B・マリノフスキ著 増田義郎訳
ニュー・ギニアで行われる「クラ」と呼ばれる贈与体系についての探求。
ちゃんと理解できなかった。「クラ」という交易の形、やり方、呪術との関係の文面上のことは分かるのだが、その意味というか住民の意識がうまく呑み込めないままだった。これは、そこで長年暮らした人、住民でないと分からないことなのかもしれない。でもロマンは感じる。その首飾りや腕輪が通り過ぎてきた歴史、「クラ」という冒険で何を見てきたのだろう。なんて感傷的すぎるし、西欧文明の教育に影響されている人間の見方そのものだ。あと、呪術の影響力に驚いた。日本の上棟式は呪術に近いかな。住人は死霊を怖がらなくて、生きている人の呪術を怖がる。人間が一番恐ろしいというのは納得。
著者のB・マリノフスキ、20世紀初頭にこの考え方をもって調査をしたというのはすごいなと。観察者として第三者の目を持ってニュー・ギニアの住人を調査するには、西欧に対しても第三者の目をもって見つめなければできないと思う。そうでないと西欧の偏見に歪められてしまうだろうから。こういう冷静な見方をする能力は羨ましいのだ。
今でも「クラ」は行われているのだろうか。