カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳
(カバー裏より抜粋) 音楽をテーマにした5篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描き出したブッカー賞作歌初の短篇集。
ノーベル文学賞の頃に買いました。一読して「誰だ?SFとかのたまった奴…」私の読むタイプの作品ではないので放置。少し気が向いたので再度読んでみました。
あれ、思っていたより面白い。予め私のタイプの作品ではないという心構えの上で読んだためかもしれません。ちょっと心理描写が多過ぎで私には退屈な部分がありますが(あくまで私にとって)、内容は面白い。
お気に入りは「チェリスト」11歳から一度もチェロを弾いていないのに「私は一流チェリスト。私は知られていて当然」という完全に中二病、もしくはメンヘラ、ありがとうございました的キャラの師匠が、正規の音楽教育を受けた若きチェリストを指導…というお話。とりあえずピーター逃げてー(師匠の婚約者)。若きチェリストは師匠から持ち上げられて傲慢に。ま、音楽家には必要なスキル?主人公はそう言っている。ちなみに主人公は第三者的立場。
「モーバンヒルズ」も中々。文句言うなら出て行けよ的なキャラな主人公。金も住むところも無くてねーちゃん夫婦の世話になってるのになー。若き日の傲慢、他人を格下に見る傲慢。誰でも記憶にあるところではないでしょうか。
「降っても晴れても」…友達止めろよ…。親友とか言って利用されてるぞ!!と言いたくなる人の好い主人公。夫婦二人にバカにされてるのに。だいたい「レイモンド、月曜日来訪。嫌だ、嫌だ。」「レイは明日。どう生き延びる?」「ぐちぐち王子にワインを」とか自分が手に取る範囲のノートに(これ見よがしに置かれている)書かれてたら、私なら帰る。縁切る。それをしない主人公にイライラ。こういう主人公だから利用されてへらへらしてるのか…。
…もしかして私、かなり気に入ってる??