ジョージ・ロバート・ギッシング著 小池滋訳
ロンドンの下層の人たちを中心に据えた短編集。8話収録。
登場人物が自分の鏡のようだ。「境遇の犠牲者」「塔の明かり」「クリストファーソン」…、ああ、嫌だ嫌だ。彼等の滑稽さ、愚かさは笑えない。「境遇の犠牲者」、自分を客観視できず悲劇の主人公という妄想に生きる男、「塔の明かり」も似たような主人公、現実を見つめられない。「ルーとリズ」何という自己中。「クリストファーソン」、本の話は積ん読趣味の者には他人事ではない。妻の命か本か? 当然命なんだけど、それまでにやはり葛藤はある…クリストファーソンの気持ちは理解できてしまう。
何だか悲壮な話ばかりみたいだけど、そんな事はない。読みやすくて面白い、けれど胸がズキズキしてしまうのだ。