2010年2月17日水曜日

精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)

中井久夫著
広英社から刊行された同タイトルの著作に収録されていた作品を編み直したもの。
雑誌への寄稿、インタビュー等から構成されている。エッセイ集。


 読み物として面白いし、初心者の半端な知識でもわかりやすい。日本の精神医学の脱宗教化は早かったのは意外だった。憑物をおとすお祓いなどが横行していたのかと思っていた。江戸幕府は日蓮宗の狐憑きを例外として、他は禁止していたと述べられている。いい事だと思う。でも近代になって逆行してる面はないだろうか。私の親戚が病気の原因が分からずお祓いに頼っていたことがあった。( 結局腫瘍のできた位置が悪くてレントゲンに映っていなかった。霊とか憑物のせいではない ) 馬鹿馬鹿しいと思っていたが、親戚は必死だったから笑えなかった。精神や神経の病気なら、尚更そちらに走る気持ちは理解できる。でも信仰とお祓いとかとは別物じゃないかな。
 しかし、有名人の統合失調症が多いのに驚いた。しかも治さないって…。麻薬に頼って創作活動というのはよくあるけど、統失の症状で創作活動とは。周囲の人間はたまったものじゃないだろう。金のなる木ならそれもありなのかな。この病気の人たちの絵画は結構好きなんだけど、全体に傾向が似ている気がする。脳みその作用が同じだからかな、と思ってた。「統合失調症問答」はお薦め。理解しやすい。
 精神医学の見地から著されているが、普段の生活にも考えさせられることが述べられている。「微視的群れ論」「危機と事故の管理」。私は「群れ論」を読んでお風呂で足の裏のマッサージをするようになった。