斎藤一郎編訳
ゴンクール兄弟の私生活、取り巻く世相、宮廷、芸術家の面々が日記に描き出されている。
作家、いや芸術家の自己顕示欲の凄まじさ。ゾラ、顕示欲の固まりのように描かれていて、ちょっと笑えた。有名作家が一般常識から外れた事をブログで威張って書いて話題になる事あるけど、これを読むと "そういう人たちなんだ" と理解できる。一般人は関わるべき世界じゃない。よくこんな世界に生きてるな、想像つかない。
この日記の出版がよくできたなと思う。反発喰らうのは目に見えているのに、怖くなかったのだろうか。ゴンクール本人の意図がどうであれ、書かれた側がどう受け取るかはわからないのだし、実際告訴されている。
今回の文庫は抄訳だが、元々の日記自体全て出版されているわけではないそうだ。もう百年経っているのだから公開してほしい。子孫は芸術家のイメージというけど、百年経って名前が残っている人物は性格も素行も研究されているし、消えた人物は再浮上のチャンスじゃないか?
ジャーナリズムについて、ゴンクールは日記上で常に攻撃を受けていたように述べている。失敗すると攻撃され、出来が良いと批評されないと。述べられている通りだとすると、今も昔もジャーナリズムは変わらないということだ。何公平顔しているんだろう。
とても面白く読めた。下巻は日本の話も多く述べられていて、興味深かった。