2025年5月6日火曜日

英国古典推理小説集(岩波文庫)

 佐々木徹編訳
(カバーより抜粋)本邦初訳を含む、古典的傑作八篇を収録。読み進むにつれて推理小説という形式の洗練されていく過程が浮かび上がる、画期的な選集。
 
 この作品集の中で一番面白かったのは「ポー」でした。ディケンズの「バーナビー・ラッジ」 が抜粋の形で掲載されていて、ポーが書いた書評が載っています。こちらも抜粋です。抜粋ですが、面白い。推理小説作家でなくとも、物書きには必要な事が説かれています。ま、マウントぎみなのは仕方ないかー。推理小説作家の元祖と言って良い作家ですから。
 
 次に面白かったのはブラウン神父ですね。面白さは鉄板。名作です。
 
 個人的に迷作と思ったのは「ノッティングヒルの謎」です。読んでいて疲労した…。推理小説というよりホラー寄り。双子の女性達の病状をそれぞれ日付を用いて証言者によって組み立てて行くのですが、疲れる…。そして、犯人・元凶の男爵の一人勝ち??どうなる??みたいな形で終わっているのが不満点。
 
 現代の推理小説と比べると、謎解きは甘いと思われる作品が多いのですが、私みたいに複雑なものより適度な楽しめる小説を読みたい者にはうってつけです。現代より近世の雰囲気も好きな点ですねー。

2025年5月2日金曜日

賄賂と民主政 古代ギリシアの美徳と犯罪(講談社学術文庫)

 橋場弦著
(カバー裏より抜粋) 古代ギリシアは、贈与交換を「美徳」とする社会だった。では、贈与と賄賂はどう違うのか。賄賂はなぜ厳しく断罪されるようになったのか。
 
 贈与と賄賂…。古代においての贈与と賄賂の微妙なライン的な話ですが…。怖いわー、古代ギリシア…。戦争和議を提案したら石打ちとか、戦争で勝ったら賄賂で敵に引かせた、負けたら敵から賄賂をもらった、いったいどうしろと? 戦争で敵を買収して寝返らせてもアウト!なのか??
 その裏では、個人の贈与は行われている。なんだかその時の空気を読めなかったものが生贄にされていたのでは?と思えなくもない。どうしてもこういう著作は起こった事例を並べるので「古代ギリシアってヒステリーっぽい」と思えてしまう。
 
 いや、面白いですよ、これ。贈与と賄賂の関係は考えるところありですし。でも一度槍玉に上がったら…やはり怖い世界です。

中世ヨーロッパの色彩世界(講談社学術文庫)

 徳井淑子著
(カバー裏より抜粋) なぜカジノ台は緑色で、スーツにはダークカラーが多く、囚人服は縞模様なのかー全ての答えは西欧の中世世界にある。
 
 西欧中世の色についての著作です。日本も色々と影響を受けていますねー。囚人服…実際は縞々では無いでしょうが、コント劇などでは縞々で、そしてそれを見て私たちは「囚人」と納得する。
 また日本古来…とまではいかなくても、江戸時代には弔いの色は黒となっていたと思っていましたが、明治からだと、西欧の影響だとは知らなかった!!
 
 そして色の概念。黄色って蔑みの色だったのですよ。灰色は今もそうイメージは変わらず絶望とかそういう系。庶民から王侯貴族の普段着の青、権威の赤←枢機卿とか赤というか緋色のイメージですよね。
 
 そして目に映る色の不思議。日本でもありますよね、信号機。緑なのに青という。中世西欧では海を白いと表現していたとか。
 
 現代にも、日本にも通じる色についての内容で、親しみやすいですね。 しかも文章が読みやすい!!個人的にはお勧め。
 
 でも文庫、高くなったわー。これも購入時1200円。厚みはないのですけどねー。 

2025年3月19日水曜日

魚で始まる世界史(平凡社ライブラリー)

 越智敏之著
(カバー裏より抜粋)都市の興隆を、自由と独立の精神を、ヨーロッパ近代をもたらしたー。魚でたどる目からウロコの世界史。

 ヨーロッパ…フランスとイギリスとオランダがメインで登場する国。となるとキリスト教と魚の関係が軸となります。断食でも魚はOKというところから話は始まります。そしてキリスト教の教派内の争いまで。
 
 そして漁の話へ。登場する魚はニシンとタラがメイン。そして国家間の争いから経済の変化、漁師の扱いなど魚をメインにして多岐のお話となります。一般の人が知っている話から知られていない話まで、なかなか興味深くて面白く読めました。
 私的にはお勧めの一冊。素人でも楽しめますよー。