「群像」はユートピア論としても読むことができる。聴覚障害と視覚障害の両方を持つ人々のコミュニティ。彼らは彼らの言語(コミュニケーション)、ルール、道徳を持って存在している。決して排他的ではなくまた受け身でもない。外部からの攻撃に対抗する気概も持っている。すごく面白かったのだけど、ラストが…。私に哲学的素養が足りないので理解できなかった。残念。書いていて、この作品「バービーはなぜ殺される」と土台が同じなんだと気づいた。こちらは読んでいて気分が悪くなってしまったのだけど。同じ顔をした人々のコミュニティでの殺人事件。みんな同じ顔、服装だから犯人が分からないのだ。設定は面白いのだけど、「私」がない世界が気分悪くて受け入れられなかった。「PRESS ENTER」はコンピュータ…ネットワークの殺人事件。登場するコンピュータが懐かしい。電話線のネットかー遅いだろうな…。画面焼けとか久しぶりの言葉。で、この作品犯人が分からず。分からないけどイライラはしない。すごく不気味で、そこがいい。「ブルー・シャンペン」もいい。特にオチが。「もともと彼女のしたことは、おれが許すも許さないもなかったのだ、と」泣ける。
 ジョン・ヴァーリイの短編集「さようなら、ロビンソン・クルーソー〈八世界〉全短編2」が2月に発売されるようで、絶対買いですね。 「さようなら、ロビンソン・クルーソー」はこの作品集にも収録されてます。で、また私の頭を悩ませる、クローンに記憶移植が登場するわけです。記憶移植してもクローンは別個体だと思うのだけれど…。