2010年6月26日土曜日

アメリカ紀行 上巻・下巻 (岩波文庫)

ディケンズ著 伊藤弘之、下笠徳次、隈元貞広訳
ディケンズの半年間のアメリカ旅行を描く紀行文。下巻にはジョン・フォスターの「ディケンズの生涯」のアメリカ紀行と関係ある部分が掲載されている。

 まず、奥さんのことを訳者は平凡な女性としているけど、こんな大変な旅行についてきている人を平凡で片付けるのか。本文読んでいて「旦那に付き合わされて大変そう」と思ったが、「ディケンズの生涯」を読んで、よく我慢できたものだと感心した。この時代の旅が、これほど困難とは思っていなかった。船は沈没・遭難が多いという記述があるし、設備も悪そう…。嵐で救命ボートが壊れるとか…乾いた笑いがこぼれる。馬車も道が悪過ぎて中で混ぜ繰り返されている様子が述べられている。ディケンズは上流階級、特別扱いでこれなのに、当時の移民の人はどれほど…馬車が泥濘で動けなくなって赤ん坊と母親が残されてとか、読んでいて胸が痛む。
 これの前に「イタリアのおもかげ」を読んでいるが、「アメリカ紀行」のほうが読みやすい。内容は政治、思想等に関する事が多くみられる。監獄、障害者施設への訪問についても多く述べられている。始めはボストンについてで、施設、監獄について高く評価している。視覚・聴覚・味覚・嗅覚の障害者について多くページを割かれているが、教育内容が素晴らしい。ヘレン・ケラーより前なんだ。これはアメリカのいいところなんだと素直に関心。実はここ辺りを読んで「アメリカよいしょ本?」とか思ってしまった。…違った。これはアメリカで不評だろう。現代から見たらディケンズの言っている事は正論なのだが、時代だからね。監獄、これは酷過ぎ。こういう問題は難しいから何も言いたくないけど、これは酷い。奴隷制度も17章の例を読んでいて気分悪くなった。というか南部無法地帯かよ…酷い。あとつばと痰…噛みタバコの弊害?アメリカは元は移民なんだから、どこかの国の風習だった?生理的に気持ち悪い。で、集団の中では気にならなくても、第三者の目から晒されると、気になるし腹も立つよね。アメリカは今も昔も USA!USA! な国だったと。マナーや制度は変わっても本質は変わっていないのかも。
 「ディケンズの生涯」読んで、マスゴミってやつは今も昔も…。ディケンズと奥さん、同行者の体力、精神力、忍耐力に敬意を表します。よく耐えたものだ。もちろん、特別扱い受けている部分も大きいのだけど、やり過ぎ。船室を覗くって…。今ならもう少しマシ…でもないか。携帯、デジカメ、その他諸々、一般人もマスゴミ化しているから。著作権問題も取り上げられている。これについてもアメリカって変わってないのでは?いや、世界的に酷くなってしまったのでは…と。で、取り締まる側も変になってきているし。
 じつはディケンズは「アメリカ紀行」「イタリアのおもかげ」以外読んでいないのです。クリスマスキャロルはTVで映画(モノクロ)観た。あれは好き。(モノクロDVD、廉価版出ていたのに…チクショー!) 本は積ん読になってる。ちょっと読んでみるかな。