2010年4月17日土曜日

伽藍が白かったとき (岩波文庫)

ル・コルビュジェ著 生田勉 樋口清訳
ル・コルビュジェのアメリカについてのエッセイ。

 戦う芸術家という印象を持った。自分の信念を貫こうという生き方に敬服する。都市計画とかよく知らないのだが、著者が述べたい事は理解できる。土地の有効利用、時間の無駄を省く、自然のある環境…。1900年初頭、こんなにアパートメント( でいいんだよね )に抵抗があったとは知らなかった。価値観の変換期だったのかな。パリのような古くからの都市だと、変わりたいとは思わないのだろう。伝統とか素晴らしいとは思うけど、変化に柔軟にはなれないという欠点は困ったもの。著者にはアメリカは可能性の場所だったのか。でも、その本質をきっちり見抜いていた。p276「20世紀は人のために建設したのではなくて、金のために建設した」アメリカだけではなく、世界中がそのなってしまった。それが21世紀にも引きずられている。
 結局アメリカは横に広がったままだ。おまけにゲートでの仕切りを置くようになった。日本は?一時有名建築デザイナーの設計が売りの建築物がやたらあったけど、保全が全然できてなくて惨めな姿をネットでさらされてたり、問題点が報じられたりだった。デザイナーズとか昔もてはやされたけど、まさしく「金のために建設した」に当てはまるだろう。