2010年2月18日木曜日

ゴンクールの日記 上 (岩波文庫)

斎藤一郎編訳
ゴンクール兄弟の私生活、取り巻く世相、宮廷、芸術家の面々が日記に描き出されている。

 若干読みにくさを感じた。何となく文章にまとまりがないというか。訳だといろいろ難しいのだろうけど。でも内容は面白い。なかなかに偏った性格の兄弟で、不快に感じる部分もあるけど、それを入れても読む価値はある。交流のあった作家たちの生の部分、戦争時の備写( 適度な生々しさがいい )、ナポレオン3世の宮廷の様子等々。兄弟は貴族主義( 保守というのか? )で、無知蒙昧な大衆を見下していて選挙権などにも厳しい目を向けている。教養のある者たちからみれば、その時の状況や興奮に流されやすい大衆は余りにも危険に映っただろう。そして自分たちの気に入らない方向へ流れるのも…。まあ、こういうのは時代を経ても変わってないかな。
 本当に仲のよい兄弟だったようで、別行動はほとんどなかったようだ。愛人も共有。息苦しくはなかったのだろうか。弟の方は40歳で梅毒で他界しているが、愛人も兄も感染しなくてよかったな、と思った。