2010年7月24日土曜日

新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)

G・K・チェスタトン著 高橋康也訳
1984年ロンドン、籤引きで選ばれた国王の「自由市憲章」を信じ、土地を守るために一人の男が立ち上がった。

 最初読み始めたときは、何だか曖昧でペースがつかめなく、失敗したかと思ったのだが、序盤から中盤に入る辺りから面白くなってきた。解題の人はオーベロンを推していたけど、私は周辺の人物の方が面白かった。ウェインの偏り方がいい!自分に与えられた仮面を見事に演じきった、という感じ。バーカーとバックの典型的ブルジョアぶり、戦争での敗者がやってしまうことを見事にやってみせた。何というか、登場人物全員が如何にも演じているというように読めてしまう。悪い意味ではなく、そこがいいのだ。でも、最後の長い会話はちょっとだった。読むのにダレてしまった。
 デビューでこの作品とは凄い作家だ。楽しんで読む限りには宗教臭さもそれほど感じない。癖があるから、人によっては…かも。ま、誰でも面白い本なんてないからね。