2010年7月12日月曜日

島暮らしの記録 (筑摩書房)

トーベ・ヤンソン著 冨原 眞弓訳
トーベ・ヤンソンがフィンランドの小さな島で暮らした時の様子を綴る。

 以前に雑誌で、ヤンソンさんの暮らした島の様子が特集されていた。岩ばかりですぐ近くに海が迫っているという場所だった。この作品の解説p150に写真が掲載されている。60代でこのような場所で、お母さん80歳代も一緒に暮らそうというのだから驚いてしまう。素晴らしいバイタリティだ。安易なロマンだけで暮らせはしない。暮らしの様子は御自身で読んで味わって欲しい。私自身は田舎育ちなので、どうして都市で安穏と暮らせる立場の人がここまで…と思うところがあるのだが、文化の違いなのだろう。最後で、ヤンソンさんが怖いと言い出している。この変化に興味がある。どういうふうに心境が変わるのだろうか。
 家はこの辺りを航行する船、ボートの乗員が使えるように、必要なものを置いて去っていくところで終わる。登山者の無人の山小屋のようなものかな。私が読んだ雑誌の特集は2〜3年前だったので、きっと今も家は小さな寄港所としての役割を果たしているだろう。
 フィンランドやヤンソンさんを詳しく知らない方でこの本を手に取る人は、先に解説を読むことをお勧めする。背景にある文化 が理解し易いと思う。もしかしたら、人によっては退屈な作品かもしれない。作品全体が淡々としすぎていると感じるかもしれない。何となく、そのうちにちくま文庫になりそうな予感。