2010年8月8日日曜日

オデュッセウスの世界 (岩波文庫)

M.I.フィンリー著 下田立行訳
イギリスの歴史家フィンリーが「イリアス」「オデュッセイア」を読み解き、古代ギリシャ社会について考察する。

 以前、昔話は実はこうだったとか、そこから人々の生活など社会を読み解くみたいなのが流行らなかったかな?これは真面目な著作なのだけど、古代の社会を覗き見るという意味で素人でも十分楽しめる。訳者の解説によると、抒情詩などから社会を考察するという方法は、著者が生きている時代には新しい見方だったよう。
 p136見てびっくり。ほぼ裸で戦っている。兜だけ被って胸当てのようなものだけでって…。頭隠して尻隠さずという言葉が浮かんだ。実際はどうだったのか分からないけど、考えてみたら 「イリアス」「オデュッセイア」等で語られるオリンポス宗教神話は破天荒だよね。この著作ではオデュッセウスの冒険とトロイ戦争を中心に王、貴族などの社会観を述べている。成る程、こういう見方できるよね、でも実際のオデュッセウスやアキレウスはどんなだったんだろう、と自分なりに考えてもみる。庶民はほとんど蚊帳の外です。
 この著作が正しい分けではないし、時代が進むにつれ発掘などで新しい情報が得られるので、この著作の内容も古くなっている部分があるけれど、真面目に古代ギリシャが知りたいという人にはお勧め。