2010年8月6日金曜日

古寺巡礼 (岩波文庫)

和辻哲郎著
著者が30代の頃の著作。その頃巡った奈良近辺の寺院に収められている仏像・仏画について考察している。宗教ではなく、芸術の視点から観照されている。

 「古寺巡礼」という題名だが、寺そのものよりも中に収められている仏像・仏具について考察されている。宗教の側面からではなく、芸術として観照し、そこから作品の由来、背景にある歴史を著者の感性により述べている。古い時代は面白そうだ。ギリシャ→インド→中国→朝鮮→日本と伝わっていくうちにそれぞれの国に咀嚼され、それぞれの文化を育む。仏像にもロマンがあるんだ。それぞれの仏像の特徴がよく表現されていて、私は仏像とかサッパリだけど、こういうところを観るのだとか参考になった。ただ、それぞれの写真が欲しかったかな。写真は掲載されているけれど、全てではない。
 仏像とは関係なく不思議だったのは、百年の間に体の線が出る衣服から十二単に変化したこと。考えてみれば、江戸末期・明治から昭和まで百年で着物から洋服に転換したのだから不思議ではないのかな。