宵曲が親近し、その精神形成を培った隠逸の先人たちの思い出を綴った文章は、古き良き趣味人たちの面影を彷彿させてやまない。
エッセイではない、これは随筆です。
三部に分かれていて、一部は昔から伝わる逸話、物事をテーマに。二部は食べ物について、三部は著者の知人の話。正直に言います。一部と二部は面白かった。三部が今ひとつでした。特に一部が面白かった。私が昔話の類いが好きなためもあります。落語になっている話「そば清」「のざらし」などの元の逸話について語られていたりもします。「杜子春」は元の杜子春について語られていて、とても興味深い(芥川龍之介版が正伝だと思っていました。恥ずかしい…)。
二部は食べ物のお話。「桑の実」ってなに??「甘藷」サツマイモはこんな上品な名前だったのか!等々、著者の時代では当たり前だったことが、今の時代ではとても新鮮です。三部は「古き良き趣味人たち」の話です。が、何となくつまらなく思ってしまいました。私の興味の問題です。
この随筆集の中で好きな言葉をひとつp18「真の科学は宇宙の不思議をなくするものではないらしいのに、浅薄な科学の洗礼を受けた人は、好んで不思議を否定するような口吻を弄する」ですよね〜。
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