2010年2月20日土曜日

変身 (新潮文庫)

カフカ著 高橋良孝訳
朝、目が覚めたら大きな虫になっていた。でも誰もなぜ虫になったかは考えない。大切なのは自分が生活できるかどうかだし。

 後味が悪いような何とも言えない作品。登場人物がみんな変。まともなのはさっさと逃げ出した支配人ぐらいか。普通の人間がおいおいと突っ込みたくなるような、それでいて人間の底にある浅ましさもにじみ出ていて。でも、その浅ましさがものすごく人間らしい。グレーゴルが可哀相、家族は酷い、とも思うけど、家族の側に立ったら気持ちの悪い巨大な虫は邪魔に決まってるし。そういう自分のイヤーな部分もちらちら。
 私みたいにまともに正面からしか読む事のできない人間向きではない。でも不条理は面白い。