夏目漱石著
夏目漱石の講演から五本収録。
講演が収録されているのだけれど、決して難しいことを述べているわけではなく、分かり易く理解し易い。だが、夏目漱石の理想とするところを実践できる人間はどれほどいるだろうか。「道楽と職業」のp25はとても良い例。要約すると、夏目漱石は博士の授与を断った。理由は博士というのは偏っているから。ここで会場から拍手…そうだよねという同意の拍手だろうけど、それに対して漱石は、「明石に医学博士が開業する、片方に医学士があるとする。そうすると医学博士の方へ行くでしょう。いくら手を叩いたって仕方ない、誤摩化されるのです。」はい、すいません…としかいいようがない。
漱石は明治時代の人だけれど、現代にも十分通用する内容。こういう講演ならぜひ聞きたいなと思う。ま、私はちょっと意見が違うかな、とか思う部分もあったりするけど、そういうのも明治と現代、個人の背景を考えて考察してみるのも面白いと思う。