2010年5月8日土曜日

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)

ギッシング著 平井正穂訳
ヘンリ・ライクロフトという虚像を通して、ギッシングが本来のあるべき自分を求める。

「ギッシング短篇集」を読んで、自分の鏡を見るような思いをした。それでこの著者に興味を持って、代表作と云えるこの作品を読んでみた。
 主人公のヘンリ・ライクロフトは著者の代理でありながら、著者とのギャッブがかなりある。解説に述べられていた著者の経歴を見る限り、はっきり言って愚かな人…。ヘンリ・ライクロフトの世界は著者のまさしく虚像、嘘と叫びで塗り固められた仮面かな。家、農村、家政婦、イギリス、食事…、理想的だけど違和感がある。
 主人公のというか著者の偏り方、自分が肥大したようですごく嫌なんだけど、共感できる。