2010年9月21日火曜日

お世継ぎのつくりかた (ちくま学芸文庫)

鈴木理生著
江戸時代の後継者事情を描くことで、江戸時代のシステムを浮き上がらせる。

 江戸時代の大店は娘に婿を取って後継者としていた。…意外だった。落語や時代劇で、商人の放蕩息子の話を観て聞いていたので、まさか叩き上げのシステムだったとは思わなかった。とにかく一般人には意外な話が一杯。…もしかして私が物知らずなだけなのか?あ、「藩」が明治以後の呼び方だと知らなかったのは物知らずかも。
 以前「生む機械」が話題になったことがあったけど、江戸時代はまさしくそのもの。男のほうもただの注入器。製造することが仕事。p149の「武士道とは死ぬことをみつけたり」の下りは笑えた。大人はそれでいいけど、「生む機械」といっても見返りは大きいし、でも殺された赤ん坊のことはつらいね。いったいどのくらいの人数だったのだろう…。読んでいると、十分有り得ることと思える。
 後継者についてのことだけではなく、そこから江戸時代の様々なシステムに話が広がっている。読み物として十分楽しめた。