松田権六著
漆の歴史、他蘊蓄いろいろ。
漆…一般庶民の手から失われた伝統の一つ。プラスチックの漆風紛い物はいっぱいあるんだけど。私も前から一つ、自分用のよいお椀が欲しいと思っていたのだが、これを読んだのを機会として探してみるかな。
とにかく知らなかったことばかり。漆って木に塗るものだとばかり決めつけていた。布、紙、皮、相性がよければ何でもありなんだ。しかも本当に良い漆は、中身の木等が腐っても外面の漆だけは何千年も残っている。凄い…甘く見てた。面白いと思ったことは「乾く」の概念にはたくさん種類があるということ。漆の乾くは酸化作用で、冬の乾期より梅雨の方が乾きがいいとか。ほか、ナメクジを擂り鉢で擂粉木にてつぶして糊に…イヤー!もし器の状態で漆かぶれになったとしたら、それはしっかり乾いていないまま、商品になってしまったものだそう。他に漆芸の種類等もあり、いろんな意味で楽しめます。失われたものあり、紛い物になってしまったものあり、本来庶民の物だったのが、今はすっかり高級品とか…。
著者自身の歴史も良かった。本当に漆芸に尽力されたのだ。p276で、「日本人相手にすべからず」「私の相手はたった一人でよいから具眼の外人」「日本人は、西洋人が感心すると、はじめて鵜呑みに感心するくせがある」いつの時代も日本人の悪いくせ…。 p287でお椀屋を企画したとあるけど、どうなったのだろう。素晴らしい企画だと思うのだけど。
一般にも分かり易く書いてあり、読み易い。この著作で漆の魅力を確認してほしいと思う。