今和次郎著
今和次郎による東北から九州まで、日本民家についての入門書。解説に合わせて多数のスケッチが収録されている。「民家」という言葉が普及したのは、この作品からだそうだ。
その地域によっての家の造りの違い、その意味。生きるための知恵を知らしめられる。日本は小さな島国なのに、これだけの差があるんだ。東北はやはり雪への対処に重点が置かれているし、海辺は家が船の倉庫になっている。また、蚕に家を占領されている地域、あと、神様の行事を主眼に置いた家。若夫婦は畳に布団で寝てはいけない( 土間で寝る )地域がある反面、逆に若夫婦に家を譲って年寄りが別の小さな家に移る場合もある。違いがすごく面白い。鑑みて、今の時代は同じような家ばかりになってきている。これは厳しい環境に対して、建築が柔軟に対処できるようになった証明であって良い事なんだけど、寂しい気もする。
著者のスケッチがそれぞれの民家の解説を分かりやすくしている。妹尾氏の作品を思い出した。ちょっと目的とか違うけど。写真等よりも作品の持つ雰囲気にあっている。写真には写真の効果、スケッチにはスケッチの効果があることを認識させられる。
私の家も建て直す前は明治の頃からの家だったので、ちょっと懐かしくもあった。土間に竃、薪で焚く風呂、風呂桶は醤油の樽みたいなのだったんだよ…。トイレはもちろん外のポッチャン便所。戻りたいかと言えば絶対嫌だけど。