2014年2月7日金曜日

市に虎声あらん (平凡社)

フィリップ・K・ディック著 阿部重夫訳

 核戦争、新興宗教、セックスと暴力、迫りくる黙示録の恐怖、狂気の主人公と主人公に依存する奥さん。この作品はSFではないが、いかにもディックの描く作品と主人公。狂気がすぐ裏側に隠れている。そして、自己破壊に走る。迷惑を受けたのは、思いっきり一般人のファーガンス。あなたのせいじゃないよ、気に病むなよ、と言ってあげたい。主人公は狂気だが、その嫁さんもどうかしている。どうみても狂っていて、子供を危険な目に遭わされ、普通なら逃げ出すし逃げ出していもだれも非難しないだろう、という状況でも側を離れない。とにかく狂っていく過程に引き込まれていく。いや始めから狂っていたのかもしれないけど。