2010年7月21日水曜日

火星年代記 (ハヤカワ文庫)

レイ・ブラッドベリ著 小笠原豊樹訳
火星への植民の過程を短篇の連作で描き出す、SFの名作。

 なぜ名作と云われるか、読んで納得した。現代から視ると、火星人が没個性のような気もするけど、これは古典の宿命ですね。名作に影響されて模倣していくのだから。(批判ではないよ) 火星人の存在は人間をあぶり出すための道具のようだし。この人間が面白いのだ。「華氏451度」を思わせる短篇もある。
 アメリカ人がいかにもアメリカ人過ぎて笑った。パークヒルとかティースとか、もうね…。ちょっと疑問に思う部分もあった。地球に核戦争が起こって、みんなが地球に戻ってしまうところ。戻るかな??一般アメリカ人の核爆発の放射能に対する認識が甘さを描いているようにも読めないし。みんなが戻るから戻った?私なら戻らないけど。最後、女の子の家族が来なかったらどうなるんだろう。何となく他には誰も来ないまま…というエンディングを頭に描いてしまった。
 「火星年代記」品切れ表示の中で一冊手に入れたと思ったら、リニューアルされた新版が発売されました。ちょっと「ちくしょー」な気分。新版より100円安いからいいけどさ。