W.S.モーム著 西川正身訳
モームが選んだ小説十篇の、その著者の生涯と人物像、それをふまえて作品解説を行っている。有名どころが選ばれている。作品は読んだことがなくても、大概著者の名前なり題名は知っているだろう。
うわー、何という偏った人物ばかり。今なら精神科医に「○○性人格障害」とか言われそうな人たち。天才や長く作品を残す人はこういう傾向があるのかな。自己顕示欲の固まりだ。どの著者も人物像がもの凄くて、各著者の伝記が面白い。著者の性格そのまま作品も突っ走っていたり、ディケンズのように家庭が破綻している状態で「クリスマスキャロル」書いたり (これでこそプロなんだろうけど) 、トルストイは本人も周囲も一種の宗教団体…。
実はモームの作品は今イチ好きになれないのだけど、この作品は面白かった。面白いのはいいのだが、取り上げられている作品はモームの解説だけでお腹いっぱいになって、本編読みたい気が起こらない…。モームは読者が読んでいることを前提にして書いているから仕方ないか。取り上げられている作品は「トム・ジョーンズ」「高慢と偏見」「赤と黒」「ゴリオ爺さん」「デイヴィッド・コバーフィールド」「ボヴァリー夫人」「モウビー・ディック」「嵐が丘「カラマーゾフの兄弟」「戦争と平和」。これらの作品もこの著作もどちらもこれから読む人は、先に各作品を読んだ方がいいと思う。