岡倉天心著 樋谷秀昭訳
茶道を通じ、西洋の文明を良しとする風潮に警鐘を鳴らす。
前々から一度読んでおこうと考えていた一冊。本を買う時に、自分の頭の中で作品の雰囲気を描いているのだが、この作品は頭の中と全く違っていて驚いてしまった。何という激しさ。西洋への批判としては的を得ていると思うが、これは実は日本人への批判だ。文化は交流によって刺激を受け進化するのだけれど、p18にあるように「キリスト教の伝道師は授けようとするが、受けとろうとしない」、そして日本人は受けとり過ぎた。文化は受けとって咀嚼し自分たちの文化とするべきだと思うのだけど、咀嚼が十分でなかった。芸術に関してp74からは、よく言われる内容なのだけれど、すぐ心から抜け落ちる事柄なので、しっかり留めておく必要がある。
茶に関する話は面白い。「花」の項は、さんざん人間の惨さを論じていたのに、後半掌返し…。これは「おいおい」だろう。「茶室」、簡素なものほど難しいものはない。そして物に溢れる時代だからこそ、茶室に憧れを抱く。
これは全訳でよいのかな。前にフランク・ロイド・ライトの「自然の家」を読んだ時「茶の本」の一節が掲載されていたのだか、それが見当たらない。訳者による違いだろうか。